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自分の恐れを捨てる。「掃除巡礼」という毎朝の習慣。

日曜日の朝。
床を掃いて、窓を開ける。
ていねいに掃除をすると、心も豊かになる。

僧侶・松本紹圭さんは、寺の修行でもある掃除の魅力を「テンプルモーニング(寺の朝掃除の会)」の活動を通して伝えてきた。 2020年12月に新たに開始する活動「掃除巡礼のリズム」では、全国の参加者と一緒にオンラインで掃除の時間を共有する。

「掃除巡礼」の目指す思いを語る口調から熱い意志を感じられた。

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松本 紹圭(まつもと・しょうけい)| 僧侶、ひじり
世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader、Global Future Council Member。武蔵野大学客員准教授。東京大学文学部哲学科卒。2010年、ロータリー財団国際親善奨学生としてインド商科大学院(ISB)でMBA取得。2012年、住職向けのお寺経営塾「未来の住職塾」を開講し、9年間で700名以上の宗派や地域を超えた若手僧侶の卒業生を輩出。著書多数、『お坊さんが教えるこころが整う掃除の本』(ディスカバートゥエンティワン)は世界15ヶ国語以上で翻訳出版。「松本紹圭の方丈庵」noteマガジン発行。「Temple Morning Radio」ポッドキャストは平日毎朝6時に配信中。「ウェルビーイングってなんだろう?」ポッドキャストをネスト代表の藤代健介と共に配信中。


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このnoteを書いた人:田中 嘉
編集者、インタビュアー。

掃除は修行。仏道の始まりは良き習慣づくりから。


サッ、サッ。 竹ぼうきの音が響く。
東京都・神谷町、光明寺ーー。

僧侶・松本紹圭さんは「テンプルモーニング」なる朝掃除の会を2017年から不定期で開催している。朝の境内を掃除した後、参加者で輪になってお茶を飲みながら、近況報告やお悩み相談などの話をする。この活動は宗派や地域を超えて全国に広がっている。なぜ、寺の朝掃除の会をはじめたのか。

「掃除は誰しもの身近にある生活習慣です。お寺でも修行の一環として真剣に取り組まれています。実際にやってみると気持ちがいいし、周囲の環境も整います。

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仏教と聞くと、坐禅など“行”としてハードルが高いイメージを抱かれがちです。家事の掃除を修行モードでやれたら、意欲的に取り組めるし、心身にも良い影響があります」。

仏教では1日の生活サイクルのすべてを修行と考える。

「ごはんをつくるときや食べるとき、風呂に入るとき、寝るときまでもすべてが修行であり、悟りでもあると考えます」。

修行は、同時に「悟り」でもあるとは一体どういうことか。

「修行とは、悟りを目指すものだと思いますよね。これはちょっと不思議な響きかもしれません。しかし実際には、未来も過去も頭の中にしかなくて、今しか存在しません。悟りも、今の瞬間にしかありえません」。

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心と地球を掃除する。

松本さんは、新たに「掃除巡礼」というリズム(オンライン上の共同体)のホストを、「みんなで暮らしのリズムを整える」プラットフォームであるネスト内で務める。

毎週日曜日の朝、ネイバー(参加者)は、パソコンやスマートフォンから朝の挨拶を交わした後、朝7時から一斉に全国各地で掃除をする。

掃除は、心と空間を豊かにする。リビングをほうきで掃いたり、テーブルを布巾でていねいに拭いたりすることにより、心も深呼吸をするように整っていく。

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掃除の終了後は、今日の気づきを全国からオンラインで共有する。「庭の木につぼみがついていた」「だんだん太陽が低くなってきた」など、他の人の気づきから発見や学びが生まれ、新しい共同体への参画意識を持つだろう。

