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メンバーインタビュー〜ドリームインキュベータから新規事業カーブアウト・MBOを実施。新会社を設立の経緯と今後のビジョンに迫る〜

今回はドリームインキュベータ(以下、DI)、プライベート・キャピタルグループ(スタートアップ専門の投資銀行事業。以下、PCG)から新規事業カーブアウト・MBOを実施し、株式会社ファイナンス・プロデュース(以下、ファイナンス・プロデュース)を設立したお二人に、設立の経緯や新会社でのビジョンなどをお伺いしていきます。

(インタビュアー:ファイナンス・プロデュース PR担当 有村


ーーまずは松井さん・ジェソンさん、お二人の自己紹介を簡単にお願いします。

松井:私は大学を卒業後、最初はニューヨーク市場に上場する米系保険会社に入社しました。その後、SBIインベストメントを経てDIに参画し2019年4月に新規事業として起業家専門の投資銀行事業をジェソンと共に立ち上げました。その後2021年6月に本事業を新規事業カーブアウト・MBOを実行し、ファイナンス・プロデュースを共同創業しました。

ジェソン:私は新卒でSBIインベストメントに入社し、DeNAで事業開発を経験した後、フィンテック分野のスタートアップ企業を経て、2019年よりDIに参画し起業家専門の投資銀行事業を松井と立ち上げ、前述の通りファイナンスプロデュースを共同創業しました。


ーー今回どのような経緯で、DIからカーブアウト・MBOすることになったのですか?背景をお聞かせください。

松井:DIにて2019年4月よりプライベートキャピタル・グループを発足し、グロース・ステージ起業家の大型IPO資本政策やスタートアップM&Aの助言をする「ファイナンス・プロデュース」事業を展開してきました。

この度、「DIと『社会を変える 事業を創る。』というミッションにおいて志は共有しつつ、今後はより独立性を強めて事業展開を進めるほうが事業創造を加速できる」との考えで、新規事業カーブアウトの実行を決意しました。

ジェソン:新会社について、当面は、米欧中印との比較で日本が最も遅れていることの一つであり、特に、業界のボトルネックとも言える、スタートアップM&Aの規模化と質の向上を中核テーマとして取り組みます。スタートアップだけでなく、VC・PEファンドや日本の大企業の事業創造や組織構造における課題が複雑に絡み合う難易度の高いテーマです。


ーーファイナンスプロデュースの業務内容を教えてください。

松井:
一言で言うと、社名の通り「ファイナンス・プロデュース」業務を提供しています。

「ファイナンス・プロデュース」とは私たちが独自に提唱している概念で、一般的なM&Aアドバイザリー業務や、ファイナンシャル・アドバイザリー業務に留まらず、起業家や大企業の新規事業責任者など、事業創造の中核になる人と、志や想いを共にしながら伴走していく点が特長です。


ーー「ファイナンス・プロデュース」事業についてもう少し詳しく教えてください。

松井:「ファイナンス・プロデュース」は、財務アドバイザリーの上位概念としてより広い範囲を網羅しています(※下図参照)。

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一義的には財務アドバイザリー業務も行いますが、起業家に主眼をおいているのが特徴で、特にシリーズB以降を中心とした、次世代のユニコーン企業を目指している企業を対象に、経営の節目となる重要局面(例えば、IPOに向けた大型の資金調達やM&Aなど)におけるアドバイザリーを行っています。

シリーズB以降になると、市場・経営チーム・事業モデル全てポテンシャルを中心に評価されるシリーズA以前と異なり、前述のポテンシャルに対する再評価・計画の達成度合い・実績・足元の成長スピードを問われながら、市場・競争環境によっては更に加速すベくアクセルを踏むのか、若干の軌道修正が必要なのか、大胆なピボットをすべきなのか、などより客観的な状況・視点を踏まえた意思決定が必要になってきます。

他方、ハンズオン型VCの多くはシリーズA以前のハンズオン支援を多くの投資先に広く提供する一方、シリーズB以降の重点支援先は絞り込む傾向があるため、多くの起業家の方々は成長への孤独なプレッシャーと日々闘っていらっしゃいます。まずは私たちが壁打ち相手・相談相手として寄り添う姿勢が重要だと捉えています。

