ここからは遠い。
劇場に入ってからの毎日は体感「1秒」で過ぎ去った。とても胎教に良い現場だったと、改めて思う。現代レトロスペクティヴ/トリコ・A『ここからは遠い国』(作:岩崎正裕)。もう二度と、戻れない、ここからは遠い国の稽古場。プロデュース公演ならではの難しさと、それを経たからこその感動を経験させてもらった。
ただ、たった今、長々とこの作品創作について書いた記事が消えてしまい、ガッカリしている。めちゃめちゃ頑張って書いたのに。悔しいけど、いなくなった恋人のことは早く忘れたほうがいい(なんの話や)
というわけで今書いたことをなぞるのは気が狂いそうなので、全然別のことを書いてみる。
なお文章中に出てくる写真はすべて「ここからは遠い国」の舞台写真です。撮影:松本成弘であります。今回もいい仕事をしてくれました。まっちゃんは、稽古の通しを見に来てくれて、仕込みで美術を見てくれて、場当たりを見てくれて、そしてゲネを撮影してくれました。観察に次ぐ観察の結果がこれ。
そう、私にとって演劇を作ることは「観察」になりつつある。今回の現場でそう思った。何か新しいものを作り出してやろうとか、刺激を加えて反応を試したいという気持ちが少なくなり、目の前にあるものをじっくり観察して、それを書き留めたり、生まれた疑問を自分の体を通して捉え直すこと。仲間とそれについて熟考すること。それを創作のように感じ始めている。
すでにあるものを、なるべくありのまま書き留めること。自分がどうとか関係なくて、いやむしろ自分のことなんて脇に置いて、本当にそこにあるものを目を凝らして見ること。決してそれは忖度ではない。どちらかというと裸の王様のようなこと。
そうしていくと、自分の定規では測りきれないようなことも見えてくる。
本当に厄介なのは自分の定規なのだ。それをオリジナリティと勘違いしてしまうと迷路に迷い込む。迷い込まないために、真実を捉えることのできるように、心身を整えておくことの大切さを知った。あと、帰る場所の安全地帯度。帰る場所が安全地帯であればあるほど、高く飛べる。私には今、安全地帯がある。だからこそ、チャレンジができる。
早く次の台本が描きたい。こんな気持ちになった現場も初めてだ。いつもだいたい、しばらく休ませてという感じになるんだけど、今回は全然思わない。早く台本が描きたい。観察者としてデビューしつつある自分を試したい。私をこんな気持ちにさせてくれたアイホールの皆様、キャスト・スタッフの皆様、本当にありがとうございます。
▼稽古
2018年 「ここからは遠い国」を演出をやる前提では初めて読む。
2019年3月 本読みの会を催し、たくさんの方に戯曲を読んでもらう。
2019年 夏、キャスト決定。
2019年 10月本読み稽古開始。1ヶ月間ただひたすら読み話す。
2019年 11月より立ち稽古。舞台美術が徐々に決まり始める。
▼キャスト
長南義正/菅一馬
長南仁/や乃えいじ(PM/飛ぶ教室)
長南智子/村木よし子(劇団☆新感線)
長南信子/早織
長南礼子/佐々木ヤス子(サファリ・P)
長南真理/中筋捺喜(うさぎの喘ギ)
兼光/神藤恭平(DanieLonely)
小松/高杉征司(サファリ・P)
園部カオリ/岡田菜見(fullsize)
別所ユキ/しんえな
日向/小島翔太(プロトテアトル)
▼スタッフ
演出:山口茜 舞台監督:葛西健一 照明:池辺茜 音響:森永恭代 舞台美術:竹内良亮 衣装:南野詩恵 票券:宮田直人(ジャグリング・ユニット・フラトレス) 宣伝イラスト:芝田勝彦 宣伝美術:坂本香名子 販売用パンフレット編集:大堀久美子 舞台写真撮影:松本成弘 舞台動画撮影:中村耕治 企画・制作:合同会社stamp 主催:公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団、伊丹市 企画製作:伊丹市立演劇ホール 助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会
2019年12月、アイホールにて本番。
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