chisaton

新米編集者。趣味で色々書けたら良いなぁと思っています。気軽に見てやってくださいね。いつ…

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新米編集者。趣味で色々書けたら良いなぁと思っています。気軽に見てやってくださいね。いつか書籍化出来たら良いねぇ。

最近の記事

ご挨拶と最近のこと

遅くなりましたが、皆様、あけましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 さて、今日は小説を上げず、最近、あった話をしようと思う。 いや、年末ぐらいから上司から引き渡された先生のところに原稿やゲラを持って行ったり取りに行ったりしている。 その先生も御年八十歳。 私と話すことを楽しみにしていると言ってくださる優しい先生だ。 会って間もない頃は、若さ故に不審がっていたが、最近は仕事の話は三十分ぐらいで、あとは他愛ない世間話で二時間ほど費やしてしまう。

    • 街明かりー純愛 ①ー

       銀座の街はいつもキラキラしている。歩行者天国で道路の真ん中を歩いても、誰にも怒られることはない。  だけど、私は歩くことが出来ない。こんなキラキラした街は私には似合っていないのかもしれない。  そう思いながら、レジカウンターからぼんやりと外を見つめていた。 「おはよう」 と声を掛けてきたのは、店長の笠森昭夫だった。私は、びくりと身体を震わせ、「お、おはようございます」と大きな声で挨拶をした。 「今日も明るくて良いな。柿本さんは」 と笑う。笑うと目がとろりとして、いかにもとい

      • 街明かり-もう一度 ⑧最終話-

        「これからよろしくね」と夏生は笑顔で応える。夢が叶う瞬間を見るとホッとする。自分がそうだったように、いつまでもバイトのまま、夢も叶わず、ここを去ることがどんなに辛いことか、夏生には痛いほど分かっていた。  出版記念パーティーも終わり、売れ行きを聞くと、好調で重版も期待できると言うことだった。そのうち、サイン会を書店で開きたいとも編集長は言っていた。そしてコンスタントに出していかないと作家として忘れ去られてしまうという理由は表向きで、売れた作家を離したくないという出版社の思惑通

        • 街明かり-もう一度 ⑦-

           二時間後、ようやく光が起きてきた。 「ごめん、眠ってしまった」 「ううん、お腹すいたでしょ?」 「うん、もらおうかな」 と言ってビールと食事を出した。 「さっき、話したいことって何だったんだ?」 「ああ、それが作家デビューしてみないかって言われてて」 と言うとさっとこちらに顔を合わせた。 「本当か!」 「ええ、どうしたのよ。そんなに」 「す、すごいじゃないか! どうしてもっと早く言わないんだよ」 「だって、貴方、忙しそうだったじゃない」 「良かったじゃないか! それでどうな

        ご挨拶と最近のこと

          街明かり-もう一度 ⑥-

           それから一週間後、加藤君から連絡があり、会社に来てほしいと言われた夏生は、断りたかったが、渋々承諾した。  次の日、久しぶりの元勤め先は、建て替え工事がされてきれいになっている社屋をくまなく見ながら受付を通る。受付は前の人とは変わり、美人な受付嬢が座っていた。 「あの、編集部の加藤さんとお約束させて頂いておりまして」 「少々お待ちくださいませ」 ときれいな声で対応してくれた。 「はい、高崎夏生様ですね。今お迎えに上がりますので、少々お待ちくださいませ」 ―お迎えなんて大げさ

          街明かり-もう一度 ⑥-

          街明かりーもう一度⑤ー

           加藤君は夏生の腕を引いたときだった。そのまま夏生の唇を奪い去っていった。  一瞬の出来事だったのに、夏生は長い時間に感じた。心臓の鼓動が止まらない。しばらく下を向いていると、ぽつりと加藤君が囁く。 「今日、もう少し一緒にいないか・・・・・・帰したくないんだ」  目覚めると、もう十二時を回ろうとしていた。慌てて起き上がり、現実を見る。その瞬間血の気が引いて、夏生は取り乱しそうになったが、身体の方が先に動いていた。急いで下着を着て、上着を羽織る。気配に気付いたのか、加藤君が起き

          街明かりーもう一度⑤ー

          編集者って

          「編集の仕事が好きだ」  そう思ってこの世界に身を置いているのだが、時々、自分の信念が揺らぎそうになる。  新米なので、自分が抱えている仕事もあるが、先輩の手伝いや他部署の仕事を手伝うことも多い。  私は先生が書く文章を活かしつつ、読者の目線、つまり一番目の読者として原稿に目を通したり、校正をしたりする。  先生の一番のファンであり、一つ一つの文章に気持ちを入れて読むことが、出来の悪い私の最大の武器としてやっているつもりだ。  中には、「いや、このまま出したらあかんよ」って文

          編集者って

          この感情をどうにかして(泣)

          複雑な感情が月曜日、朝から湧き上がる。 出来れば、この布団からは出たくない。着替えて、似合っているかどうか分からないメイクをして、髪を撫で、玄関に向かうドアを開けたくない。 日がな一日、頭の中にある小説のアイデアを書き連ねて、noteに投稿していたい。 時折、自分が作家だったらと考える事がある。 そんな事を考える時は、大抵、気分が沈んでいる。誰かに心を痛めつけられた訳でもなく、ただ笑顔になれそうにないだけなのだ。 「つまらない」 いや、おっしゃる通り。間違いありません。

