さらばあなた

数センチ隣のパラレルワールドでも、わたしはあなたとサヨウナラをしているのでしょうか。

あなたは、昔よく見えていたギョロ目を瞬きするでもなく、何かを見ようとしているでもなく、宙ぶらりんのままの隙間でわたしを呼びました。それは遠くからの声でしたので側まで来るのに半日もかかってしまい、ごめんなさいね。あなたはわたしよりもっと高い位置から、わたしを許すような諭すような抱きしめるような、そんな雰囲気でわたしと手を取り合いましたね。わたしは嬉しかったですよ。ある時からあなたはわたしより好きだという人が出来たみたいでしたから。こんな究極の時にわたしを呼んでくれるなんて、とても嬉しいんです。

もう1番が良いなんて野暮なこと、封印いたします。

雨が降りそうでしたよね。

あなたは1日かけて、わたしに寄り添いました。まるで重症患者のようなわたしに叱咤激励などせずに、どんよりとした重苦しい雲を一緒に眺めてくれ、時々ほっぺをこちょこちょして笑いあいましたね。ただそれだけのことを今でも愛おしく思います。確かにあなたはわたしに愛情を置いて行ったのです。

13時。あなた去りましたね。わたしのところから。

さようなら、わたしの心は荒れ模様です。あなたのいない明日の景色がとても信じられない。でもなぜいつもと変わらない景色が目の前にあるのだろう、わたしの心を無視しているようで、悲しくなります。

あなたはまた、わたしに会いたいと思いますか?

空っぽのねこより

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