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2020年2月に読んだ本と3月の計画

2020年2月はわりと暇だったのと、本を読むモチベーションが非常に高かったように思います。ですので、ほぼ1日1冊に近いペースで読むことができました。3月はテーマを定めて読もうと思っています。

2020年2月の読書記録

以下、読んだ順です。先頭にアレな感じの本が来ちゃってますが、あくまでも読んだ順ですので。

(1)橋下徹・三浦瑠麗、2019『政治を選ぶ力』(文春新書)


いろいろと縁があって大阪市関連の仕事をしかけたので(実際には何もしなかったのだが)、とりあえず読んでおこうと思い読んだ。橋下氏の民主主義観が色濃く反映されている一方で、三浦氏の誘導もあってか主張そのものはマイルドに感じた。三浦氏については、最初の単著(2012年『シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき』〔岩波書店〕)しか読んだことがなくて、テレビなどで目についたときにしかその見解に触れたことはなかったのだが、本書ではコミュニケーターとしての役割を果たしているのかなと。彼女のコミュニケーターとしての能力はある程度、高いものがあるのかもしれないと思う一方、やはり自分の考えていることを伝えたいという思いも当然あって、なかなか難しい立場に自己を置いてしまっているような気がしないでもない。


(2)矢野帰子、2019『科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました』(文春文庫)

矢野氏の作品はドラマ化などもされているが、初めて読んだ。作品設定についてとても良く調べられていて好感を持った。科学技術の進歩に対し、非科学的な言説もまた広まる逆説的な社会状況を取り込みながら、主人公の頑なな「科学信仰」が受け入れられず煩悶する様子、そしてどうしたら「科学的に正しいと考えられていること」が受け入れられるのかに懊悩する様子は、心当たりがある。


(3)津村記久子、2020『浮遊霊ブラジル』(文春文庫)


期せずして文春の本を3冊連続で読んでいた。津村氏の作品は笑って読めるから良い。良い意味であとをひかない。


(4)斉藤淳、2017『ほんとうに頭がよくなる世界最高の子ども英語―わが子の語学力のために親ができること全て!』(ダイヤモンド社)


第2言語習得研究と著者自身の経験(日本国内での英語学習、留学、イェール大学での教歴、そして帰国後の学習塾経営)がうまくミックスされ、非常に説得的な一冊。理論だけに偏っては読者が限られるし、経験のみに頼ってはただの自慢話・苦労譚に終わってしまう。一般書としての読ませる工夫とオーソドックスな学習手法の提示をうまく両立させている。


(5)西森聡『そうだったのか、乗りかえ駅―複雑性と利便性の謎を探る』(交通新聞社新書)


日頃、単なる通過点として見がちな乗りかえ駅に焦点を当てた一冊。相互乗り入れも含めた鉄道各社の戦略というマクロの側面と、駅構造というミクロな側面から乗りかえ駅を掘り下げる。


(6)澤円、2018『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒント』(セブン&アイ出版)


どういうモチベーションで読めばいいのか定まらず、なんとなく読んでしまったので、雑感は割愛。また戻ってくることがあるかも。ところで、アマゾンで見ると書影が持っているものと違うのだが、何かあるのだろうか。


(7)増田俊也、2019『北海タイムス物語』(新潮文庫)

七帝柔道記に続いて、読んだ。七帝柔道記も本書も分厚い。だが、その分厚さが気にならないくらい、爽快に読める。活字媒体を世に問うという社会的な、外向きの正義感と対照的な、七帝柔道記と同様の内向きの義務感が登場人物の原動力となっている。お仕事小説として非常に良い作品でした。


(8)藤田達生、2019『藩とは何か―「江戸の泰平」はいかに誕生したか』(中公新書)

これはTwitterに何かを書いたので、転載。

このあと、実は応仁の乱のことが分かってないと、戦国末期から江戸期はわからないのではないかと思って、呉座勇一『応仁の乱』を買いに行った。


(9)清水幾太郎、1972『本はどう読むか』(講談社現代新書)

別のTwitterアカウントで抜き書きをしながら読んだ。腑に落ちる部分もあるし、そうでもない部分もあるが、ハウツー本ではないしすべてが役に立つ読書は存在しないのだから、頭の中をいろいろな考えが飛び交うことがあって良い。


(10)見田宗介、2018『現代社会はどこに向かうか―高原の見晴らしを切り開くこと』(岩波新書)

正直な話、読んでいて自分が果たして何を読んでいるのか、さっぱり分からなかった。修行が足らない。


(11)山口慎太郎、2019『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)