          この感情をどうにかして(泣)

          街明かり-もう一度- ④

           数日後、早速加藤君から連絡が入る。化粧はとりあえず毎日しているが、口紅をそっと引いた。家の近くの喫茶店まできてくれると言うことなので、喫茶店に向かうと、もうついていた。 「ごめん、お待たせしました」 「ううん、さっき着たところだよ」 と言ってメニューを差し出した。 「カフェラテで良かったよね。あと、ケーキもどうぞ」 「えっ、駄目よ。そんなもったいない」 「良いよ。別に経費なんだから」 「でも・・・・・・」 「俺も丁度ケーキが食べたかったんだ」 と言ってケーキの写真が載ってい

          街明かり-もう一度- ④

          街明かり-もう一度- ③

           求人を出すのは久しぶりだと言う奥さんにどこに出すかを聞いたら、光が住んでいた児童福祉施設に出す予定と話した。いつもながら休憩時間になると、従業員にお茶を出すようにしている。最近では、みんなも慣れてきたのか、夏生に優しく接してくれるようになった。 「皆さん、お茶が入りました」 「ありがとうございます」 と言ってみんなで座り囲む、そのテーブルは本当の家族のように和やかだった。  それから十年ほど経った。社長や奥さんは引退をして、従業員も人数こそ変動はないが、それなりに印刷会社と

          街明かり-もう一度- ③

          ちょっと偏見じゃない?

          私がnoteに書いている小説のほとんどは、恋愛小説ですが、恋愛小説を読むのも好きなんです。 と言うと、「えっ、そうなんですか?」と驚かれます。 皆さん、恋愛小説って読まないんですかねぇ? だからと言って、大層な恋愛をしてきたわけではなく、そんな恋愛に憧れがないと言えば嘘になりますが、特に願望はありません。 とにかく読んでいて余韻に浸りたいし、現実逃避したいんですよ。 ミステリーや青春、時代物も読みますよ。 読みますが、恋愛小説を読んだって良いじゃないですか! 私が読むの

          ちょっと偏見じゃない?

          街明かり-もう一度- ②

           もう諦めよう。  印刷所からの帰り道、私はぼんやりとそう思った。自分はそれほど編集に向いていない。さして自分の実力がないことに執着する理由はあるのだろうか。  今まで通り、この印刷所にたまに顔を見せてこんな風に話せたら別に良いじゃないか。と自分に言い聞かせた。  休みの日には神保町に繰り出して自分が心行くまで本に触れる。欲しい本はたくさんあるが、今の部屋はワンルームで、ほんの置き場所があまりない。だから一日買える本を3冊と決めている。一人暮らしをし始めたのはつい最近のことだ

          街明かり-もう一度- ②

          全然書けてないやん!

          仕事が忙しくなかなか小説の続きが捗りません。 と言う言い訳をしているようではまだまだなのでしょうね。 ちゃんと書いていきたいと思います。 「街明かり」の構想はあるんです。でもなかなかそれを表現するのが難しくて。 私の母が好きな歌手の方の歌詞を私なりに解釈して、物語を作ってみようかと思っている訳ですが、解釈不足を言われたら辛いなぁと言う事で、歌手の方の名前などは控えさせて頂こうかなぁと思っています。 分かる人には分かるかも…。 でもそれで「違うよ!」ってコアなファンの方に感想を

          全然書けてないやん!

          街明かり-もう一度- ①

           カーテンを閉めようと、窓に近づく。  街の街頭や、住宅の明かりがふわりの光り始めた。  ゆっくりと時計の針は進んで、あっという間に夜が来てしまう。夏生は夜が来ることが怖かった。暗闇に包まれるのもだが、もっとも主人と二人っきりになるのが不安でた堪らなかった。いつからこうなってしまったのか、解らないまま台所に立つ。主人との出会いは、大学を卒業して出版社に勤めていた頃だった。私は製本会社に製本依頼を掛ける仕事をしていた。  ようやく念願の出版社に勤めることができたことを心から喜ん

          街明かり-もう一度- ①

          午前3時の熱 最終話 情熱

           冬の風が、私を包む。いつものように買い物を済ませて部屋に戻る。  私は横山と会ったあれからの事も、充に別れを切り出すこれからの事を色々考えた。  充に見つからないように自分の荷物はすべて実家に送った。ポケットで携帯が鳴る。充かと思ったが、ディスプレイには母の名前だった。 「もしもし」 「嘉菜、荷物が届いたけど、どうかしたの?」 「ちょっとね、預かっててくれない?」 「うん、それは良いんだけど何かあったの?」 「全然大丈夫よ。お母さんも元気?」 「元気よ。お父さんもね」 「良

          午前3時の熱 最終話 情熱

          午前3時の熱 第四話 決断

           そんな事があってから、私たちは由幸からいろいろな嫌がらせを受けたが、何とかやり過ごすことができた。  夏が来た。充が夏フェスに出演すると聞き、義男さんがお店で出演祝いを開いてくれた。 「義男さん、本当にすいません。ありがとうございます」 「良いんだよ、俺、本当に嬉しいよ」 「はい! 俺もくそ嬉しいッス!」 と言って抱き締めあった。  その他にも、メンバーやスタッフや商店街の皆が集まっていた。  その声は外まで漏れ聞こえている。私は仕事で遅れて参加した。 「すいません、遅くな

          午前3時の熱 第四話 決断