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結婚式のコンセプトデザイン思考法

このnoteについて

大仰なタイトルがついていてすみません。
私、本業とは関係ないところでウエディングプランナー資格を持っていまして、結婚式のコンセプトデザインとそれに合わせたイメージコラージュ作成を趣味にしています。

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例:架空のカップル向けに作った、「海」コンセプトの結婚式のイメージコラージュ。海にちなんだ演出・アイテムのアイデアなどをまとめています

実際に知人のコンセプト作成をさせてもらう中で、コンセプトの作り方が少しパターン化できてきたような気がするので「思考法」としてまとめてみました。
今はなかなか結婚式の話が進められない時節かと思いますが、逆にじっくりコンセプトを練り上げる時間がある今だからこそ、どこかのカップルのお役に立てればいいなと思い公開した次第です。

なぜコンセプトを決めるのか

「そもそも結婚式にコンセプトって必要?」と思われる方も多いかと思います。
結論としては絶対に必要なものではないです。実際私の周囲の結婚式でもコンセプトがあった(ように感じられた)のは5件に2件くらいで、まだまだ決めない人も多い印象です(アメリカでは「テーマウエディング」と呼ばれるコンセプトを決めた結婚式・パーティーが主流なようですが…)
必要なものではないものの、コンセプトを決めると以下のようなメリットがあるため個人的におすすめしています。

【コンセプトを決めるメリット】
1. 時間とお金の節約ができる
2. 印象に残りやすくなる
3. 夫婦間の相互理解ができる

まず「時間とお金の節約ができる」点について。
新郎新婦は結婚式に向け、様々なアイテムを選ぶ必要があります。招待状や引き出物、プチギフト、テーブルコーディネートなど… これらにはいくらでもバリエーションがあり、そのどれもが素敵です。無限に見ていられます。ですが、もしもアイテムを見る際にコンセプトがきっちり決まっていれば、「これは素敵だけどコンセプトに合わないね」という一つの軸ができ、決定にかかる時間が短縮できます。
また、コンセプトに合わせて式場自体を選ぶことでお金の節約ができると思っています。例えばコンセプトを「自然」にした場合、特別な装飾をしなくても自然を感じられるような式場(ガーデンがあるとか外の庭園が見えるとか)を選べば装飾を頑張らなくてもイメージに近づけることができてお得です。逆にコンセプトが決まっておらず、無機質でモダンなホテルを選んでから後になって「自然の多いイメージにしたい」と思った場合。もちろん植物で飾ったりしてイメージに近づけることはできますが、元々自然が多い会場をそのまま使う場合よりもコストがかかってしまうのではないかと思います。

次に「印象に残りやすくなる」というメリットに関して。
個人的な意見として、自分の結婚式は列席者の印象にできるだけ残ってほしいと思っています。せっかく莫大なお金をかけるので…
全然別物であることを承知の上で無印良品を例に取りますが、無印ではそれぞれの商品がシンプルになっているからこそブランド全体に対してシンプルな印象を持てているのではないかと思います。もしも商品がそれぞれバラバラのコンセプトでできていたら(あるものは「カラフル」、あるものは「ゴージャス」など)、「シンプル」「暮らしに馴染む」というイメージで印象に残してもらうのはなかなか難しいのではないでしょうか。
それと同じで、列席者の手元に残るペーパーアイテムや演出・コーディネートなどに統一されたコンセプトがあれば全体としての印象が解釈割れすることなく確定し、強く残るのではないかと考えています。

最後の「夫婦間の相互理解ができる」に関して、実は結構重要なのではないかと思っているメリット。
私がコンセプトを決めた時の失敗談ですが、「私は星モチーフが好きだから星をコンセプトにした結婚式がしたい!」と夫にプレゼンしたところ、「俺は星に思い入れがないし二人の思い出にもあんまり関係ないじゃん」と却下を食らったことがありました。言い方よ…と思いましたが、それがあったことで、「結婚式したい!ってタイプでもないから何でもいいって言うと思ってたけどそうではないんだ」「思いや思い出を反映させたいと思ってくれてるんだ」と、相手についての理解が深まったと思っています。
また、コンセプトを決める際にはこれからの結婚生活に向けた想い・願いを伺ってそれを織り込むことも多いです(詳しくは「どう決めるのか」の章で後述します)。「これからどんな夫婦になりたい?」というような話は時に発散しやすく集約しにくいものだと思うのですが、コンセプトを決めるという一旦の終着点があると「ずばりこういう夫婦(家庭)」と集約させやすくなり、それが式を挙げた後のスローガンとして使えることもあります。