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ちなみに、次世代のユニコーン企業を目指す起業家の方々を、私たちは「NEXTユニコーン起業家」と呼んでおります。


ジェソン:個人的には『起業家の事業創造支援』という考え方が、「ファイナンス・プロデュース」を表す言葉としてしっくり来ます。

スタートアップ企業の場合、限られた時間軸と人的リソースのなかで、成長のために全速力で走り続ける必要があります。大型資金調達や大型IPO、スタートアップM&A、カーブアウト・MBOなどを含めてあらゆるスタートアップ・ファイナンスの経験を積んだオールラウンドな専門人材を社内に抱えているケースは稀です。

スタートアップの資金調達一つを例にとっても、シード・アーリー期の資金調達と、シリーズB以降等のグロース・レイター(Pre-IPO)期の資金調達は、必要なスキルや経験、相手の投資家が求める要素等が全く異なります。また、投資家、と一言でいっても、エンジェル、VCファンド、PEファンド、機関投資家、新興上場企業、日本の伝統的な大企業、非上場の歴史が長いオーナー企業、これら全ての北米版、欧州版、中国版、東南アジア版など、全てを1人でカバーし切ることはもともと不可能なのに、スタートアップは成長の過程でこれらの多様な投資家との接点が突然必要になったり不要になったりします。

事業局面が変わるごとに新たに最適なファイナンス人材を採用するとしても、時間とコストが追いつかないこともありますよね。いわばベンチャー経営の節目における重要局面でのファイナンス戦略のパートナーとして、私たちがワンストップでご支援させて頂くイメージです。クライアントから要望があれば、外部CFOのような形で主体的に関わりながらご支援するケースもありますし、社内でファイナンス人材が必須な局面であればCFO人材をご紹介するケースもあります。

松井:起業家や大企業の新規事業責任者とともに、事業創造のビジョンや社会的意義を共有したうえで、その手段や通過点となるような大型の資金調達・IPOやスタートアップM&Aについて、株主の立場でもなく、名実ともにあくまで“起業家本位で”親身になって相談させて頂くのが特長ですね。

ジェソン:別の見方をすると、特にスタートアップM&Aにおいては第三者としての専門家が入ることでスムーズに交渉が進められることも多いんです。第三者だからこそ冷静に判断できることもありますし、当事者同士だと言いにくいこともありますしね(笑)。

例えば、起業家としてこれまでお世話になったVCや大企業の株主と売却価格をどのように分け合うか、またはスタートアップM&Aを断ってIPOを目指し続ける場合とのメリット・デメリットは各利害関係者にとってどう異なるのか・・・などなど。

たとえ投資契約書や株主間契約書で合意済みであったとしても、様々な利害関係や思惑・感情が入り混じってくることは、ご経験がある方であれば容易に想起されると思います。

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ーー先ほど松井さんから「NEXTユニコーン起業家」というワードが出てきましたが、具体的にはどういった定義になるのでしょうか?

松井:共通定義としては、「1千億円以上の規模の事業創造を目指したい起業家」を指しています。そのうえで、「NEXTユニコーン起業家」を以下の様に分類して定義しています。

①シリーズB以降等のグロース・ステージの起業家

• 1千億円超の企業価値での大型上場(IPO)を目指す次なるユニコーンとして、大型の資金調達などを活用して事業加速を目指す起業家(狭義のNEXTユニコーン起業家)

• 小規模上場を選ばず、新規事業に取り組む大企業等にM&Aを活用してグループ入りし、より大きな経営資源を活用して1千億円超の事業創造を目指す起業家(広義のNEXTユニコーン起業家)

②新規事業カーブアウトの起業家

• 大企業、新興上場企業、メガベンチャー等の新規事業のなかで、外部の経営資源をフル活用するほうが成功確度が高まる新規事業をスタートアップとしてカーブアウトし、1千億円超の事業創造を目指す起業家(広義のNEXTユニコーン起業家)

③新興上場企業の起業家

小規模上場後の新興上場企業として、必要に応じてPIPESやM&A、MBOも活用し、1千億円超の事業創造を目指す起業家(広義のNEXTユニコーン起業家)


いずれも、分野は問いませんが、傾向として、大型投資やM&A候補の裾野が広がるSaaS・サブスク型・DX・ESG分野のご相談が増えています。


ーファイナンス・プロデュースのクライアントは、どのような特徴がありますか?