内容はいろいろなところで書かれているので、わざわざ書かなくても良いですね。とても良い本です。ヤバい経済学が一世を風靡したように、この手の本が増えてくるのは、社会にとって望ましいことだと思う。が、少し懸念もあって、本書が「家族の経済学」の決定版のような扱われ方をすると、著者にとっても社会にとっても不幸だなと。こればかりは読者のリテラシーに委ねるほかないが。それにしても光文社新書はイケイケの若手経済学者に堅実かつ最先端を少しだけ見せる良い本を書かせるのがうまい。


(12)藤田博司、2018『「集合と位相」をなぜ学ぶのか―数学の基礎として根づくまでの歴史』(技術評論社)

物事を学ぶのに、「なぜ学ぶのか」を考える必要は本質的にはない。しかし、そこに理由を見出したほうが良い場合もある。本書は「こんなものを学んでなんの意味があるのか」というネガティブな発想に陥りやすい集合や位相の話を、「学んだほうがいいかも」と思わせてくれる絶好のコンパニオンだ。個人的には、この本はノートを取りながら読むものではないだろう。もう少しゆったりと、知らない世界を覗き見するくらいの気持ちで向き合うのが良いのではないかと思う。


(13)相場英雄、2019『トップリーグ』(ハルキ文庫)

あまり何の気なしに読み始めたが面白かった。続編もあるようなので、早いうちに読む。


(14)綿矢りさ、2020『私をくいとめて』(朝日文庫)

綿矢りさは、身近にいそうな、少し変わった女性を書くのがうまいですね。そんなこと芥川賞受賞当時から言われていると思うが。最近、綿矢・森見・万城目?(確かそうだったと思う)の鼎談を、こんな取り合わせあるのかと思って読んだ。


(15)三崎律日、2019『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語』(KADOKAWA)

Twitter転載。

著者ご本人にRTしてもらえたのは嬉しかったですね。読んでいることをお知らせできて良かったです。


(16)高田郁、2020『あきない世傳 金と銀(八) 瀑布篇』(時代小説文庫)

ついに8巻。最後の最後、思いもよらない展開。10巻までと予想しているのだけど、まとまるだろうか…。


(17)多湖淳、2020『戦争とは何か―国際政治学の挑戦』(中公新書)

あとから思ったが、新書で索引があるものってあったかな。ないものねだりしても仕方ないですね。


(18)津村記久子、2013『婚礼、葬礼、その他』(文春文庫)

当月2冊めの津村本。表題作は笑った。


(19)西東三鬼、2019『神戸・続神戸』(新潮文庫)

これも面白かったですね、変な人が多すぎて。


(20)西牟田靖、2018『本で床は抜けるのか』(中公文庫)

昔から本書でも出てくる本棚公開というコンテンツがあって、それはそれで好きだった(最近は芦田愛菜ちゃんも本棚のことを本にしてますね)のだが、そこに登場する死ぬほど本を集めた人の末路はどうなるのだろうかとずっと不思議だった。書名になっている疑問は、結局の所、「時と場合による」というのが答え。ちょっと思っていたのと違ったが、面白く読んだ。


(21)安宅和人・池宮伸次・Yahoo!ビッグデータレポートチーム、2019『ビッグデータ探偵団』(講談社現代新書)

この本、「面白いなー」と思ってあっという間に読んだのだが、こういうことができるのってYahoo!の資源があるからでしょ、とも思ってしまった。だが、いくら資源があってもうまくできない人はうまくできないので、安宅氏を始めとするYahoo!のチームの優秀さがあってこそだ、と少し経ってから気が付いた。


(22)加藤年紀、2019、『なぜ彼らは「お役所仕事」を変えられたのか?』(学陽書房)

たまにはこういう本を読んで職業的モチベーションを高めることも必要です。


(23)日経コンピュータ・山端宏実・岡部一詩・中田敦・大和田尚孝・谷島宣之、2020『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史―史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」』(日経BP)


もう最後の方は疲れて、一言を書く気力がありませんでした。最初は全部、がんばって雑感を書こうと意気込んでいたのですが。来月はがんばります。
とりあえず、今月読んだ23冊のうち、ベストの3冊を選ぶと、
清水『本はどう読むか』
藤田『藩とは何か』
三崎『奇書の世界史』
という感じですね。他の本も結構面白く読めたものが多かったです。


2020年3月の計画

自分の専門(政治学・行政学)に引き付けて読もうと思っています。ある程度、系統立てて読んだ方が良さそうな本も溜まってきているので。今は良かった本については、Twitterに読後雑感を投下しているのですが、ちょっと140文字じゃ入り切らなさそうな本が多いので、noteに投げられればと思っています。

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