見出し画像

2020年3月に読んだ本と4月の予定

3月はいろいろありまして,読書も捗るかと思ったのですが,なかなかそうもいきませんでしたね。数としては8冊だったのですが,他にも読んだものはあったので後述します。

2020年3月の読書記録

(1)相場英雄,2019『トップリーグ2 アフターアワーズ』(ハルキ文庫)

​前月に読んでいたものの続編。ストーリーは引き込まれるものがあり,また近いタイミングでNHKのBSスペシャルにて放映されていた渡辺恒雄の回顧番組を見ていたこともあり,非常に楽しめました。ときに批判を受ける政治部記者の生態がいきいきと描かれている秀作。


(2)呉座勇一,2016『応仁の乱―戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)

前月に藤田(2019)を読んでいる間,江戸初期の話は戦国時代のことが分かっていないと,きちんと理解できないなと思い,また,戦国時代を理解するには応仁の乱を考えないといけないのだなと思って,急いで読みました。実は,日本中世史は大学受験の頃からしっくり来ていなくて,それは同じ家なのに反目し合う人々の存在があったのですが,本書を読むことで諸家がなぜ対立したのか,そして大乱がなぜ長続きしたのかを構造的に理解することができたような気がします。また,経覚と尋尊という2人の僧の日記が主要な史料となっているのですが,この2人の高僧の性格的な違いが,同じ現象について異なる解釈を与えている点について,とてもおもしろいなと思って読みました。


(3)曽我謙悟,2016『現代日本の官僚制』(東京大学出版会)

著者は現代の行政学の泰斗と言えます。これは他の本と併せて真面目な書評を準備しているので,内容はそちらで。まだ書評を出していない理由も後ほど。


(4)河合晃一,2019『政治権力と行政組織―中央省庁の日本型制度設計』(勁草書房)

若手行政学研究者による1冊。書評については(3)曽我(2016)と同様に準備中です。


(5)司馬遼太郎,2020『余話として』(文春文庫)

一応,司馬ファンなので読みました。司馬作品は創作として非常に面白いところがありながら,ところどころに現れる「長すぎる脱線」が読者の興味をそそるのですが,本書はまさにその脱線部分を集めた1冊です。20程度の歴史関連のエッセイが集められているのですが,個人的にぐっと来たのは「太平記とその影響」と題する一節です。太平記は講談の題材となることで庶民の耳に入り続け,歴史を変えた「戦慄的な書物」となったと評価するあたりは非常にダイナミックな展開で良かったですね。


(6)お股ニキ,2019『セイバーメトリクスの落とし穴―マネー・ボールを超える野球論』(光文社新書)

野球好きならその名を知らない者はいない,「セイバーメトリクス」。オークランド・アスレチックスを2年連続シーズン100勝に導いた名GMビリー・ビーンをメインに据えた『マネーボール』で注目を集めたのですが,近年はその弊害も指摘されています。著者は野球経験は少ないものの,Twitterで積極的に独自の野球理論を発信してきたアルファ・ツイッタラーで,ダルビッシュ有投手ともTwitterをきっかけに親交を深めた,いわば「プロの素人」。近年のデータ「のみ」に注視した野球に対する警鐘を鳴らす一方で,勝率を高める野球とはいかなるものなのかを多方面から検証しています。なにより著者は「楽しく野球を見ること」に強い思い入れがあるのだろうと思いながら読みました。野球好きは絶対に読むべき好著です。


(7)稲垣浩,2015『戦後地方自治と組織編成―「不確実」な制度と地方の「自己制約」』(吉田書店)

長年積んでいた本。これも(3)曽我(2016),(4)河合(2019)と併せての書評となります。


(8)森博嗣,2020『キャサリンはどのように子供を産んだのか?―How Did Catherine Cooper Have a Child?』(講談社タイガ)

WWシリーズの第3作。僕は森博嗣作品の中では<四季>が最も好きなのですが,<四季>好きが涙を流して喜ぶ筋立てになっています。森作品は表面上,難しく見えるのですが,あまり難しいと思って読まないほうが良いのでしょうね。森作品を未読の方は,S&Mシリーズから読むので良いとは思いますが,個人的には<四季>から読むとうまく入れるのではないかとも思っています。いずれにせよ,読みたいと思ったときに読みたいと思った作品を読めば楽しめるのが森作品の大きな特徴でしょう。


(番外)横山光輝『三国志』

実は,「ebookjapan」で全巻無料公開されていたので,3月下旬に全巻読みました。これまで三国志は敬して遠ざけて来たのですが,良い機会だと思い一気に読み切りました。知っている名前は多いものの,誰がどの陣営かすらよく分かっていなかったので,三国志のおもしろいコマが流れてきてもそのコマ自体のおもしろさしか分からなかったのですが,これで概ねあらすじや登場人物が分かったので前後の脈絡を理解して笑えるようになりそうです。また,三国志(あるいは三国志演義)自体に興味を持ったので,次は『蒼天航路』でもと思っています。


読んだ数が少ないので,ベスト3は今月はお休みです。とはいえ,三国志の60巻分を入れると68冊読んだことになりますね。まぁ数だけ見ても仕方ないですが。ともかく,いずれも面白かったことだけは記しておきます。


2020年4月の計画

先日Twitterにこんなことを書いていました。

上記のうち,林さんの本だけまだ読み切れていないので,まずはこちらを読み切って,4冊併せた書評を書くことが4月の第一目標です。林さんの本はいま80%くらい読んだところです。今週を使ってしっかりと読み切って,アウトプットしたいですね。
また,積まれ始めてきた最近出版された新書も読んでおきたいです。具体的には,
・寺沢『小学校英語のジレンマ』(岩波新書)
・本田『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)
・永吉『移民と日本社会』(中公新書)
・NHK取材班『AI vs. 民主主義』(NHK出版新書)
・村上・渡辺『SDGs入門』(日経文庫)
のあたりでしょうか。
さらに,山登り系の小説を手元に置いているので,こちらもなんとか進めたいです。
・浅田『劔岳 点の記』(文春文庫)
・笹本『帰るべき場所』(文春文庫)
僕自身は山登りをしないのですが,なぜか登山を題材とした作品は好きなんですよね。無理せず,自分のペースで読み進めていきたいですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?