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足を奪われた亡霊

これは物語ではなく一種のプロバガンダである。我々の向かうあらゆる絶望の中で蠢く蟲達の愚かな最後である。檻に入り、2年がたった死刑囚の陰惨たる最後である。
我々は随分長く生きてきた。大地を蝕み、その糞尿で文明を築いてきた。しかし、この広大な大地をついに離れる。その残虐な剕刑は我々を空虚な真空の海へと浸す。空に上がって浸されるこの物理法則を無視した運動は、思想の非物理性に由来する。我々は遠く離れた大地に向かう訳でもなく(つまり合目的性を持たない)この長い旅路をゆかねばならぬ。莫大な富を築いた家の放蕩息子でしかない。だが、人類の生とはそこに向かう。我々の向かうそのあてなき旅は、卑しき頭痛に苛まれる。あるいは暗雲の如き不安に内蔵を満たされる。だが二度と大地に根ざし、その足をおろすことは出来ない。その足からは肉に内包され、その純白性を保つ骨が見えているからだ。土は穢れである。もはやそこには根差せない。我々は苛まれながら漂うしかない。我々のままで。

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