ネイバーズが東京、大阪、京都などそれぞれの場所で「同じ時間に、みんなで掃除している!」と想像すると、ちょっと不思議な感覚になるのではないだろうか。

手紙を書くように、ネイバーズの顔と場所を思い浮かべてみる。
飛行機の窓から見える広大な夜景のように、無数の人が地球を掃除している。

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私と公の境界を溶かしていく、巡礼的な生き方。


この「掃除巡礼」は、巡礼的な生き方の人の集いにしていきたい。たとえば、自分の内面を向上させたい人、仏教に関心がある人、そして掃除が好きな人。「巡礼」という言葉にはどんな意味を込めたのだろうか。

「昔、聖(ひじり)と呼ばれる人たちがいました。ひとつの拠点ではなく、各地の聖地を巡りながら、終わりなき旅をしてきた人たちです。仏教には中道という言葉があります。この世界は季節も人間関係も常に変化しています。人生の中で“ちょうどいい道”を探究し続ける人の集いにしたいです」。

現代の加速的に変化する社会を生き抜くには、水のように流動的に生きる姿勢も大切だ。

そのために、型にはまらずに自分の境界を越える勇気をもちたい。

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巡礼的な生き方の「修行」として、掃除の範囲をあえて部屋だけに留めない。じょじょにマンションの共用部、家の前の道路、街の商店街へと広げることにも挑戦していく。

マンションの共用玄関を掃除するとき、住人の視線が気になるだろう。その恥じらいの理由とは、他人への配慮ではなく、自分の不安や恐れともいえる。掃除は心のざわつきを払拭する練習にもなる。

各自の掃除の終了後にはネイバーズと様子を報告し合う。「マンションの共用玄関を掃除したら、ドキドキした」とか「やはり恥ずかしくてできなかった」など、新たに挑戦した内容や、「ざわつき」を共有しながら取り組む。

「学校や職場に行きづらい人にとって、テンプルモーニングはお寺が居場所になることに意義がありました。一方、掃除巡礼の参加者にとって、どんな場所も自分の居場所にする意識段階に挑戦する機会になります」。

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「私たち」を拡張する、平和的市民活動へ。

北海道小樽市で育った松本さんは、東京大学の文学部哲学科を卒業後、光明寺に入門した。寺の経営に関心を抱いてMBAを取得して住職向けのお寺経営塾「未来の住職塾」を開講し、9年間で700名以上の宗派や地域を超えた若手僧侶の卒業生を輩出した。

だが、幅広い活動の中で、自分を抑圧していた時期もあったと言う。

「数年前、何かをすごく恐れていた経験がありました。僧侶という肩書きによって行動を抑圧していました。社会的な規範による抑圧ではなく、自分の意識が根本原因でした。あるがままでいられないような時期もありました」。

人間関係の問題は、自分を見失った言葉や行動から引き起こされる。
恐れが「エゴ」を生み出し、社会の分断の原因になるのではないかと気づいた。

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「同じ世界平和を目指す組織でも、宗派の違いによって“他人の平和に対する考え方は受け入れられない”と言う人もいます。組織の対立の原因にある、人間のエゴの存在に気づいたとき、世界平和や人類の幸福ではなく“人間の心の恐れのない世界”というビジョンが浮上しました」。

現代の地球環境の危機は、差別や暴力など人間を取り巻く社会問題にも及ぶ。「分断」された社会の中で、国政と市民の意識の壁なども存在し、社会に対するあきらめや限界性を感じる人も少なくない。

パブリックとプライベートの境界を溶かしながら「私たち」の領域を拡張する掃除巡礼は、今までの市民革命運動とは違う、無抵抗主義における平和的市民活動へとつながるのではないか。

街中で、ほうきを持った人影が立っているーー。

水面の波紋のように通行人の心のざわつきは広がり、街は静かに変容していくのかもしれない。

掃除巡礼のリズム
毎週日曜日 | 7:00〜7:30
公式サイト:https://nesto.life/rhythm/souji-junrei

取材・編集:田中嘉 撮影:本永創太 取材協力:神谷町光明寺





ありがとうございます!どうぞよい1日を!
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「みんなで暮らしのリズムを整える」プラットフォーム、ネストの公式noteアカウントです。 https://nesto.life/

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