【映画レビュー】鬼のようなハードルを突きつける『劇場版異世界かるてっとあなざーわーるど』の感想
最近、一見さんお断り映画も多いですが、すごいハードルの高さがあると思います。
『劇場版異世界かるてっとあなざーわーるど』の感想
『劇場版異世界かるてっとあなざーわーるど』を観てきました。
異世界系作品「オーバーロード」「この素晴らしい世界に祝福を!」「Re:ゼロから始める異世界生活」「幼女戦記」「盾の勇者の成り上がり」といった人気作5タイトルの登場人物たちがディフォルメキャラ化されて学園生活を送る姿を描いたテレビアニメ「異世界かるてっと」……の劇場版。
番外編作品を多く手がける芦名みのる監督が、まさにその番外編作品にて劇場版長編デビューです。
本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……
変な映画。
決して、面白くない映画では、なかったのですが、観る人のハードルが高いわ、ルックは本編より地味だわで、そもそもの企画自体に首を傾げ続けるような体験でした。
もっと詳しい感想を書いていきます。
一見さんお断りぶりが鬼レベル?
この『異世界かるてっと』。
作品自体が元々かなり特殊な作品。
元は、2019年に第1期・2020年に第2期が1クールごと放送されたTVアニメ。前述のように異世界系5作品をミックスしてなぜか学園生活を送らせるというパロディ的な立ち位置の作品。同じ異世界ものとはいえ、テンションも設定も全然違うキャラを学生にさせるというギミックがすでに無茶に感じていたのですが、今回の映画……びっくりするのはその設定を一切説明せず、さらに彼らを異世界へ送ってしまう点。
元のTVアニメの“学園生活させる云々”という、設定の説明をしなくて済むストーリーにはなっているのですが、キャラクター背景の説明も一切省いて展開していくので、誰がどんな性格で、どの作品のグループで、何ができるのか、といったことは説明なし。知らなければ元ネタを観てね、というかなり強気な作品でビックリしました。
そもそものTVアニメがマニアックすぎるわ、スピンオフ感が強いわで、敷居が高いと思っていたのですが、映画もそのままの敷居の高さで展開していくからビックリですよ。
元ネタの5作品のどれかさえ知っていれば「まぁ」楽しめなくはないかもしれないし、そもそもキャラクターが多いから説明しきれないことは分かるんですが、じゃあなんでそんな作品を映画化したんだよ、という気持ちになるのは否めませんでした。
SDキャラクターでは限界がある?
そして『異世界かるてっと』は等身の高いキャラクターを、等身の低いキャラクター……いわゆるSD(スーパーディフォルメ)キャラクターで描きなおした作品なのですが、そのスタイル自体が足を引っ張っているとも感じたり。
見た目は可愛いし、わちゃわちゃした感じが親近感はわくので、私はこのスタイルは好きなのですが、こと映画企画となると長編に耐えうるビジュアルではないと思ってしまうのが正直なところ。
アクションシーンが結構多いだけに、これが元のアニメシリーズのようなもっとリアルで派手なアクションになっていたらもっと盛り上がるんだろうなぁ……という想像が頭から抜けずに、なんでこれを映画化したんだろうという疑問が頭から消えませんでした。クライマックスだけ、サプライズで元アニメのルックになったら熱いなぁと思ったのですが、さすがにそんなことはなかったですね。
そんな疑問からも『異世界かるてっと』自体に映画化するポテンシャルがあったのかも、個人的にはまだ疑問に思います。
優良お祭り映画にはちゃんとなっている!
と、散々ビミョーなことを言いながらも、実は私はこの映画が嫌いではなかったり。
と、言うのもTVアニメシリーズをちゃんと終えている作品はないながら、いずれの作品も劇場版が上映されているので、キャラクターに対する「誰?」という疑問がなかったのは大きいです。唯一映画化していない『盾の勇者の成り上がり』も、運良く私はコミカライズを読んでいたこともあって、本作のための予習は一切しなかったのですが、運良く初めましてのキャラクターがいなかったのがラッキーでした。
おかげでやはり最後に展開されるあの“異世界ゴレンジャーボール”展開は、流れこそ強引ながらやっぱりアガる。クロスオーバー作品だからこその邂逅感はやっぱ嬉しいですよね。お祭り企画ならぬ、お祭り映画感がちゃんと出てますよ。
加えて、オリジナルキャラクターもそれぞれが個性的で、そのドラマがしっかり良い話だからまた好感度が上がる。
ゴーレム含めて、それぞれが元ネタ作品がバラバラなところも気が利いてるし、スピンオフ作品で一見さんお断り映画だし……と内輪ネタだけで完結しない、この映画の中での起承転結をしっかり作ってくれている真摯なところも素晴らしいです。
こうして良い部分があるからこそ、余計に「もっとリッチなビジュアルで観たかったよね」と思ってしまうわけですよ。
まとめ
というわけで良かった印象があるせいで、余計に「なんで」という気持ちが強まるような、映画が決して悪くはないんだろうけど、企画自体が変な映画でした。
監督・脚本を務める芦名みのる氏のオリジナル作品を観たくなりますね。
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