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もち食って死ぬ

「ふー、これで掃除も一通り終わったかな。」

家族と共に都会に移りはや3年。懐かしいものもたくさん出てくる。しかし、妻と子どもは既に寝ているので、家族と思い出に浸る間もなく掃除を終えた。家族が寝ていたから掃除を終えれたのかもしれないが……


……今年もあっという間だったな。毎年そう考えて、その一年を振り返る。

なんだかんだで今年もいい一年だった。平穏で、健康で、不自由のない暮らし。その中にある小さな幸福を喜び、思考で反芻しながら、大脳皮質に焼き付けていく。

……人間関係での悩み、人から受ける理不尽も思い出して少し嫌な気持ちになった。

そんなことを考えている内に、掃除の疲れもあったので、ベッドの上に寝転がり瞼を閉じてしまった。



「来年もいい年になりますように…」








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ぞろぞろ……

                                                  ぞろぞろ……

                        ぞろぞろ……






「「「「Happy New Year!!!」」」」

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寝ている最中は、脳が記憶の整理をしています。睡眠学習と呼ばれることもあります。

夢はその副作用で作られるものらしいです。だから夢は色々なものが入り交じっているんですね。





ツイストサーブ🎾









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ーーーーーーじいちゃん、起きて!


懐かしい声がする、まだ幼い甲高い声。そしてとても安心する声。

「じいちゃん、朝だよ!」

目を開ける。懐かしい顔。これは前世の記憶か?立ち上がろうにも、力が入らず立てない。

……諦めよう。またまぶたを閉じようとする。

「じいちゃんーーーーーーー!!!」

子どもの声にまた起こされる。今度こそは、と身体に力を入れる。

「よいしょっと。」

「あ、じいちゃんやっと起きた!」

見たことの無い部屋。重い体。頭がぼんやりしている。脛を齧ってみる(自分の脛をかじるのは、昔からの俺の特技だ)。痛い、痛すぎる。顎の力が強いのも考えものだなと思いつつ気づく。

これは夢ではない。頭がぼんやりしているのは寝起きだからだ。

子どもが訝しげにこちらの顔を覗いている。

「……お、おはよう?」

「あはは、じいちゃん顔ヘンだよ〜。」

「そ、そうか」

訳が分からない。適当な相槌を打って、その子どもの言葉に応答すると

「じいちゃん、お年玉ちょーだい!」

お年玉?知らない子どもに求められたのは初めてだ。先程からじいちゃん、と繰り返し呼ばれるがオレはこんな子どもを孫に持った覚えはない。

「ち、ちょっとまってな……」

「うん!」

子どもは目を輝せている。とりあえず現状を把握しようとこの部屋の中を回る。


全身鏡を見つけて驚いた。

薄くなった頭皮、白い毛髪。顔には線がたくさん入っており、手はまるでグランドキャニオンのような入組みをしている。

「まじでジジイだ……」

「アハハっ!じいちゃんなんか変〜」

とりあえず、これが現実かどうかは置いてくと、俺はじいちゃん、そしてこの子どもは俺の孫ということになる。信じられないが。


……そうだ、お年玉。とりあえず孫にあたる子どもに渡さなくては。にしたって、オレがこの家のどこに自分の財産があるかなんて、分かる訳が無い。どう言い訳しよう……







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【選択肢】

・ごめん、今持ち合わせがないんだ

・くノ一になりたくはないか

・はい、どうぞ                                          👈










「はい、どうぞ」

「わーい!じいちゃん、ありがとう!」





俺はポケットに入っていた







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ガッツギアを渡した。




「じ、じいちゃん〜!こんなの要らないよ〜!温(ぬく)いし。」

「ご、ごめんな。後でちゃんと渡すから」

あまり喜んでもらえなかったようだ……

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「もうみんな1階で待ってるよ、早く降りよう」

孫はそういい下の階まで俺を案内してくれた。


トコトコ


下の階へ降りると、とてもいい匂いがしてきた。

「今日はお正月だからね、いっぱいごちそうだよ」

そうだ、今日はお正月。家族みんなで集まり、団欒する行事。リビングと思われる部屋からは騒がしい声が聞こえてくる。

とても懐かしい。ずっとここにいたい。何故か分からないけど、俺は、僕はそんな気がする。

その理由はリビングに入ってすぐ分かった。






「お、やっと起きたわね」

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「遅いよ〜!」

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「みんな待ってたんじゃん?」

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「ふぅン、時間通りに来たねえ」

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作:寝癖の宇宙

「もうお腹ぺこぺこだぜ……うん」

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作:寝癖の宇宙

「……まだまだだね」

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作:寝癖の宇宙



そこに広がるのは懐かしい光景、家族の姿。

そうだ、思い出したぞ。僕はこの家族の一人、「餅喉詰 死男」(もちのどにつまらせ しぬお)だ!



「早く食べないと美味しくなくなっちゃうわ!」

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「じいちゃん、この席きて!」

孫の隣の椅子に座り、家族と顔を合わせる。

「それじゃあ、みんな!新年を祝して……!」



「「「「「いただきます!!!!!!!!!!」」」」」

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「キ"ノ"コ"」

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パクパク




「……んぐっ!?」


「ど、どうしたの!!」

「おい死男!しっかりしろ!」

「じ、じいちゃん〜!起きて〜泣」

ああ、しまった。もちを喉に詰まらせてしまった。

……笑えるなあ(喉が詰まって笑えねーケド)。こんな人生の終わり方ってアリかよ。まだ思い出したばっかだってのによ……


……孫には悪いことしちゃったな……まだちゃんとしたお年玉も渡せてねーや……


ちゃんと、渡しておけば、良かったな……


………………………………………………


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……………………………


………………………




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「起きて、パパ」

「ん……」

その声に呼応して、なんとか布団から出ようとする。しかし布団の外は寒く、また布団に入ってしまった。

「起きろーーーーーーっ!!!!」ガバッ

「わあ、いきなりふとんを剥がすなあ!」

「はっぴーにゅーいやーーーーーー!!!!!」

そうか、こっちの方も正月か。

……こっちの方?何を言っているんだ俺は。初夢はどうやら可笑しな夢を見たらしい。

「もうご飯できてるよ!」

タッタッタッ、とリビングの方へ走っていく。






「ーーーーーあら貴方、遅かったわね。あけましておめでとう。」

「ああ、ごめんね…」

「うふふ、昨夜はお疲れ様。ご馳走を作ってあるから、食べて元気だしてね」

「ありがとう」

「じゃあみんなで…」







「「「いただきます!」」」

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パクパク













「……んぐっ!?」

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