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【掌編小説】泣きはらした君に

 机に突っ伏して丸まる背中に、一筋の光が走っている。閉め切ったカーテンのすきまから入り込んだものだった。

「りーお、気晴らしにどっか行こか」

 カーテンを開けながら言う。

「晴らしたいもんなんてない」

 くぐもった声に、心の中で(想定内やで)と返す。

「じゃあ気散じに行こう」

「……キサンジって何」

 何拍か間を置いて、りおが少し顔を上げた。

「おんなじ意味や。気晴らしと」

 ほん、と喉から低い音を出し、りおは再び突っ伏した。

「言い方や見方で、印象が変わるもんって結構多いねん。意味は一緒やのに」

「父さんの説教くさいとこ嫌い」

「おれはりおのこと大好きやけどな!」

「きしょい!」

「またまた、照れ屋さんなんやから」

 げえだのぐええだのえずいているりおの後頭部を、幼いときのようになでてやりたいと思う。実際にしたら絶縁ものだろうが。

 だから言葉に乗せる。

「で、どこ行く?京都?神戸?」

「行かん!」

 おれは何があってもお前を愛している。

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