春の公園で。「あなたに出会えて、幸せ」
喧嘩をした。
彼は朝に弱い。起きられない。
午前中、待ち合わせの時間になっても来ない。
電話をしても、出ない。
よくあること。ちょっと笑えるくらい よくある。
1人でカフェに入る。
しばらくして、彼からのメッセージ。
やりとりが始まった。
一方的に、ひとしきり自分の感情を言いつける。
どのような状況でも まず受け入れてくれる包容力を
いつも尊敬する。
顔が見えなくてもメッセージに込められた意図を理解できる、
彼はすごいと思う。
ふたりの関係を昇華させることをいつも考えている。
*
仲直りしたその午後に、
遅めのランチを一緒に、という話になった。
駅から歩いて5分くらい。
マンションの前にある、線路沿いの公園で。
サンドイッチを食べながら、彼は黙る。
もう怒ってないよ、と言うと彼は笑う。
彼が黙る時は、考えごとをしている。最近多い気がしていた。
どうしたの、と聞いてみる。
咀嚼しているのか言いづらいのか、彼はモゴモゴと口を開く。
「『目指すモノを手に入れないと、充実していないのではないか』と思う」
「手に入れたから幸せになるとは限らないのに」
「今の日々を十分幸せだと実感して生きていくことよりも
目指して、達成しないと、『自分なんてダメだ』と思うんだ」
そうか。
私は相槌を打つ。
*
こみあげてくる、この気持ちをなんと言葉にしたら良いのか。
しばらく考えて、言葉が流れ出した。
「あなたは、存在しているだけで価値がある。」
「あなたのなかには、きっと
『大きいものを作り上げたい』という気持ちがあるんだね」
「そこに建っているマンションにしても、完成までの道のりがある。
道のりの中で『自分はコンクリートを積み上げたい訳じゃないのに』って歯がゆい思いをするだろうし
時には、目的を見失ってコンクリートの積み方そのものに執着してしまうこともあると思う」
「でも、その状況でも目指すモノを忘れていない。
だから、『充実していない』って思うんじゃないかな。
でも それは、『充実していない』訳じゃなくて
『自分は、今よりもっと充実できるはずだ!』って事なんじゃないかな」
*
自分の可能性を感じているからこそ、高い目標をたてる。
目標が高いからこそ、すぐに実現できない。
すぐに実現できないから、歯がゆいし苦しいし目をそむけたくなるんだね。
あなたには出来る。
あなたには可能性がある。
あなたには出来る。
プラスを積み重ねていける!
その大前提が「アナタは存在しているだけで価値がある」。
そしてもし、頑張れない時があっても
「アナタは、存在しているだけであってもマイナスになることはあり得ない」
だから安心して頑張っていいんだよ。
私がつらい時にくれた言葉を御返ししただけのことだったけれど、
伝えながら、心が震えた。
*
「あなたに出会えて、私は幸せです」
この言葉をまっすぐ伝えられた。
こんな素敵な言葉を、
声に出して伝えられる人に出会えたことが感謝だと感じた。
春休みの子供達が遊びに来るような普通の公園で
こんなに心が動くだなんて
1年前の私には、想像もできなかっただろう。
そう思えた、なんでもない日のランチタイム。
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