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2021年8月 詩「傍観者」「登場人物Aの証言」

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詠題:「演劇」




傍観者 森田玲花

私と私が手を取り合うとき、
指先では一種の諦めが通過し
知らない名前を交換こしあう

もういいよ の繰り返し
秘密をまとえば絶世の美女

駅構内ではネズミが轢かれた
それを片目に私はキスした
見て見ぬ振りする姿を見かねて
私は私に罰を下した

乗っ取るのか 乗っ取られるのか
私が私か 私が私か

全部フラペチーノにしたら
灰皿がわりにありったけの笑いを



登場人物Aの証言 ねむみえり

私が誰かであったとき、あなたも誰かであったのでしょう
腹の中にある台本は隠されていて
語られなかった感情は声もなくただ死んでいく

世界が全て神様のシナリオ通りだとしたら
あなたはこの世界が好きですか?
仮面の下でNOと言っても
私たちに与えられたセリフはYESしかないのです

暗転、明転をしてそこに誰もいなかったとき
私は一人きりだったということを思いだします
いつから?どこから?どの転換から?
いいえ、幕が上がる前からずっと

「笑顔が印象的です」と書かれた寄せ書きを
受け取るたびに泣いています
外せないマスクの下を見ないで
本当の自分なんてもの、何の価値もないのだから


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