上記3点踏まえ、コンセプト決定には金銭・時間・心情的な面でのメリットが多いのでぜひ!と推している次第です。

いつコンセプトを決めるのか

メリットを挙げる中でも触れましたが、式場を決める前が一番おすすめです。式場もアイテム同様無数にあり、全部を見て回ることは到底できません(データ的には、新郎新婦が見学する式場は平均3件程度だそうです)。納得いくまで見学することももちろん可能ですが、良い式場はガンガン予約が入っていくため、十数件見た後にやっぱり1件目がよかったね!と戻っても希望に近い日程が既に埋まってしまっているということもあります。なのである程度絞り込んでから見学に行く必要があり、その絞り込みを補助する一因としてコンセプトが使えるのではないかと思っています。

もちろん、もう式場決めちゃったよ〜!という場合でもコンセプト決めは有効です。ギリギリでも発注したアイテムが無料で変更できる期間くらいまでは考える余地があると思います。ただ、この段階だと式場やドレス(良いのからどんどん埋まっていってしまうので式場決定直後に決め始めることが多いです)は既に決まっているかと思うので、それらとあまりに合わなそうなコンセプトは除外した方が良いかもしれません(無理矢理寄せようとすると諭吉の力を使わないといけなくなることも…)
コンセプトを決めずに式場を決めた場合も、「何も考えずに決めちゃった」なんてことはなく、お二人の好みや重視するポイントがあってこその決定だと思います。式場が先に決まっている場合は「どういうところが気に入ったんだっけ?」「どんな演出が印象に残った?」など話し合ってみるとコンセプトも生まれやすくなるのではないかなと思います。

どうやってコンセプトを決めるのか

ようやく本題のコンセプトの決め方です。
私がお手伝いする場合は新郎新婦へのヒアリングから入ることが多いです。
お名前や家族構成、出身地などの基本的なデータの他、よく訊く項目はこちら。

・趣味
・出会いのきっかけ
・お互いのどんなところが好きか
・周囲の人からはどんな風に見られているか
・普段はどのように2人で過ごすか
・印象的だった思い出
・家族の思い出や印象
・こういう結婚式は避けたいというもの(あれば)

全部が全部コンセプトに使えるわけではないのですが、スピーチやプロフィール紹介に活用できるところもあるのでがっつり訊きます。
ヒアリングの後、大きく2つのパターンに分けてコンセプトを探していきます。

共通の趣味や属性があるご夫婦(例:バスケサークルで出会った)

共通点(バスケ)をコンセプトにします。
というわけにはいかず、まずはモチーフとしてバスケを使うことには前向きかどうかヒアリングします。というのも例のようにコミュニティが同じだと、バスケモチーフの結婚式はもう他でやられてるよ…ということもありうるからです。また身近なところとコンセプトが被らなくても、あるいはコミュニティが絡まない共通の趣味だとしても、モチーフとして取り入れると理想の雰囲気を壊してしまいそう/モチーフ自体がご本人たちの好みでないような場合は取り入れません。

ヒアリングの結果、コンセプトとして共通点(バスケ)を取り入れたいよ!となった場合。その場合もバスケだけをコンセプトにすることはなく、コンセプトの深掘りを行います。例えばバスケのどこが好きなのかを聞いて、「みんなとパスがつながることが嬉しい、楽しい」のであれば「ゲストと新郎新婦がバスケットボールをパスし合うような、コミュニケーションに溢れた参加型結婚式」というコンセプトにしたり。「シュートを決める瞬間が気持ちいい」という場合は「新郎新婦がスター選手のように輝く晴れ舞台」として演出内容を目立ち度の高いものに寄せたりとか。表面的な記号・モチーフだけでなく、そこに対してどのような想い・思い出を持っているのかも伺ってなるべく取り入れるようにしています。

逆に共通点(バスケ)を取り入れたくないご夫婦の場合は、共通点がない夫婦と同様の方式で考えていきます。

共通点がないご夫婦(例:新郎の趣味は料理、新婦の趣味はゴルフ、共通コミュニティなし)

このパターンの場合、ヒアリングした項目をより掘り下げていきます。
例えば「出会いのきっかけ」「お互いの好きなところ」とかを掘り下げて、
「第一印象はどんな感じだった?」→「明るい人だなと思った」→「今もその点は好き?」→「好き」→「明るさがお二人の今までを象徴するキーワードになっていると思うので、そこから連想して『光』をコンセプトにするのはどうでしょう」
みたいな感じで発展させたり(お二人それぞれのことなので、ここまでスルッと行くことはなかなかないのですがあくまで例です)。

