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クリステンセン教授が日本へ向けた最後のメッセージ

20年以上前になりますが、1997年にハーバード大学クリステンセン教授は、なぜ優れた既存大企業が新興企業に敗れ去っていくのかを論理的に解説した「イノベーションのジレンマ」を発表し、世界中で経営者の関心の的になりました。

イノベーションのジレンマ 増補改訂版(翔泳社 2001年7月3日)

既存巨大企業にとって新しい技術や事業は、成功確度が低くリターンも見えづらいために、魅力が乏しく捉えられるだけでなく、既存事業の売上を奪う可能性があるため、本気で着手されない傾向にあります。

また、既存事業が優れた収益を上げているからこそ、改善のみに集中し、新しい機会に着目しないことが多く、その結果として、取るに足らないと下にみていた新興企業に、いつの間にか市場シェアを奪われてしまうことを指摘しています。

特に長年既存の産業に依存し続け、外国企業の成長に脅威を感じていた日本社会にとっては、イノベーションを取り戻すのかを考えるきっかけを提供してくれた、意義深い提言でした。

そのクリステンセン教授が、先日67歳と若くして、白血病のため亡くなられました。

「ディスラプション」広める クリステンセン氏死去(日本経済新聞 2020年1月25日)

長きにわたった闘病生活の中でも、イノベーションの重要性や方法論について教鞭を執り続け、最後まで企業がイノベーションを継続的に創出し続けることで、より良い社会が実現できることを信じ、尽力されてきたことに心を動かされます。心よりご冥福をお祈りいたします。

昨年末にクリステンセン教授が、日経新聞の経済教室に寄稿されている文章が記憶に残っていました。

イノベーションのジレンマを提唱されてから20年経過しても、変われない日本企業に対するエールです。

イノベーションへの課題(上) 「破壊的」戦略 再び追求を(日本経済新聞 2019年12月23日)

日本の大企業は早急に持続的イノベーション投資の弊害を認識し、破壊的イノベーションの機会を発掘して投資する独立組織を立ち上げることを提唱しています。

この組織は、指揮命令系統も運営も優先順位も親会社とは完全に切り離した独立したものでなければなりません。破壊的イノベーションを成功させるために必要なプロセスや価値基準は、持続的イノベーションと全く異なります。

破壊的イノベーションを行う組織を、主流事業の中に発足させて持続的イノベーションの基準を当てはめたら、必ず失敗します。反対に自由に羽ばたく機会を与えれば、会社に新たな成長エンジンを生み出すでしょう。

クリステンセン教授の具体的なアドバイスを真摯に受けとめて、イノベーションを実現しましょう。

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