父が父じゃなくなるとき
ノートを探している時だった。私は自分の本棚から父親の手紙を見つけた。
手紙と言っても私宛ての、いわゆる父から娘に向けて渡された感動レターではない。父が自身の旧友に宛てた手紙の下書きだった。
父は趣味などにとにかくこだわりが強い人間だが、あまりそのこだわりを私たちに語ったりするようなタイプではなかった。自分や同志の内輪で楽しみ、そのくせ人の好みや趣味を勝手にセンスが良いだの悪いだのとジャッジする、無害なのかひねくれているのかよく分からない人間である。
私はそんな父についてよく