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夜を進む宇宙船


今日は、子どもの頃の夜について。
わたしは眠ることがすごく苦手で、大抵は3時とか4時になってようやく眠っているのですが、それは小さいときも同じでした。

父も母も姉もみんな眠ってしまって、それぞれの寝息と寝返りの音しかしない、しんとした部屋。幼いわたしにとって、そこはどこかも分からない暗い闇の中で、宇宙みたいに途方もなく広がっていて。眠らなければいけない焦燥感と、眠りにつくという死に最も近い感覚がすごく怖くて。夜は生と死について考える時間でした。

考えても分からないことばかりで、生きている意味ってなんだろうとか、私が存在する地球とか宇宙ってなんだろうとか、ずっとそんなことを考えていました。考えていたらだんだんと怖くなってきて、眠っている家族にすり寄って、温もりで存在を確認して。

当時は音楽を聴くにもCDプレイヤーやラジカセしかなかったので、イヤホンをしていても機械の音がうるさいとよく怒られたものです。今思えば頷くほかありませんが…。

そうなると、できることは何かといえば、漫画を読むことくらい。物置部屋にあるほとんどの漫画は母親と姉の揃えたものだったので、少女漫画や婦人向けの漫画が多くて、大好きな榛野なな恵さんの「Papa told me」や、高野まさこさんの「シュガーベビー」、紡木たくさんの「ホットロード」、深見じゅんさんの「ぽっかぽか」などなど…みんな思い出の漫画たちです。

コックピットみたいに狭い物置部屋に、掛け布団を持ち込んで、たくさんの漫画をひっそり読んでいる時間、それが夜をひとりで過ごす唯一の楽しみでした。

それから、今は自室ができて何かを流していても怒られることはなくなったし、何よりスマホがあるのでなんでもできる。眠れない人にとっては、いい時代になったものです。
(スマホを見てることでより眠れなくなるという意見はそっと隅に寄せておいて…。)

ただ、なんでも好きなものを選んで見られるようになったことで、親が昔に買っていた好きな本とか、聖子ちゃんカットの女性が載っている雑誌とか、そういうものを見る体験が今はもう感じられないんだなあ、という寂しさも少しあります。

あ、でもスマホが悪いとかではなくて、今子ども時代を過ごしている人はきっとまた別の体験があると思うので、それはそれでいいんです。眠れない夜を過ごした記憶があること、それが大事だと思うので。

眠れないと呟けば、同じように眠れない夜を過ごす人と繋がることもできるし、簡単に誰かと話すこともできる。

それは宇宙空間でどこかの惑星にいる顔も知らない誰かと交信するようなもので、もしかしたらあなたは宇宙人かも。あなたから見れば、私が宇宙人ですね。そんな風に考えてみたら、眠れない夜もすこし楽しいかもしれない。

ちいさな宇宙船に乗ったあなたといつか出逢えたら、わたしはうれしいです。広い宇宙の中で見つけたものを、見せ合いましょう。またそれぞれの宇宙を旅して、目にしたものをよかったらまた出逢えたとき、たくさん聞かせてください。

眠れなくてもいいのですが、起きなきゃいけない時間は来てしまうから、ぐっすりと眠れますように。また夜に会いましょう。

おやすみなさい。

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