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妊娠発覚、パパへの目覚め

突然その日はやってきた

「今晩早く帰ってきてほしい」出勤後、妻からLINEがきた。「何時に帰る?」は多いが、明確に早く帰ることを求められることは普段はない。

仕事人間の私、普段は気がすむまで仕事をして夜遅くに帰るのだが、仕事を切り上げて早めに帰宅した。今日は誕生日でも記念日でもない。ホワイトデーだって明日。金曜日だし寂しいのか。一緒に見たい映画でもあるのか。

帰宅後、ネクタイを緩めながら理由を尋ねた。妻はいつも通りムギ -もうすぐ1歳になる茶トラの猫と遊びながら「ちょっと目をつむってて」と。手にヒヤッとした感覚。料理がんばったとかかな、これは。しばらくして「目を開けていいよ」と声が聞こえ、僕は静かに目を開く。

僕の目の前にあったのは「赤ちゃんできたよ」と書かれたプレートがのったかわいらしいショートケーキだった。

戸惑いと喜びの狭間で

おいおいおいおい、ちょっと待ってくれよ。衝撃すぎるだろ。赤ちゃんって書いてあるぞ!?え、何?どういうこと?戸惑う僕。理解が追い付かない。このケーキに対するリアクションは父親としての第一歩である。めちゃくちゃ重要だ。それだけはすぐにわかる。

しかし、仕事で糖質を使い果たした脳みそはぼんやりとしていて、何の答えもよこさない。衝撃的すぎて反応できない。こういう時、どうすればよいのだろう。妻はスマホを片手にニヤニヤしながらこちらを見ている。僕は口を大きくあけたまま30秒くらい妻を見つめた。それしかできなかった。

世の中の人を強引にリアクション芸人とそうでない芸人の2種類に分類するなら、間違いなく僕は後者なのだ。妻はそんな僕の様子をみてケラケラ笑っていた。

妻とは以前から子供が欲しいね、と話はしていた。妻も30代が近づき、焦る気持ちもあったようだ。僕は子どもという存在にいまいち現実味が湧かず、「天からの贈り物だから期待してもムダ。できるときはできるよ」くらいの楽観的な考えではあったのだけど、夫婦の子供が欲しいという思いは共通していた。

だからもちろん心の中では妊娠する可能性だって頭の中にあったし、いつかこういう時が来たらいいなとは思っていた。うれしい。純粋にその思いはあった。

だが、同時に困惑した。子供ができる、子供のいる家族になる。それはどこか遠い世界のだれかの人生のような気がしてきた。僕の周りには結婚していない人も多いし、子供のいる人生に現実味はいまいちわかない。「子育てか、すごいな、いつか自分もするのかな」そんな程度にしか考えていなくて、まさかこんなに早く「その日」がくるなんて思ってもみなかった。

父親の自覚なんてものは当然ない。体の変化だってない。子供が生まれる、ということはいまいちすぐに自分事化できなかった。自分に子育てなんてできるのか。不安が一気に大きくなった。

夫と妻の状況の違い。そこに生じるギャップ

口を開けたまま妻を見つめる30秒。妻のことも考えた。妻に今日という1日で何があったのか。どういう思いで今、僕の動画を撮っているのか。

妻にとっても念願の妊娠である。体の変化だってあるだろう。いつもくるはずの生理がこない。熱っぽい(コロナウイルスでなくて本当によかった)。4日間も37~38度の高熱が続くのはちょっとおかしい。「もしかして…!」と思い、妊娠検査薬を手にする。期待を胸に結果が表示される窓を見つめる。そこに陽性を示す青の線が出る。「妊娠してる…!」さっそく今晩夫に妊娠したことを伝えよう。LINEを送る。喜んでくれるだろうか、夫はなんというのだろうか。そんなことを考えながら幸せいっぱいの気持ちでケーキを買いに行く。「赤ちゃんできたよ」のプレートをオーダーする。

妻は心で、体で、すでに妊娠という出来事を体感しているのだ。その喜びを夫と共有したくて、ケーキを買い、そして早く帰ってきてほしいとLINEをしている。子育てのことだけじゃない。自分のこれからの体の変化だってわからない。流産する可能性だってまだ十分ある。夫の僕よりも心配や不安の種の多さは1つや2つ多いなんてどころではない。一切自分事化できていない夫とはすでに体験にも、情報量にも、感情にも、いろいろなものにギャップがある。

喜びの共有

そこまで考えて思った。不安なのは一緒だけど、この人と一緒にこの子を育てたい思いは変わらない。幸せな時間をたくさん作っていこう。まずは子どもが生まれてくるかもしれないという可能性を天から授かったということそのものを一緒に喜ぼう。30秒してようやく言葉がでてきた。

オレ、パパになるんだね!

妻はにっこりと笑ってくれた。しばらく夫婦で抱き合って喜びをかみしめた。

今後やること・考えたいこと

今はおおむね妊娠4週前後。前回の生理の開始日が起点なので、すでに妊娠してから1ヵ月経っていることになる。

ただ、まだ子どもが生まれてきたわけではない。気は抜けない。まだ正常に妊娠しているとは限らないのだ。子宮外妊娠の可能性もある。産婦人科を受診して、初診で正常な妊娠と確認できるまでは安心できない。

胎嚢とその中の豆粒くらいの大きさの赤ちゃんが確認できるようになるのが、概ね5週目。そして胎児の心拍が超音波検査で確認できるようになるのがだいたい6週目らしい。産婦人科を受診するのタイミングは遅すぎても危険、早すぎても胎嚢が確認できず判断できない、ということで、この5~6週目を目途に受診するのがいい、とのこと。4~8週は中枢神経や内臓、目や耳などの器官が急速に形成されていく大事な時期なのだそうだ。ということで、来週は夫婦で産婦人科に行くことにした。

他にも考えることはたくさんある。名前をどうするか、どこで子育てするのか、今の仕事をどうするのか、いつ上司に告げるのか、育休はどれくらいとるのか。ひとつひとつ解決していかねばならない。それにどうせ子どもが生まれたら毎日あわただしすぎてじっくりは考えられないのだから、教育方針も今のうちに考えておくべきだ。

幸せになってほしい。ゴールは一緒でも取りたい手段や幸せの定義は夫婦2人だけでも結構違うはず。幸せとは何か、これからの時代を子どもにどう生きていってほしいのか。それを言語化していくことも、僕たち夫婦の大切な仕事だ。そのためにお互いの人生観に向き合う時間も作っていきたい。「幸せ」というものについて自分なりに答えを出してみよう。

あとは現実的にこれからつわりが激しくなってくることを思うと、家事分担の割合も僕がもっと上げていかないといけない。リハビリしないとな。

直近はとにかく来週の産婦人科だ。正常に妊娠していますように…!

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