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どうぞ、みんなを喜ばせてください。

記事のタイトルは、今やっている舞台「PLEASE PLEASE EVERYONE」の和訳です。この劇をやろう、と決めた日のことを今でも覚えています。私は別の劇を作りながら、子供の通う保育所が民間に移管されるという京都市の決定をめぐって、他の保護者らとともに、説明会に参加したり、議員周りをしたり、会議をしたり、市役所に行ったり、記者会見をしたり、テレビの取材を受けたりしていました。できる限りの力を注いで関わっていたのですが、そんな中で保育所は、移管ではなくまさかの閉所が決まったのです。

その時に決意しました。これは劇にしなくてはならない。そう思いました。それはまず何より、わたしのために、です。やらないと次に行けない。そう思ったんです。だって、良かれと思って一生懸命活動してきたことが「あだになって」へ、閉所!?意味不明でした。この意味を解明したい。解明できない。だったら劇にしなくては。相当な使命感でした。

でももう大人になってから25年ぐらい劇作りに関わってきているので、これは大変なことをやると言ってしまったぞ、とも思っていました。タイトルにあるように、わたしは「みんなを喜ばせたい」という性格です。悪く言えば八方美人。よく言えば争いが苦手なんですよね。いやまじで。

10歳まで、曽祖母と一緒に暮らしておりまして、曽祖母がたいそう穏やかな明治生まれの薬局のおかみさんで、まあ、いわゆる京都人だったんですね。わたしは彼女にこの穏やかなというかはっきり物を言わない性格を育んでもらったという確信があります。なので、劇を作る時も、悪者を糾弾できないんです。基本的には悪いと世間で思われている人の悲しみを描きたいという動機で作ることが多くて、だから政治思想を声高に叫んだりはしないですし、もっというと愛とか友情とか美しいものを描くこともできません。

今回の保育所でも、京都市には本当に色々と思うことがありましたし、市の職員や所長さんにも、結構強く当たりました。でも、それは当事者として必要なことだと思ったからであって、最終的には刃を刃入れに戻してすいませんと謝ってしまってます。

性質上、誰かを強く糾弾するものは性質上作れない。でも愛とか友情とかを描くのだけは死んでも嫌だ(不思議)。ところがそうなってしまうとこれは劇の題材として面白くない気がする。いやしかしどうしてもやらねばならぬ・・・とわたしの中のいろんなわたしがけんけんがくがく議論を交わすことになりました。

ただ、悲しいのですが、私たちは助成金をもらって演劇を作っているという事情がありまして、最低でも1年ぐらい前には何をやるか決めて申請書を書かねばならなりません。あと、何をやるかとはまた別の、プロデューサーという目線がわたしの中にはいつもありまして、それでいうと数年前から、今回の段階は「へそで、嗅ぐ」でやる完全具象を経て、抽象舞台への飛躍を図るつもりでおりましたので、

何もまだ決まっていないうちから「保育所のことをやる」「トリコとサファリを掛け合わせる」という手がかりだけで申請書を書いたんです。こわー。

なのに気がつけばもう初日が明けて、3日の朝です。はい。劇は完成し、お客さんにもうお見せしてしまったということになります。何この時間の早さ。嘘やろ?え、夢ちゃう?開幕!・・・なんてことがあったらいいけど実際は今からだわ。大変だよねーってまたベッドの中で思ってる段階じゃないの?

などなど色々疑ってかかってはいるのですが、少なくともわたしの目に映る現象を全て参照し、検討した結果、どうやらPLEASE PLEASE EVERYONEの幕は上がっております。いや〜〜まじで信じられない。

創作過程を具に語るような格好のいい記事にしたかったのですが、そこだけすっ飛ばして、決意から本番まではあっという間でしたよ、というだけの記事になってしまいました。創作過程を描く元気が、正直、ありません。すいません。でも、今回の作品、かなり気に入っています。ゲネプロの段階で、面白い、とわたしの中のわたしが評価してくれました。

もちろん、もっとああすればよかった、こうすればよかった、という反省点はたくさんありますが、次の作品でまた改善していくしかない。今はとにかく俳優さんやスタッフさんと、今あるものに対して走りながらできることだけをやっていくのです。

あー、一人でも多くの方にご覧いただきたい。将来的に、この時の作品がきっかけになったよね、とわたしも思うし周りにも言われる気がしてます。これをつまり、エポックメイキングというのですね。


トリコ・A×サファリ・P vol.1
『PLEASE PLEASE EVERYONE』

写真 2021-12-01 15 26 28

ウソでもいいから ひとつになりたい

12月1日(水)~ 9日(木)
@ THEATRE E9 KYOTO

チケット予約は下記のURLから

一般・30歳以下・E9会員
https://askyoto.or.jp/e9/ticket/20211201

一般・30歳以下・20歳以下・小学生以下
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02siu3jafpw11.html

舞台写真:松本成弘


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