見出し画像

生きている意味なんて、きっとあなたと語り合う景色のようなものだ


4月8日、木曜日。

お昼過ぎに起きて3分間で出来あがる塩ラーメンをするすると食べ、15時半から予約していた美容院に行きました。
美容師さんがすこし伸びた髪を、慣れた手つきでチョキチョキと切っていく姿、いつ見てもかっこいいなあ…と思います。自分のクセをうまく使えるようになったね、と言われて嬉しかった。

髪が軽くなって、すこし気分も軽くなったような気がして、「映画を観よう」と思い立って、その足で久しぶりに映画館に行きました。

今はお客さんも少ないし、何より換気しなければいけないので、ポップコーンの香りは充満していないし、すこし寂しい気持ちもありながらも、やっぱり映画館の空気はいいものだなあと思います。なんとも言えない、嗅ぐといろんな映画のことを思い出す映画館だけの香り。いいですよね。

さて、今日観たのは「スリー・ビルボード」のフランシス・マクドーマンド主演、クロエ・ジャオ監督の「ノマドランド」という作品。(「スリー・ビルボード」もとてもよい映画なのでぜひ…)

ゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞などにノミネートされていて、映画好きな方たちがとてもよかったとツイートしていたので、これは映画館で観ようと決めていた作品です。

以下、公式HPに記載のあらすじを。

企業の破たんと共に、長年住み慣れたネバタ州の住居も失ったファーンは、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込んで、〈現代のノマド=遊牧民〉として、季節労働の現場を渡り歩く。その日、その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流と共に、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく──。(ノマドランド 公式HPより)

Twitterに、“「ノマドランド」美しい詩の一節を読んでいるような、愛おしい映画でした。長い旅路の途中に見た景色や、出逢った人、愛した人。『また どこかで』そう伝えたら、いつかまた旅路の途中で会える。その時、見てきた景色を話し合おう。生きる意味はそこに、きっと。今年のベストに入るであろう一本です。”とツイートしました。

140文字では伝えきれていないのですが、とにかくよかったので…ここに追記できたらと思います。

この映画、わたしは詩の余白だと思いました。
華やかではなくて、盛り上がる場面もなければ、酷いことが起きるわけでもない。愛する人が無くなっても、変わらずにただ生活は続き、それぞれの辛さや苦しみがある。

ただ、それでもと生きた先に新しい景色を見て、あなたのことを思い出せば、そこでまた逢える。その時にはまた、見てきた景色の話をしようと、生きている意味なんてないかもしれないけど、わたしはそれを生きている意味とするよ。そんな愛をもった作品だと思いました。

ファーンが出会う人々には、それぞれの物語があって、誰かへの愛があって。時々、優しくない人もいるけど、その分だけ優しい人はもっと輝いて見える。遠い土地の物語ですが、まるでわたしの生活のようであり、見たかった景色のような物語でした。

遠く遠くまで続いている砂漠の景色とか、何枚も重なった薄雲の先に見える山の景色とか、果てしなく続く海を形取る水平線とか。そんな景色をふぅっと眺めているだけで、少しだけ心が軽くなるような時間。

登場人物の一人が、美しい景色の話をして「そこでわたしは死んでもいいと思った、死ぬなら病院で死を待つのではなく、そんな美しい景色の中安らかに死にたいわ」という話をしていたのが、とても印象に残っています。

わたしも今こんなところで死ぬくらいなら、美しい景色のなか、愛する人を想って死にたい。そんな風に、むしろ消極的なようですが、ちいさな生きる希望をもらえたような気がします。

もしも今、すこし生きることに悩んで、生きている意味ってなんだろうなんて考えている人がいたら、少しだけ時間とお金をつかって、映画館でこの作品を観てみてください。

確実な答えはないけど、もしかしたらあなたにとっての道標が見つかるかもしれません。ぜひ。

今日はそんな映画の話でした。
きっと、語ったあとに「ああ、ここはこう書けばよかったな…」なんて後悔するのですが、ひとまず稚拙な文章で少しでも伝われば幸いです。

では、また木曜日に。

おやすみなさい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?