現代麻雀技術論註第20回「打点を意識するうえでの注意点」

 前回は、「アガリ率は小差の比較をすることも多いが、打点は大差の比較になりやすいので、手牌評価はむしろ先に打点を評価した方がやりやすい」という話をしました。

 しかし、打点を評価するあまり、一昔前よく言われたような「手役偏重」の麻雀にならないよう注意する必要もあります。今回は打点を意識する際の「注意点」を取り上げることにいたします。

手役完成やドラを使えるまでの「距離」を意識する

 「一昔前の手役偏重麻雀」と言っても、2020年の今となっては、「手役より手数重視の麻雀」こそが一昔前かもしれません。ここでの「一昔前」とは、現在の麻雀ルールが一般的になった1980年代から、データを用いた研究から、「手役より手数重視の打ち手に実力者が多い」ことが判明するまでの2000年代前半を指すものとお考え下さい。

 当時の戦術記事を読むと、驚くほど「三色同順」を意識したものが多く見受けられます。今でも「何切る問題」の定番と言えば三色狙いですが、当時が今と異なるのは、三色完成までの「距離」に関係なく、完成する可能性が少しでもあるなら三色に言及されていました。

 三色の牌が均等にばらけている場合はもちろん、二色に偏っていても、その二色に同じ数の牌が多くあれば、三色目の牌を引いてくれば三色同順を狙えるようになるので、大半の手牌は意識しようとすれば三色を意識できます。しかも、例えば5m5p5sと浮き牌が3枚あれば、三色が完成するまでに6手も掛かりますが、「5」を軸にして345、456、567の3通りもの三色が狙えるととらえることもできます。「手役はルールの段階で誰もが覚えるが、麻雀を遊ぶだけなら、アガリまでの距離に関する概念を覚える必要がない。」これこそ、一昔前は手役偏重だった理由でありましょう。

手役やドラより、打点そのものを意識する

 メンタンピンツモ三色イーペーコードラドラ…裏ドラも2枚乗って三倍満。そんな派手なアガリに憧れた時期が私にもありました。しかし、元から高い手を更に高くするのは難易度が高いうえに、難易度に見合った打点が得られないことが多いもの。手役の狙い過ぎにも狙わな過ぎにもならないように、アガった時につく手役やドラを、「5200」「8000」のように、点数そのものに変換して考えるようにします。

額面上の打点より、実際にアガれた時の打点期待値を意識する

 しかし点数そのものに変換すると言っても、リーチにはメンゼンツモ、一発、裏ドラがあります。子のリーチ平和ロンは2000点ですが、子で平和をリーチしてアガった場合の打点期待値は約3500点にもなります。

 鳴き手についても、クイタンドラ1の2000点が途中で表ドラや赤ドラを引いて3900や8000になることもあります。額面上の打点にこだわるのも必要以上に打点を意識してしまう原因になります。「点数計算はルールの段階で覚えることになるが、不確定要素込みの打点は覚える機会が少ない。麻雀を打ち慣れている人ほど、不確定要素を軽視する傾向がある。」これもまた、手役偏重になりがちな理由と言えます。

アガれた時の打点期待値より、アガれなかった時の失点込みの期待値を意識する

 「安手をアガってもつまらない」これも一昔前はよく聞かれましたが、麻雀は自分が加点できなければ失点を積み重ねていくことになるゲーム。「ツモアガリ確率計算機」等のツールで牌姿を調べると、「一昔前の手役偏重の選択」とされがちな打牌も、得点期待値で見ると案外悪くないということに気付かされます。

 しかし、こうしたツールはアガれなかった時の失点までは考慮されていないので、実戦では相手のアガリを阻止するうえでも、打点期待値に大差なければアガリ率重視の選択が勝ちやすいと言えます。

 逆に言えば、「誰もが手作りが遅い」のであれば、打点重視の手組が成功する可能性が高くなると言えますし、「誰もが押し引きが不得手」であれば、当たり牌を止められてテンパイ止まりのはずだった手で出アガリできる可能性が増えるのでますますその傾向が高まります。これもまた、手役偏重になりがちだった理由の一つと言えそうです。

単純な局期待値より、順位点を考慮した期待値を意識する

 『勝つための現代麻雀技術論』(2014年出版)では、「手役より手数重視の打ち手に実力者が多い」ことが判明した2000年代後半以降の傾向よりは打点を意識した手組を多く掲載しました。麻雀研究が進むにつれ、打点重視の手組が有利な手牌自体は案外少なくないことに気付かされたためです。

 本書の牌姿は特に言及が無ければ、「東1局0本場」を想定しています。いわゆる「平場」ですが、平場と言っても言葉通り「平均的な打ち方」をする局面かと言われれば案外そうではなく、むしろ局全体からみれば「アガリ率より打点重視」の局面。「オーラストップ目ならアガリ率重視、ラス目であっても3着目と僅差ならアガリ率重視。」と考えれば、局期待値通りに打たない時ほどアガリ率重視に傾くので、結果的に局数が多く残っている時ほど打点重視に傾くことがお分かりいただけると思います。

 残り局数が少ないにも関わらず必要以上に打点を意識するのは、東1で必要以上にアガリ率を重視するよりも大きな失点につながります。「手役より手数重視の打ち手に実力者が多い」のは、手数重視がベストな選択とは限らないが、ミスだとしても大損にはなりにくいことにも理由がありそうです。

 


 


宜しければサポートお願いします。サポートは全てラーメンのトッピングに使わせていただきます。ラーメンと麻雀は世界を救う!