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宇佐見りん「推し、燃ゆ」を読んでみた

【雑誌】『文藝春秋』(2021年3月号)
こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

今日は、駅前の本屋さんで、文藝春秋を買ってきました。
この雑誌は、芥川賞掲載のときだけ買います。とにかく受賞作が読めるし、受賞者のインタビューとか、選評も一緒に読めるので、お買い得な気持ちになるから。

さて、今回の芥川賞受賞作品、『推し、燃ゆ』(宇佐見りん)の主人公は女子高校生のあかりです。「推し」のアイドルが生活の中心になっています。

わけあって、学校の授業にはついていかれないし、家庭のなかでも肩身がせまいけれど、彼女は「推し」から生きる力をもらっています。

身の回りのことは整理整頓できないのだけれど、「推し」に関する情報はすべて集めて、整理できる。すごいことに、「推し」が話す言葉は全部書き留めて諳んじているから、会見などを見ていたら、次に何をしゃべるのか予測できてしまうほど。
だけどあかりは、別に恋愛関係になりたいとかそういうわけではないらしい。

…というところ、割と私はとても共感できるけれど、不思議がる人もいるのだ。以前、私も異性のとあるアーティストが好きだとか言うと、「その人、もう彼女がいるよ?」とか「もう結婚しているよ?」と「心配」してくれる人がいた。異性に関心をもつこと=恋愛と結婚の対象と考えている と思う人も一定数いるから、「推し」活動が不思議なのでしょうね。

ちなみに私は、ドラマ「アンナチュラル」の主題歌『LEMON』で紅白にも出たあの米津玄師の歌を、なるべくたくさん上手に歌えるように練習することに一日30分ほど費やしています。それが私のささやかなる「推し」活動です。このご時世だからライブはむずかしいですが、幸い私は、歌を聴いて歌えれば十分です。

ま、それと比べると、「推し、燃ゆ」のあかりは、まだ女子高生なのにライブに行ってグッズをそろい踏みで買わなくちゃいけないし、だけどそれを買うために始めたバイトは、何やかんやで難しくて、とても大変そうです。こんなに八方ふさがりで、このあとどうなるんだろうかとハラハラしているうちに、さらに大変な事件が起こります。

あかりは融通が利かない性格なのですが、それを「真面目」と言われて、悩みます。私も同じような体験があるから、よくわかります。高校生ぐらいの頃、これからくる未来が、ひたすら怖くて不安だったのを思い出します。あのころは結構辛かったけれど、そんなもの、あかりの、この状況と比べれば大したことなかったですとも。
家族はそれなりに互いをいたわっていたし、保護者はちゃんと保護していたし、そもそも、彼女のような困難に囲まれていなかった。そう思うと、あかりのことが、なんだかいとおしくなってくる。

だから最後のシーンで、きっとこれで良かったんだよね? と問いたくなります。主人公「あかり」にとって、これで良かったんだよ、と誰かに言ってもらいたくなります。
その一方で、こういう設定の女の子にしては出来すぎな終わり方かもしれないとも思います。
こんな風に書いているけれど、決して、けなしているわけじゃないです。つまり私にとっては、それほどまでに、あかりが本当にいる女の子に感じられたってことなんです。

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