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全然知らないけど絶対に愛のひと―藤井風“何なんw”“もうええわ”

ライター:koharu

 サクサク書くつもりだったのにもう1月が終わる。おかしい。今年もよろしくお願いします。

 SpotifyのRelease Raderを聴いていたら全然知らないアーティストが入っていた。やたらにいい。有名バンドの人がソロ作を出した系ですか?と思ってもう1曲聴いてみる。めちゃくちゃ食らう。

 さっと調べてみたらインタビューはおろか記事も見当たらなくて(リサーチ不足だったら教えて)、とりあえずHPを見てみたところなんと97年生まれ。22歳……。もう世界が怖い。わからない。ライブ映像には22歳らしいフレッシュさがあって安心してしまった。

 彼からは音楽的にも精神的にも成熟が早そうな印象を受けたけど、それでも今後もっといろいろなことを蓄えていくと思うから、隙がなさそうに思えてときどき見えるアンバランスな部分は今だけのものかもしれない。人の変化していく過程までもが音楽を介して聞こえてくる。何人分を聴いても、そのひとつひとつがすごく貴重な体験だよ。

 YouTubeに投稿しているカバー動画で話題になったらしいので私も聴きました。英語と低いキーがとってもいいね。載せている本数から見ても林檎が好きなんだろうね。“すべりだい”は大好きな曲。私の話です。

 1月24日リリースの『何なんw EP』、2月21日リリースの『もうええわ EP』にもカバー曲が入っています。Instagramにも動画が載っているのですが、こんなに簡単に聴けてしまって贅沢な気持ち。これは映画『ラ・ラ・ランド』の劇中歌“City Of Stars”のカバー、音の物憂い感じが似合う。それに反した歌詞も。

 前置きが長くなってしまった。藤井風、その人の話である。まだ彼の曲はシングル2つしかリリースされていないけど、第一印象しかない状態に近いまま話したくて。両方載せます。


もうええわ

 突然ですが好きな歌詞を発表します。「すれ違った人だって過去だって怖くない」です。どうしたらすれ違う、きっと知らない人と自分の過去を並べられるの? 

 この曲みたいな歌詞がこういうメロで歌われるとちょっとセクシーに聞こえる。でも遠い物語のように受け取るからそう思うのであって、現実はそうでなくて、というところを知っているから彼は歌うのだろう。2曲とも伝えたいことは似ていると思うから。次のEPが出る頃にこの曲の解説もするのだろうか。楽しみ。されなくても楽しい。

 何かに捕らわれてしまった経験を自覚している人が瀕死になりそう。本当は渦中の人に聞こえてほしいね。


何なんw

 彼は後の動画で話す。「この曲は誰しもの中に存在しているハイヤーセルフを探そうとする歌です」。その先のこと、この曲については彼の言葉を聞くほうがいい。

 話しているときにも色気がある。穏やかで満たされている人が持てる種類の、色気らしからぬ色気というか。人は年齢じゃないけど、22歳でこの佇まいになるにはどういう暮らしを?

(あとからこの動画が投稿されたばかりだったと気づいた)

 最近聴き始めたばかり、キャリアも全然知らないのにこう思った。カバー動画を見てもそう、物凄い愛を持っている人な気がする。滲み出ているという感じでもなく、背景というのもちょっと惜しくて、もっと自然にそこにある感じ。彼の体の何ミリか外側を薄い膜が覆っていて、それが“物凄い愛”由来のもので、彼が存在することで空気が変わるわけではない(それがいい)が、握手したときに初めてわかる。過不足なし。握手はメタファー。伝わる?

 そう気づいたときにちょっと羨ましくなっちゃった。でもよくよく考えたら、アーティストとして見ているからいいと思うのであって、彼のその“感じ”を私の生活でやったら……悲しい着地をしてしまったので書くのはよそう。こっそりどこかで聞いてください。


 彼がどんな人で、どんなふうに生きてきて、いま、どんなことを考えているのか知りたい。すごくすごく知りたい。レビューするアーティストに対してはいつも思っているし、知ることができずに聴き続けることが楽しさでもあるのです。

 大きな力に負けずいい形で売れてほしいなと祈っている。そっと祈る。なるべく自由であってほしいな。君にも。


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