あとはお二人の今までからではなく未来のことに目を向け、「どんな家庭にしていきたいか」「式を通じて何を伝えたいか・どんな風に感じてほしいか」から作ることもあります。
自分たちがこのパターンで(共通点が会社の元同僚というくらいで趣味も生い立ちもバラッバラ、お互いの思い出も印象に残ってる部分がだいぶ違う)、来てくれた人にどうなってほしいかを考えた時に「楽しんでほしい、ワクワクしてほしい」と思っていたところだけが一致しました。そこから発展させ、「楽しい、ワクワク→そんな気分になるのはいつ?どこ?→遊園地?」ということでアミューズメントパークをモチーフに置き、実際のアミューズメントパークでよく見るような演出(花火とか)を取り入れたりアトラクションに見立てたペーパーアイテムを作ったりしました。

コンセプトは必ずモチーフに帰結させる必要はなく、上記の2つの例で言うと「明るさ」「楽しむ」のままでも良いのですが、視覚情報でバシッと決められるものがあると印象に残りやすいので個人的には何らかの視覚的モチーフまで持っていくのが好きです。企業のロゴとかも、「サービス利用者が幸せになれるということを表現するためにスマイルを取り入れた」とかありますよね。

どうやってコンセプトを表すのか

二人の間でコンセプトを決めたら、あとはゲストに伝える方法を考えます。
スタイリングやテーブルコーディネート、アイテムなどへの落とし込み方についてはぜひイメージコラージュを作らせていただければと思うのですが、それ以外に効果的で間違いなく伝わる方法は「明記/明言すること」です。「こうこうこういうコンセプトで挙式・披露宴をしています」と宣言してしまうのです。
残念ながら、どれだけ頑張ってコンセプトに沿った飾り付けをしても、「飾り付け全然覚えてないわー」というゲストもいらっしゃいます(多分うちの夫はそのタイプです…)。それは鈍いとかではなく装飾より新郎新婦に注目してくれていたり旧友との再会を楽しんでいたりするだけなのですが、せっかく決めたコンセプトが伝わりきらないのはなんとなく寂しいですよね。なので言葉による補足はそういったゲストに対しても、また「なんとなくXXっぽい雰囲気…?」と察してくれたゲストに対しても、コンセプトを認識させるのに非常に強力です。

おすすめのタイミングとしては2つあります。
1つは席次表(プロフィールブック)の挨拶文。ゲストはほぼ必ず読んでくれますし、エントランスにウェルカムグッズなどを置いている場合は「海がテーマだから貝殻置いてあるんだな」みたいに結びつけられるため印象に残りやすいです。
もう1つのタイミングは披露宴結びの挨拶の時。「〜をテーマに準備して参りましたパーティ、楽しんでいただけたでしょうか」「二人でたくさん話し合い、〜をテーマに決めて頑張って準備してきました」みたいな感じで口頭でサラッと触れる感じです。ゲストもきちんと耳を傾けてくれていますし、ゲストの頭の中でも式や披露宴を総括して「ああ、コンセプトに合った要素たくさんあったな」と思ってもらいやすいタイミングなので良いと思います。
どちらのタイミングで触れても良いのですが、個人的には両方がおすすめです。始まりと終わりに1回ずつコンセプトについて触れることで、最初は期待感が増しますし、最後は改めて印象に残せる気がします。

ちなみにコンセプトをどう言葉にするかですが、大体子供の名前決めました投稿みたいな感じのノリでいけると思います。「明るい子になってほしいという願いを込めて明です」みたいに、こういう思いを込めてこのコンセプトです!という感じで書いたり言ったりします。少ないですが以下に例文を…

・これからの人生が大きく広がりのあるものになるよう願い 「海」をテーマに心を込めて準備しました
・私たちにとって 皆様との出会いや思い出はかけがえのない大切なものです 2人のこの気持ちを込めて 本日は「宝箱」をテーマにしたパーティーを準備しております
・私たちの一番の思い出は「ライブ」 まるでライブに来たかのような一体感や感動を皆様にも感じていただけるようなおもてなしをご用意しております

総括

結婚式のコンセプト思考について、まとめると以下のような感じです。

・なぜ決めるのか:コスパと夫婦間の理解のため
・いつ決めるのか:式場決定前がベストだけど後でも可
・どうやって決めるのか:共通点の有無や思い出、未来への願いなどお二人の情報や考えから深掘り
・どうやって伝えるのか:演出やアイテムの他、言葉でも伝えると効果あり

私もまだそんなにヒアリング事例がないのでこの方法で全部対応できるかどうかは分かりませんが、「結婚式の話進めたりイメージ膨らませたりしたいけど、自粛でどこにも行けないし何もできることがない!」という方のヒントになればいいなと思います。
(リアル知り合いでこの辺ご興味ある方はぜひご連絡ください…!)

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