教育分野で社会貢献について 宮古島のきわめて健康コラム vol,146

40代のやりたいこと探しが「教育分野で社会貢献」に行き着く罠について

コロナ禍でダメージを受けた企業では今後、早期退職募集が進むと考えられ、初めて転職市場に出てくる40代以上が多くなりそうです。早期退職募集の対象になったという人に限らず、パンデミックに直面して自身の人生やキャリアについて見つめ直した人は少なくないと思います。今回は、40代以上が今後のキャリアを考える上でのポイントを考えていきましょう。

 40代以上の人に「これからやりたいこと」について聞くと、面白い共通点が見えてきます。もちろん全員ではありませんが、行き着く先が教育分野になる人が多いのです。

「残りの仕事人生を考えると、教育分野に行って社会貢献したい」

 このような希望を述べる方が少なくないのです。その気持ちはわからなくもありません。ビジネスパーソンとして一定の成功を収めた人は、自分がやってきた仕事に自負があり、自分の経験から後進に教えられることがいっぱいあるはずだと考えるわけです。キーワードは「社会貢献」。実際に教育系に転じて立派に活躍されている人もいるでしょう。

 ただ40歳を超えて「やりたいこと軸」だけで今後のキャリアを考えている状態には、少し気を付けたほうがよいと思います。

自分の「やりたいこと軸」から 「お役立ち軸」に発想を転換


 自分の中からふつふつと湧き出るものがある人や、長い間にわたってやりたいことがあって、それに取り組むには今しかチャンスがない……!という人はその思いに従えばよいと思います。しかし、そうでなければ、「やりたいこと軸」はあくまで一つの視点として捉えるべきです。特に、40代以上のビジネスパーソンのように、一定以上の経験を積んだ人がキャリアや転職を考えるときは「お役立ち軸」に注目するのをお勧めしています。

「お役立ち軸」とは要するに、自分が同じ1時間を費やすとして、何をすることが相手の人や世の中に対して価値のある高いパフォーマンスを発揮できるか、という視点です。その視点で考えると、おのずと今まで仕事で磨いてきたスキルや経験に基づくものになります。そうしたスキルや経験をどう生かすのかという視点で、これからのキャリアや転職を考えていくのです。

 社会貢献という発想から出発して教育に行き着く人の問題は、具体性に欠けている点にあります。いくら自分がキャリアを歩いてきた領域で成功を収めていたとしても、教育はまったく別の専門的スキルや知識、経験が必要な分野で、すぐに役に立てるとは限りません。そこに思いが至らない人が多いのです。漠然とした「やりたいこと」を無理やり絞り出すのであれば、これまでのキャリアを基にした「お役立ち軸」から考えてみるのも一つの手です。

 心の底からやりたいことがないからといって、何ら恥ずべきことはありません。私自身もいまの仕事が心の底からやりたい仕事かと言えば必ずしもそうではなく、キャリアに関する仕事をすることが最も高いパフォーマンスを出せ、皆さんがものすごく喜んでくれるのでやり続けています。

 そもそも自分の内側からふつふつと湧き上がってくるようなやりたいことを持つ人がどれだけいるかといえば、人口全体の割合からすれば少数派でしょうし、そういう人は40歳を迎える前に、とっくに行動へ移しているのではないでしょうか。

お役立ち要素が見つからなければ 第三者の目を活用する


 自分が何をすると一番役に立てるかを考えるときは、キャリアの棚卸しが必要になります。ここで気を付けるべきポイントは、長年にわたり豊富な仕事経験を積んできた人には、意外と自分では気付かないお役立ち要素があることです。

「私は営業一筋で、それ以外のことはやっていないので……」

 このように大枠で「○○しかやっていない」と言う人が多いですが、詳細に話を探っていくと、お役立ち要素が見付かったりします。例えば、こんなケース。

「営業一筋とのお話ですが、これまでの営業先には今も連絡は可能ですか」
「もちろんできます」

 この場合、この方は立派な人的ネットワークの持ち主と言えます。

 また、「過去、営業所の立ち上げを数回やりました」となれば、ゼロイチで拠点を立ち上げた経験者ということ。拠点展開を行っている会社でニーズがあります。

 本業の仕事ではないが、たとえば業界団体の立ち上げに奔走した人や、政府の審議会等の委員を務めた人などは、特定分野における深い人脈を持っているケースが多いです。実際、ある分野の業界団体の立ち上げに貢献した人は、主要企業でその分野を担当している人全員と知り合いになっていました。本人はそれが強みになるとはまったく認識していなかったのですが。

 本人としては「本業のプラスアルファで動いていただけ」との認識でしたが、今後のその業界の動向次第では、ますますその人脈の価値が高まる可能性があります。

 キャリアの棚卸しでこうした見落としを防ぐには、信頼のおける第三者の力を借りることです。われわれのようなキャリアコンサルタントと話してみるのもよいでしょうし、自分をよく知る上司や同僚、仲間とお互いに「あなたにはこんな強みがある」と指摘しあってみるのもよいと思います。


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