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【本】『桜のような僕の恋人』(宇山 佳佑/集英社文庫)

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

今日は、恋愛物語『桜のような僕の恋人』をご紹介します。
ネタバレもちょこっとあるので、お嫌な方は、ここでひきかえしてくださいますよう…。足元にお気を付けください。



よろしいですか? 




ネタバレ含みますよ?

どこで読んだか忘れちゃったのですが、この本を読むうちに、アレクサンドル・デュマの「椿姫」を思い出しました。
「椿姫」は、こういう話です。

高級娼婦の「椿姫」には心底愛する青年がいました。
しかし、息子を心配して上京したその父親から「その恋愛は、息子の将来に差し障る」と諭されて、黙って身をひきます。

突然の別れ宣言に納得いかない青年は「フラれた! 騙された!」と誤解し、椿姫を深く恨みます。一方、椿姫は青年を忘れることができず、その上、青年の非情な態度に心を痛めて、病にかかり亡くなります。

その後、ひょんなことで青年は椿姫の本心を知り、自分の行いを深く悔やみ、椿姫の死を悲しむのでした…。

そう、この『桜のような僕の恋人』は、いわば「難病によって早逝した椿姫」の話です。

そしてまた、青年が、椿姫の死をきっかけに自分の夢を取り戻す話でもあります。この点が、現代風といえます。

そして、主人公たちが、物理的にではなく精神的にすれ違って出会えないエピソードは、「君の名は」(1952年のラジオの方。2016年のアニメ―ション映画のことではありません) である、ともいえます。

さて、この物語が問いかけていることの一つは、「人が人を愛するというとき、相手の容姿は、どれほど重要ですか?」 です。

主人公たちの職業は、カメラマン見習いと美容師です。どちらも視覚をフルに使う職業です。だから気持ちを打ち明ける代わりに、老化した身体を見せたくない/見たくない、という視覚重視の視点で、為すべきことを決めてしまったのかもしれません。

わたしは、読者たちの「涙腺崩壊」がはじまる前に、登場人物たちにとって、もっと他に出来ることがあったのではないかと考えるくちです。

この物語も、正直なところ、早い段階で、互いが自分の状況を打ち明けあっていたら、こうはならなかったと思います。

この物語では、主人公たちだけではなく、まわりの人々も皆、どれほど苦しくても、耐えて耐えて耐え抜いて、それからもう無理~となった時に、大逆転にしようとするので、うまくいかず、悲しい結末になだれ込んでしまうのです。

だから物語の外側で生きる我々は、大切な人がいつもと違う態度でいたなら、そっと「どうしてそんなことをしているの?」と問いかけるような関係を大事にしなくては。そして、決して毎日の惰性に押しつぶされないようにしなくては…。そんなことを考えました。

参考:
日本人に多い早老症のひとつ・ウェルナー症候群の原因や症状とは?
Netflix映画「桜のような僕の恋人」は2022年、全世界同時配信予定のようです。

■本日の一冊『桜のような僕の恋人』(宇山 佳佑/集英社文庫)

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