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春の公園で。「あなたに出会えて、幸せ」

喧嘩をした。

彼は朝に弱い。起きられない。
午前中、待ち合わせの時間になっても来ない。

電話をしても、出ない。

よくあること。ちょっと笑えるくらい よくある。

1人でカフェに入る。


しばらくして、彼からのメッセージ。
やりとりが始まった。

一方的に、ひとしきり自分の感情を言いつける。



どのような状況でも まず受け入れてくれる包容力を
いつも尊敬する。

顔が見えなくてもメッセージに込められた意図を理解できる、
彼はすごいと思う。

ふたりの関係を昇華させることをいつも考えている。

仲直りしたその午後に、

遅めのランチを一緒に、という話になった。

駅から歩いて5分くらい。
マンションの前にある、線路沿いの公園で。

サンドイッチを食べながら、彼は黙る。

もう怒ってないよ、と言うと彼は笑う。


彼が黙る時は、考えごとをしている。最近多い気がしていた。

どうしたの、と聞いてみる。

咀嚼しているのか言いづらいのか、彼はモゴモゴと口を開く。


「『目指すモノを手に入れないと、充実していないのではないか』と思う」

「手に入れたから幸せになるとは限らないのに」

「今の日々を十分幸せだと実感して生きていくことよりも
 目指して、達成しないと、『自分なんてダメだ』と思うんだ」

そうか。

私は相槌を打つ。

こみあげてくる、この気持ちをなんと言葉にしたら良いのか。

しばらく考えて、言葉が流れ出した。


「あなたは、存在しているだけで価値がある。」


「あなたのなかには、きっと
 『大きいものを作り上げたい』という気持ちがあるんだね」


「そこに建っているマンションにしても、完成までの道のりがある。

道のりの中で『自分はコンクリートを積み上げたい訳じゃないのに』って歯がゆい思いをするだろうし

時には、目的を見失ってコンクリートの積み方そのものに執着してしまうこともあると思う」


「でも、その状況でも目指すモノを忘れていない。

だから、『充実していない』って思うんじゃないかな。

でも それは、『充実していない』訳じゃなくて

『自分は、今よりもっと充実できるはずだ!』って事なんじゃないかな」

自分の可能性を感じているからこそ、高い目標をたてる。

目標が高いからこそ、すぐに実現できない。
すぐに実現できないから、歯がゆいし苦しいし目をそむけたくなるんだね。


あなたには出来る。
あなたには可能性がある。

あなたには出来る。
プラスを積み重ねていける!

その大前提が「アナタは存在しているだけで価値がある」。

そしてもし、頑張れない時があっても
「アナタは、存在しているだけであってもマイナスになることはあり得ない」

だから安心して頑張っていいんだよ。


私がつらい時にくれた言葉を御返ししただけのことだったけれど、
伝えながら、心が震えた。

「あなたに出会えて、私は幸せです」

この言葉をまっすぐ伝えられた。

こんな素敵な言葉を、
声に出して伝えられる人に出会えたことが感謝だと感じた。


春休みの子供達が遊びに来るような普通の公園で
こんなに心が動くだなんて

1年前の私には、想像もできなかっただろう。

そう思えた、なんでもない日のランチタイム。

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