サプライズに見た、妻の”第六感”の正体。
母の日に、ちょっとしたサプライズをしようと思った。
コロナウィルスの影響で、出先といえばスーパーか、家の目の前の公園くらい。加えて、家事・育児のワンオペ化。月に2～3日出社しなくてはならず、当面コロナウィルス罹患のリスクは排除しきれない。（気を付けてはいるが。）
そんなわけで、いまは互いの生活空間を完全に分けている。意図的なワンオペ化は、子供への罹患リスクを下げるための妻の提案だ。とはいえ、妻のストレスはどれほどだろう。息子は2歳。基本的に良い子だが、恐竜みたいに咆哮することもある。逆の立場を想えば、とにかく頭が上がらない。
母の日。埋め合わせなどできようはずもないが、せっかくの機会でもある。妻はスイーツが好きで、特にチョコレートに目がない。コンビニスイーツとコージーコーナーの組み合わせで、その効用は逓減しつつある。マンネリ化したはけ口の一つに、とっておきのチョコレートを贈ろう。
選んだのは、最近話題のMinimal。母の日限定のギフトを見つけた。妻は専業主婦。我が家のお財布は1本だ。ゆえに、お金のかかるサプライズは厳禁（有難迷惑）なのだが、今回はなけなしのお小遣いから出すので問題ない。配送予定日は5/9（土）。花は夕方、子供を連れだすタイミングを見計らって抜け出し、近所の花屋さんで買うことにしよう。完璧な計画。心なしか、手元作業の進捗も速い。
5/7（木）のお昼過ぎ。仕事中に珍しく妻が呼びかける。（なぜか毎回「コンコン！」と口で発する。）
「あのさ」
「最近何か買った？」
女性だけが備える第六感。微妙な違和感をかぎ分ける力。そんなもの幻想だと思っていたけれど、その力は、いま確かに「私」に向けられている。なぜこのタイミングで、なぜ今。私はチョコレート以外買っていないし、チョコレートを買ったことに妻が気づける術はない。
「え？・・・買ってないと思うけど。」
妻は、訝し気にこちらを見ている。
「チョコレート買った？」
「minimalっていう所の。」
何という洞察力と捜査手腕。FBI超能力捜査官も感嘆しているに違いない。「チョコレート」だけでなく、「minimal」という妻が知り得ないブランド名が出た以上、何かしらのエビデンスを手にしているはずだ。
やむを得ない。買ったのは事実だし。正直に話そう。下手な言い訳は禁物だ。やましい気持ちはない。クレジットカードも自分のものだし。日頃の感謝を伝えるべく、さあ、来い。どんと来い、超常現象。
「買ったけど。母の日のプレゼントにと思って…。」
「あ、そうだったの。クロネコメンバーズからメールが来てて、何かなと思った。」
クロネコメンバーズ。クロネコ …
ああ。なるほど。ようやく合点がいった。妻あてのプレゼントなのに、届け先が私というのも何だなと思い、妻の名前に変更しなおして発注していた。運送会社がヤマト運輸だったのでクロネコメンバーズ会員の妻の元に配達前に通知が行ってしまったのだ。
不覚。宅配クライシスの切り札に、してやられるとは。妻はニヤニヤしながら続ける。
「サプライズすると、いつも大体こんな感じになるよね。」
確かにそうだ。
独身時代、プレゼントと花を、妻の住むアパートの玄関先にかけて帰った時も、「職場のセクハラ上司に、ついに自宅を突き止められた…」と思い違いを引き起こし恐怖の底に突き落としてしまった。
ディズニーシーのホテルミラコスタでプロポーズをした時も、部屋に花束とケーキが届くより前に正装に着替えておきたくて、「きちんとした格好でホテルのバーに行きたかったから」と言って、機嫌を損ねてしまった。「それなら私も正装したかった」と。（どちらも、後々喜んでもらえたから良かったが。）
到着したプレゼントをちゃっかり私に開封させ、早速一口つまむ妻。「うーん、ゴディバの方が好きかなあ。」そう漏らしながら、手と口の手を止めない辺り素直でない。まあ良いか。私たちは不器用同士。上げ足を取るくらいで丁度良い。
「はい。」
そういって、今日、散歩ついでにテイクアウトしてきたハニーカフェオレを紙袋から取り出して机に置く。ニヤッと笑って、もう１つのカップをこっそり自室に持っていく。
「あー！ちゃっかり、自分も買ってる！」
そうやってプリプリ怒る時、妻はたいてい良い顔をしている。
おやつを食べながら、「ピンク！しろっ！あか！」と口ずさむ息子の声が、夕方に向かって進む部屋の時間を少し巻き戻したような気がする。
自室に鏡は無いが、私もおそらく同じような表情だったに違いない。ここ数日の出来事を思い出して、含み笑いしながら、このnoteを書いている。
何かのお役に立ちましたなら幸いです。気が向きましたら、一杯の缶コーヒー代を。（let's nemutai 覚まし…！）