ジェソン:ファイナンスプロデュースはご相談頂く文脈・コンテクストに特徴があるように感じています。

例えば、大企業からのカーブアウトに関する財務アドバイザリーの場合、一般的には企業の上層部や財務系部門から「財務の立て直し」という文脈でご相談を頂くパターンが多いのではないでしょうか。しかし私たちの場合、大企業内の新規事業責任者など、事業に携わる当事者から直接ご連絡を頂くケースが多いのです。

さらにご相談いただく内容も事業創造ありきのものが多く、例えば「このまま大企業の中で成長し続けた方が良いのか?」「カーブアウトして外部リソースを活用したほうが良いのか?」といったように、事業創造を前提にしたご相談が多い印象ですね。

ーー直近だとどのような実績がありますか?

ジェソン:SaaS型クラウド CMS の開発・提供及び DXコンサルティングを行う株式会社コネクティ(以下コネクティ)の持分会社である 株式会社CONNECTY HOLDINGと、株式会社WOW WORLD(以下、WOW)との資本提携におけるM&A助言(ファイナンシャル・アドバイザリー)サービスを行いました。

起業家がご支援前から希望していたVCからのグロース投資のオファーも希望通り頂けたため、資金調達をして単独でIPOを目指す選択肢もありましたが、資本力と充実した営業力・補完関係のあるソリューションを既に有する上場企業グループの中で事業創造を加速するというスタートアップM&Aを決断をしました。

起業家が経営を続投し、3割強の株式は起業家が継続保有。双方メリットあればスイングバイIPOも検討するという、起業家の一定の経済的利得を確保しながらも、更なる事業創造の加速を行うというスキームです。

企業価値の向上、事業創造の加速という観点において、VCからの調達がいいのか、上場企業グループに入るのがいいのか、バイアウト・ファンドなどが良いのか、という議論を起業家と徹底的に行いながら、選択肢も最初は広めに議論しながら絞り込み、最終的に納得のいく答えが導き出せた点においては、起業家の伴走者を標榜する我々としてはいい実績だったのではないかと思います。

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松井:私は、体験型ツアーのECプラットフォームとしてアジア最大手の一社であるKKdayに対し、シリーズB以降での資本政策の立案、旅行会社のH.I.S.との資本提携、LINE Venturesやアリババ起業家ファンドからの資金調達ラウンド、日本の政府系ファンドである海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)やシンガポールのVC等からの資金調達ラウンドを含む累計100億円超の資金調達ラウンド、日本の上場企業の子会社の買収(クロスボーダーM&A)等に係るファイナンス・プロデュースを行って参りました。

同社は台湾発でアジア全域にビジネスを広げてゆくなかで、旅行客の目的地としてアジアで最も人気がある国の一つとして日本が事業戦略上重要であり、日本へのインバウンド送客を強化したいというニーズを抱えていましたので、私たちの方で事業戦略・資本戦略の観点から合致する有力な投資家や事業パートナーを絞り込み、交渉するご支援をしました。

特に、新型コロナウィルスの影響でインバウンド市場が大打撃を受けた最中の資金調達は非常に難航しましたが、起業家のリードと投資家の力強いサポートのおかげで何とか実現しました。起業家が最も苦しい時こそ全力で支える、それがファイナンス・プロデュースの真髄です。概要はプレスリリースをご覧頂けると、より分かりやすいと思います。


ーーファイナンス・プロデュースの今後の展望について教えてください。

松井:前述の通り、まずはスタートアップM&Aの規模化と質の向上に貢献することです。

なぜなら、スタートアップ投資件数が増えている中でIPO件数はここ数年増えていない事実がありますので、スタートアップM&Aの成功例が増えなければ、VCファンドはファンド期限を迎えていく中で起業家は必然的に不幸なEXITを強いられる例が増えることを、1,500億円以上のVCファンドを運用し300社以上に投資していた前職VCで私もジェソンも痛感してきたからです。

スタートアップM&Aにおける質の向上とは、スタートアップM&A後の事業創造に成功することであり、売り手である起業家にとっても、買い手となる大企業や新興上場起業・バイアウトファンドなどにとっても、両者にとっての成功を意味します。

