見出し画像

感覚的に体を動かしてデザインする試み①

今回は、EMARF学生アンバサダーとして取り組んでいる地獄組取付プロジェクトと関連して、株式会社DIXのオフィス3階で使用される家具の中でも「作業着掛け」を制作していく。

*本記事にて、参加型ワークショップに触れていますが、愛知県内でコロナウイルス感染者が急速に増えているためワークショップの実現まで至りませんでした。そこで一部のメンバー間のみで行っています。

0. クライアントからの依頼

i_アートボード 1

 オフィス3階にある屋根から吊るしたパイプにハンガーがかかっている簡易的な作業着掛け。近頃は不足しているため、あちこちの壁や置かれている地獄組などに引っ掛けてある。
 こういった現状も踏まえ、株式会社DIXのオフィス3階の作業着掛けを制作していく。

1. 発想の動機

やりたいこと
オフィスの社員さんが使用する作業着かけを作りたい
「形」を幾何学やパラメトリックな形態にしたい
利用者(DIXの社員さん)が参加型形式でデザインを決められるようにする

 まず手元にあった「Parametric Design with Grasshopper 建築/プロダクトのための、Grasshopperクックブック」(石津優子+堀川淳一郎)をパラパラとめくっていた。その中でP.521にある「OSC」の章「ブリッジング」ではprocessingでの図形の描画の変化に応じて、OSC通信を介してインタラクティブにモデルが変形しているのを見たことが発想の起点だ。

 そこで「参加型」ということで社員さんが体を動かすなど「動作」を行うことでセンサー値を取得し、OSC通信もしくはシリアル通信を介してインタラクティブにモデルを変形させながら形を決めていく、というデザインプロセスにチャレンジしていく。

2.デザインプロセスのスキームの提案

 今回は、「おじぎをする」動作で部材の曲線が曲がる角度を決めるようにする。今後は制作していく上で「動作」と「部材の変形」が密接なつながりや「動作をもとにデザインするからこそできる形」の意味について考えられるようにもしたい。

3. スタディ : arduinoやzigsimとの連携

 「おじぎをする」動作からセンサー値を取得してGrasshopper上で演算しライノセラス上でモデル変形していく。ここではセンサー値をGH上で取り扱う上で3つの方法をスタディした。

①firefly(GHプラグイン)を用いてArduinoとアナログインプット
②firefly(GHプラグイン)を用いてArduinoとシリアル通信
③zigsimとgHowl(GHプラグイン)を用いてOSC通信

*ここでは、あくまでも方向性のスタディの記録を残していくため、具体的な実装方法については別のnoteで共有します。ソースコード、マイコンとセンサーの配線など…詳細の解説については「○○制作ノウハウ番外編①(実装)」にて紹介。(2020.08.20以降公開予定)

3-1.firefly(GHプラグイン)を用いてArduinoとアナログインプット

Fireflyは、Grasshopper(Rhino用の無料プラグイン)とArduinoのようなマイクロコントローラの間のギャップを埋めるためのソフトウェアツールのセットを提供しています。これにより、デジタルと物理の世界の間でほぼリアルタイムのデータフローが可能になり、これまでにない流動性を持ったバーチャルと物理のプロトタイプを探索することが可能になります。
food4rhinoのサイトより訳

画像2

また、ヘテデュイーノというプラグインもあるみたいである。今回は使用してないが、紹介のみしておく。

マイコンの一種であるArduinoのピンから直接、センサー値をGrasshopper上に送り値を扱う。

  arduino側でセンサー値を取得しその値をarduinoIDE側で特に演算せずそのままGHで演算できるのであればこの方法が一番簡単そうだ。しかし加速度センサーなどGH側でコンポーネント組むよりもarduinoIDE側でキャリブレーションしたほうが楽な場合についてはどうしようか、ということでスタディ2にはいる。

3-2.firefly(GHプラグイン)を用いてArduinoとシリアル通信

シリアルモニター上での数値をGHのパネル上に送りデータとして扱う。

加速度センサーのように(今回はMPU6050を使用)、取得値をそのまま使うのではなくキャリブレーション(物理演算)をして自分が欲しい値に変換してから取り扱うものは、GH上でコンポーネント組むよりもarduino上でソースコードを用いたほうが早いため、シリアル通信をしたほうがよさそうと考えたためこの方法をスタディした。

しかし、わざわざマイコンを用いなくても加速度・ジャイロならスマホでも取得できるのでスマホセンサーを用いたほうが良いかもというリファレンスを得たためzigsimを用いたスタディをした。

3-3. zigsimとgHowl(GHプラグイン)を用いてOSC通信

『ZIG SIM』『ZIG Indicator』は、スマートフォンに標準で内蔵されている各種センサを利用することで、迅速なプロトタイプ開発を可能にするアプリケーションです。
ZIG SIMのサイトより引用

今回はZIG SIMを用いてスマホセンサーでGH上のモデルを動かせるようにした。

3-4.リファレンス

これらのスタディを経てメンバー間で出たことをまとめる。

・センサー値がこまめに変動するので、ボタンか何かをハード側につけ、好きな値のところでボタンを押すをセンサー値の取得がストップし、その状態のモデルでシェイプを確認できるように実装したらどうか

・ソーシャルディスタンスを保った参加型(身体を動かしながらの)デザインワークショップをするためにghを離れたところから自由に操作できる自作コントローラーを作るか…という結論に。

・例えば、ランプの傘の部分。ルーバーの密度、ランダムにあける開口の数などを、部屋や使う場所に応じて、照度センサーもしくは光センサーの取得値でパラメトリックに形状を決められるなど…はどうだろうか。

・webカメラ使ってモーションキャプチャーしてやれないか‥‥unity上に読み込んで‥…というアイデアもあった。アンバサダーの役割としてスマホアプリとghだけでできるような手順にした方が「真似したい」と思ってもらえるのでは‥という議論に。ターゲットをどこにして企画するか考える。

4. まとめと次回予告

 今回は、「参加型ワークショップ」にするための実装方法やシステムをブレストしていったことをまとめた。次回は、実際にデザインをしていきEMARFで発注するところまでのノウハウを共有するのでお楽しみに!

第2回はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?