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新麻雀徒然草番外編第4回「戦術本レビュー裏話」

「麻雀ウォッチ」での連載が決まり、初めに書いたものと言えば、拙著『勝つための現代麻雀技術論』の註釈。本の帯紙にある通り、私が「現代麻雀技術論」を記すきっかけになったのが、『科学する麻雀』(とつげき東北氏著、講談社、2004年発売)との出会いでした。

 今世紀になってからの麻雀戦術書で類を見ないベストセラーとなった本作。勿論当時は大変話題になり、2chのスレッドも大盛り上がり。これだけ話題になれば当然アンチも出てくるのですが、約一名、寝ている時間以外はコテハンと名無しを使い分けて自演と荒らしを続けている(何故ならその時間以外は、とつげき東北氏に対するアンチ書き込みはあっても、その方への賛同する書き込みは一切出てこなかったため)と思われる方がいらっしゃいました。「何切るスレ」「天鳳雑談スレ」の某氏並みかそれ以上の香ばしさでしたが、某氏は何年も続けていたということを踏まえると、総合的にはやや劣るというところでしょうか笑

 香ばしいアンチをウォッチングするのも娯楽としては面白いのですが、そのせいで本書の内容についての言及がほとんど埋もれてしまっていました。確かに本書は麻雀戦術のパラダイムシフトを起こした傑作ではありますが、インパクトを重視するあまり、若干やり過ぎと思われる記述も多々ありました。(ついでに言うならば、手作り関連は、「何切るスレ」のコテハンの方々が討論している内容の方がよほど精度が高く、あえて見る必要性は薄いと感じざるを得ないもの。アンチの方々もそういうところに突っ込んでもらえば良かったのですが、悉くスルーされていたのが不思議でなりませんでした。)

 『勝つための現代麻雀技術論』は、編者の福地氏を始め、各方面の方々の御尽力のお陰で『科学する麻雀』シリーズに次ぐヒット作となりましたが、ただ売れるだけで内容について言及されなくなるのは何とも惜しい話。そのような思いから万人が閲覧出来る形で、「註釈」を書かせていただいたのであります。

 最初のうちは無償で記事を掲載していたのですが、運営が軌道に乗った為か原稿料をいただけるようになりました。原稿料で麻雀本を買い、その本のレビュー、検証で原稿料をいただく。この繰り返しで世に麻雀本が出る限り記事を書き続けられるということで、「戦術本レビュー」シリーズを始めることに致しました。麻雀団体として最大手の日本プロ麻雀連盟の本をレビュー出来なかったのは至って残念でしたが、それについては既に書いた通りなのでここでは省略いたします。

 連盟以外でレビューを差し控えすることになった本がありました。その時は何事もなく通り、「その1」が掲載されたのですが、当日中に記事が削除。レビューが差し控えになったのは「反響が大き過ぎる恐れがあるため」とのことでした。

 麻雀ウォッチに掲載するという体を取っている以上、筆者への批判は控え、批判に終始せざるを得ない出来映えであれば、最初からレビューしません。しかし、内容面で完璧な戦術書などあるはずもなく(もしそのような本が登場する日が来れば、私が麻雀界で為すことは最早何も無いのですから喜んで引退。ただただ麻雀を日々楽しむだけの人生を送りたいですね。)、疑問点があれば必ず言及するようにしております。

 例の本でどうしても気になったのは、帯紙の「正しい打ち方ではなく、楽しい打ち方のために。」というフレーズ。確かにカジュアル層に対して正しさを殊更に強調する必要はないですし、何より麻雀を打つ楽しさを覚えて欲しいという気持ちは理解できますが、これから麻雀を覚える人向けの本として、「正しさよりも楽しさ」と強調することが、果たして適切と言えますでしょうか。

 実力主義の将棋の世界でも、「B級戦法」と呼ばれる、研究が進んだプロ間で採用するのは難しいとはいえ、アマチュア間では十分通用し、手順が覚えやすいので指してて楽しい戦法が多々あります。私も現役だった頃はB級戦法の愛好家。環境の都合で将棋の勉強も実戦も殆ど出来なかった中学時代に付け焼き刃のB級戦法で、数年後にプロ入りを果たした少年達とも善戦出来たのは良い思い出でした。

 しかし、いくら「B級戦法」と言っても、使いこなすためには基本的な手筋を身につけ、読みの力を養う必要があります。ですから将棋の入門、初心者向けの講座は、基礎かつ極めて重要な「正しいこと」しか書かれません。勝敗を競うゲームである以上、その段階をクリアできなければゲームを「楽しむ」ことも難しいのです。

 入門書としての内容は申し分無いとしても、コラム内で時折見られる麻雀に対するスタンスが入門書として適切とは言い難いのではないか。批判に聞こえないようにやんわりと取り上げたつもりでしたが、結果的にレビューを差し控えることになってしまいました。反響が大きいから「全肯定」するつもりで書かないとやっぱりダメだったかとも思いましたが、それでは少なくとも私がレビューする意味合いは無いに等しいでしょう。

 連盟の時は味方になってくれる方も多かったので、むしろ美味しいネタが出来たと笑い飛ばしていたのですが、この件については麻雀界隈でも圧倒的に持ち上げる声が大きく、本音を漏らすことのできる場所も無し。この頃から、「何だかなあ」というモヤモヤ感が拭えなくなっていたのでありました。





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