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【実話】ど田舎の地元が好きで嫌い〜長野脱出編⑤〜

↑前回までの話↑


日曜日
外で食べる肉はうまい。

仕事が休みだったのと、天気が良いと前日の予報で言っていたので明日は久しぶりに庭で肉でも焼いて食べようと提案した。外の方が開放的でなんだか話もしやすいかなと思ったのもある。

すっかり晴れた太陽の元で熱い炭の世話をする。
まだ5月だというのに蝉が鳴き始めそうなくらいの気温。長野なのに全然避暑地じゃない。。

『そろそろ焼き始めよう!』と肉を準備し始めたのは義父。
このタイミングになってしまったが、義父について説明。

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母親は私と姉を女手ひとつで立派に育ててくれた。
そして、僕が高校を卒業し手が離れたので当時付き合っていた方と再婚を果たした。その人が僕の義父です。

ちなみに専業農家。
その環境に飛び込んだ母強し。笑

50歳からのセカンドライフを謳歌するんだとよ。
そんな力強く生きる母を尊敬し、影響されて僕も上京することに勇気をもらっていたのは事実。

そして、母親の過去や人柄を愛してくれて家族になってくれた義父には本当に感謝しかありません。

再婚し義父の家に住むことになった時、母親たちの結婚生活を邪魔しないように僕は一人暮らしを始めようとしました。しかし義父が『19歳じゃまだまだ遊びにお金がかかるだろうから、空いている部屋を使って住んでいいんだぞ。』と僕のことまで心配して面倒を見てくれました。本当に優しい人です。

結婚生活直後に母親の癌発覚は義父にとってもかなりショックは大きかったと考えます。ですが、あの人は母親が前向きに治療に専念できるよう普段通り元気に母親に接してくれました。そんな旦那に支えられ、母親も徐々に病気に対して対抗する気持ちが強くなっていきました。

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畑で取れた野菜や肉を焼いて食べ進め、僕は母親にやっとの思いで言いました。


『東京行くのやめようと思う。』



炭がパチパチと爆ぜて鳴る音だけが一瞬響きました。

家の外に飛び出した猫を探している義父はまだ帰ってはきません。


数秒続いた沈黙を破り、母親が聞いてきました。


⑥に続く

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