楽しく勝つための現代麻雀技術講座第32回「勝負手でも半々で当たると分かる牌は止める」

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 アガればトップのテンパイ。危険牌を切ってリャンメンテンパイと安牌を切って悪形テンパイなら前者を選んだ方がアガリやすいというのがセオリーですが、5sはいかにも放銃しそうなところです。

 結論から言えば、5sは単に通常無スジより危険というレベルではなく、半々の確率で放銃する牌。前章(第19回)で示したような読みを駆使することで気付くことができます。

 まずは最後の手出しの4sがチーして切られたものであることから、4sがメンツ候補の一部であれば4sの周辺が当たり牌になると言えます。

 4sがメンツ候補の一部であることは、一つ前の5m手出しして456mと鳴いていることから分かります。556m頭頭と持っているところから打5mとターツ固定をしていますが、4sが浮き牌なら4s556m頭頭からわざわざ受けを狭めて5mを切ることはないので、4sもメンツ候補の一部となります。

 そして、下家の6sが鳴かれていないことからメンツ候補を更に絞れます。6s受けがなく4sが切られるようなメンツ候補は、224sか344sのいずれか。よって半々の確率で5sは当たり牌、2sに至ってはほぼ当たり牌と言えます。今回は6sを切ってもテンパイなのでなおさら6s切りますが、仮に5sを切らないとテンパイがとれないとしても、他のメンツ候補を落として5sへのくっつき狙いで進めます。

追記

 「勝負手なら半々の確率で当たる牌でも切る」。麻雀界ではよく見られる表現ですが、(実力者であっても)確率の感覚に疎い打ち手が多いことが分かる言葉でもあります。本当に半々の確率で当たるならよほど条件が揃わない限り勝負しない方がよいですし、実際には半々の確率で当たると読めることはそれほど多くないので、勝負手なら多少リスクを負ってでも押した方が勝ちやすいというだけに過ぎません。

 しかし、鳴き手への読みもある程度体系化された今となっては、一点とは行かずとも、半々程度で当たるまでなら分かることもそこまでレアケースではないということにも気付かされます。「分かるうえに、なおかつこちらが勝負したい手」になることは流石にレアケースとしても、読めるようになるということは、場況をよく見てうまく情報を処理できているということですから、その点では強くなるために重要な技術とも言えるのです。

 今回の問題はサイト版「現代麻雀技術論」でも掲載した2007年頃の牌図。元を辿れば「とつげき東北HP」の何切る掲示板で出題された問題です。当時多くの打ち手が5sを勝負すると答えたのに対して、東風荘のトッププレイヤー達が、5sが半々の確率で当たることを論理的に説明しているのを見て驚かされました。読みの技術も含め、一歩先を行く打ち手に自分もなりたいという思いが、「現代麻雀技術論」を書く原動力になりました。

 2015年発売の「天鳳完全攻略読本」では天鳳位全員、鳳凰民全体でも84%が打6sと回答。最早この程度の読みは「常識」になったと言ってよいかもしれません。ネット麻雀を通じて戦術考察が盛んになる中で、コアなユーザー層の戦術レベルが底上げされた事を裏付ける一例とも言えるのではないでしょうか。

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