こうしたスタートアップM&AのPMI(Post-Merger Integration)の成功事例を増やし、多様な成功ノウハウを共有して成功確率を高めていくことが、スタートアップ全体のエコシステムの活性化と、大企業の新規の事業創造の手段の一つとしてのスタートアップM&Aの活性化に繋がります。

ファイナンス・プロデュースがチームとしてカバーできる範囲としては大型IPOの支援とスタートアップM&Aの支援、いずれも重要ですが、前者の大型IPOは成功事例が増え続けており、CFO・VCや証券会社等の手厚いサポートやノウハウがかなり共有されてきておりますが、スタートアップM&Aについては規模化と質の向上という観点で足りないもの尽くしのボトルネックばかりの割に組織的にこの課題に取り組む企業はまだ数社しかいないと考えており、社会課題の一つと捉えて取り組んでいきます。

ジェソン:一方でマーケットの変化は速く、3~5年後にはトレンドやニーズが大きく変わっているかもしれません。日本のVCや大企業は既にこうしたトレンドやニーズの変化には敏感で、AIやSaaSに特化したVCファンドなどが既に出てきました。

ただ、バイアウト・ファンドは、まだこうした動きが少ないです。大企業の古くて安定した事業のカーブアウトや事業承継案件ばかりにフォーカスしており、スタートアップ界隈との接点やそのトレンドとの接点は現状は日本では希薄です。


他方、例えば米国にはデジタル分野に特化したバイアウト・ファンドなどがあり、起業家やベンチャー・キャピタルの安定的なEXIT先として、大企業以外の選択肢として存在感を発揮しております。

しかし、まだ日本であまりそういった動きはあまり耳にしないですね。起業家やVCの層が以前より格段に厚みを増したこれまでの状況からすると、今後、領域をデジタルやテクノロジー、特に将来の見通しが立てやすいSaaSやサブスクに絞ったバイアウト・ファンドも出てくるでしょう。いずれにせよどのような変化にも対応できるよう、常に柔軟性は持ち続けたいです。


ーー最後に、お二人のビジネスに対する想いをお聞かせください。

ジェソン:正直に言ってしまえば、ファイナンスプロデュースが提供するソリューションは、時間さえ無制限にあればクライアント様がご自身で解決出来る領域かもしれません。

しかし現実に起業家の皆様の時間は限られており、さらに起業家自身でしか成し得ないミッションは別にあると考えております。起業家の皆様がやるべきこと、特に事業創造におけるリーダーシップと意思決定に大切な時間とリソースを集中できるよう、私たちが全力でサポートさせて頂きます。

松井:日本経済を「事業創造」を通じて元気にしたいという想いがベースにあります。様々なスタートアップ企業および起業家の「有事」を解決し、スピード感を持って日本経済の「事業創造」に貢献したいと考え、ファイナンスプロデュースを立ち上げました。

日本には、大企業同士のM&Aや中小企業の事業承継M&Aへのアドバイザリーや仲介において寡占的なプレーヤーは既に存在するものの、まだスタートアップ・起業家専門のファイナンス・プロデュースを組織的に行う専門企業はまだ希少です。

我々自身がチームとして成長していくことで業界に貢献することはもちろん、その過程では、スタートアップCFOを目指す人材や、SaaS専門のバイアウト・ファンドなどの新分野を切り拓きたい人材の登竜門のような存在になっていくはずです。

スタートアップCFO人材の観点では、我々のチームで3年間以上、起業家の苦しい時や悩ましい時こそ強く支えながら成功実績を積み重ねれば、どんなスタートアップや新興上場企業でも一定以上の戦力にはなるはずです。ただ、断言しますが、1〜2年間以下では、テクニカルにM&Aや資金調達は実現できてもその後の起業家の事業創造の成功まで伴走することはほぼ不可能なので、実力や実績にはなりません。最低でも3年以上コミットする人材こそが、我々のチームの中でも外でも活躍でき、起業家からもひっぱりだこのスタートアップCFO人材となるはずです。

こうした状況で起業家からのニーズは増えており、さらに増加することが予測されます。ファイナンス・プロデュースは今後さらに必要とされる組織だと考えております。ファイナンス・プロデュースを軸に、真に起業家を支援する組織を目指します!


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