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【映画レビュー】ゾロリとミュージカルの相性はいかに!?『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』の感想

12月の公開作ですが、出遅れて観てきました。

『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』のざっくりとした感想

『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』を年明けに観てきました。すでに一日一回上映になってたので、慌てましたよ。

映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう
制作年:2021年 / 制作国:日本
70分 / BN Pictures、亜細亜堂
監督:緒方隆秀

https://eiga.com/movie/97054/

放送局を移りながらも放送が続く、今や長寿アニメーションといってもいい「かいけつゾロリ」シリーズの新作アニメーション映画が登場。山寺さんのゾロリでは今回がなんと6作目です。

歌手を夢見るヒポポと出会い、ゾロリが彼女を売り出すために奔走するというミュージカル要素もある作品に。監督はこれまでのTVアニメシリーズにも携わってきた緒方隆秀氏が長編作品で初めての登板となります。

私自身はあまり原作本にも、TVアニメシリーズにも馴染みのなかったのですが、そんな私が観に行った感想をざっくり一言で言うと……

優良作。

「あぁ、歌いいなぁ」
という瞬間はあれど、突き抜けるような良さを感じるシーンや、好きになるようなシーンがなかったのが惜しい一本でした。


以下、話のオチなど、ネタバレに思いっきり触れながら、ざっくりではなく踏み込んだ感想を書いていきます。


『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』のもっとふみ込んだ感想


■しっかりミュージカル作品!生田絵梨花さんGJ

「かいけつゾロリでミュージカル作品?大丈夫なの?」

と見る前こそそんなに期待していなかったのですが、そこはテーマに持ってきているだけあってしっかり担保されている映画でした。

もともとゾロリ役の山ちゃんこと山寺宏一さんは歌い慣れしている方なので、しっかりいいこえが聞けたワケですが、今回のゲストキャラであるカバのシンガーソングライター・ヒポポ役の生田絵梨花さんの歌声がしっかり気持ちいい

乃木坂46の曲もあまり聞かないうえに、そもそもグループソングなので、生田さんがどんな歌を歌うのか、ってことを知らなかったのですが、さすが元アイドル。魅せる歌声だと感心しました。

ミュージカルと言っても、歌を担うのはこのヒポポというキャラクターがほとんどメインなので、ここのキャスティングを失敗したら、作品全体が大失敗になりかねないのですが、演技面でも歌声でも、しっかりヒポポというキャラクターに好感が持てるお仕事をしてくれてました

また音楽に関する言及として、地味に嬉しかったのが、
ゾロリが雑なダジャレでラップするシーン。

(C)2022 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会

ダジャレを連発するだけのゾロリのラップに対して、
「ゾロリ先生、ラップはオヤジギャグじゃないだよ」
と言う真っ当でありつつも、実はしっかりツッコミが入らないこともある、HIPHOPを説くツッコミが入っている事にも感心してしまいました。

ちゃんと間違ってる扱いしてくれるだけでも私の中で、この映画は音楽に真摯に向き合ってくれているな、と勝手に納得しました。

ちなみに:
今回、『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』の音楽担当者は歴代のゾロリシリーズでもおなじみの田中公平氏。これまで数多のアニメーション作品を手がけてきた田中さんは、実は劇場版ONEPIECEシリーズの音楽も担当してきた方。ただ大ヒットとなった『ONE PIECE FILM RED』に限っては、中田ヤスタカさんが担当しているので、『STAMPEDE』までなので注意。

そんなワケでしっかりミュージカル映画感を感じながら楽しめましたよ。

生田絵梨花さんのキャスティングも相まって、しっかり歌良かったよ。


■なんなんだそのオチは?違和感が勝るハッピーエンド

一方で「なんなんだそれ」って思ったのはストーリー面

これに関しては、“そういうオチをする作品”と言えるとこなんだろうけど、

この映画のオチは、ヒポポがすごい歌声を聴かせてくれるんだけど、妖怪やイシシとノシシが調子に乗っちゃって、すごい放屁で会場をめちゃくちゃにしちゃう……という「なんだそれ」ってぶちこわしオチなんですね。

で、ヒポポだけがプロデューサーにしっかり引き抜かれるというオチになってるからまだ良いけど、結局は妖怪たちやイシシやノシシのやってることってなかなかの重度のやらかしだからね、とドン引きしました。

(C)2022 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会

そういうギャグをする作品だから、で流してもいいんだけど、本作に限ってはそれまでしっかりドラマを積み上げてきた分が一気にどうでもよくなるようなオチになってるので、オーディションどころかこの映画自体を台無しにしているようで、合いませんでした。

しかも、この事件であれだけ密に接してきたはずのヒポポとゾロリが、挨拶もなく別れているのにも違和感。

(C)2022 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会

なんで挨拶なしに出てきちゃったのか、とかその理由をシーンとして細かく描かなくても、納得できるような事情の片鱗を挟んでくれても良かったんですけどね。

しかも最後のヒポポの姿も、全然憧れていたような姿とも雰囲気が変わっちゃって、あんまりハッピーエンドに見えなかったのもちょっと引っかかります。話の締め方、下手じゃない?

積み上げてきたドラマを台無しにする強引なオチにガッカリ


■ゾロリ不在だからこその最後の着地

ただ一点、ゾロリとヒポポが対面せずに別れたことで生まれたシーンで良いなぁと思うシーンがあります。

(C)2022 原ゆたか/ポプラ社,映画かいけつゾロリ製作委員会

それが、ヒポポが一人だけ引き抜かれることに負い目を感じているところへ、妖怪学校の先生が、ゾロリは成功を望んでくれていると、後押ししてくれるシーン。

かいけつゾロリシリーズって、ゾロリが色々奔走したのに最後は結局周りの人物だけが幸せになって、ゾロリたちだけが痛い目をみたり、残念な結果に終わってしまうことが多い、かわいそうな流れが定着しています。

ですが……今回の先生のシーンでは、しっかりその幸せを得た人たちが、ゾロリの代わりにその幸福を波及させていこうとしていたり、それをゾロリに返していこうという気持ちを持っていることが感じられるラストとなっていて

「あっ、ゾロリが今までしてきたことって無駄じゃなかったよね」

と感じられる。ほっこりしたシーンになっていました。

今回は35周年の節目の作品ということで、これまでの登場キャラクターも何人かカメオ出演する演出もあったからこそなおさら、ゾロリのこれまでの歩みを肯定しているようで、粋な着地のさせ方だと思いました。

これをやるなら、もう一個別に、ゾロリの見せ場もオチで欲しいとも思っちゃってもいるんですけどね。

損な役回りのゾロリにそれでも「良かったね」と思える着地のさせ方は好き。


まとめ

●生田絵梨花さんの活躍もあり音楽は十分満足。
●話のオチでいろいろ台無しにしすぎていて残念。
●ただ、先生にゾロリを語らせるラストはグッとくる。

というわけで、
もっとこうなって欲しかった….
みたいな気持ちはたくさん溢れる映画ではあったのですが、
言うほどゾロリファンでもないので、掴みきれてないこの映画の良さもあったのかもしれないですね。

そんなにファンでもない人間の戯言と思って、ゾロリガチ勢の皆様やこの映画を作ってくれた皆様、大目に見て。ゴメンなさい!


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