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まずは、いまの森について聞いてみよう

はじめまして。遠野市で企画・編集・執筆の仕事をしている宮本拓海です。

5月から遠野市が一次募集を行っている、遠野市地域おこし協力隊採用募集。その5つのテーマのうちのひとつ「テーマ型自由提案・森林」について、僕が採用募集のための記事を書くことになりました。

今回の記事では、僕についての説明と今の遠野の森林の状況や森林分野の地域おこし協力隊に求められる役割についてご紹介します。

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宮本 拓海(みやもと たくみ)
1994年生まれ。岩手県奥州市出身。2019年4月から企画・執筆・編集を行うフリーランスとして活動。同年7月からNext Commons Lab遠野に参画しながら、個人の仕事を並行して行っている。これからの目標は、奥田民生のように生きること

登山やキャンプが好き。でも僕はまだ何も知らない

僕が遠野に住み始めたのは2年前。もともと岩手出身なので、遠く離れたところからきたわけではないですが、自分も引っ越しをして遠野で暮らしています。

この森林分野についての採用募集記事を書くことが決まったのは、今僕が森林について興味を持ち始めていることがきっかけです。その興味のまま、森林について勉強して、応募を検討している方たちに学んだことを発信しよう、ということになりました。

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僕は今年に入ってから登山を始めました。普段、打ち合わせや取材以外は、家でパソコンに向かって作業していることが多いので、とにかく外にいるだけで心地いい。陽の光を浴びながら、体を動かすのも最高です。なので、登山以外にもキャンプをしたり、ふと思いついて朝ごはんを食べるために近所の河原でピクニックしたりもしています。

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そうして、外で過ごす時間が増えるとだんだん山の植生や森林の事情が気になるようになってきました。今は全然知識がないから、歩いていても何にも反応ができないんです。いろんな草木や花が生えていることはわかるけど、どれがどれだかわからず、山菜の気配や鳥の鳴き声を感じながら、なにも知識がないので、ただひたすら歩き進めるスタイルで山を登っています。

今でも十分楽しいけど、これからいろんなことを知れたら、もっと外で過ごすのが楽しくなるはず。植物のことについて詳しくなりたいし、外でどんな遊びができるのかも知りたい。農業や林業、自然と関わりながら屋外で作業を行う仕事をやってみたい、という興味も湧いてきています。

ちょっと自分の話が長くなりましたが、この「Into the Forest」では、そんな「今森林になんとなく興味を持っている」僕が、遠野の森林について学んでいく過程を伝えることで、募集を検討している人たちが応募するときに提案する内容のヒントを得ることができたり、むしろ自分と同じような興味の度合いの人が、より森林について気になったりするような記事が書けたらと思っています。

森林分野の募集は自由提案なので、そもそも今の遠野の森林の状況がわからないと、提案するための企画も考えづらいと思います。なので、この連載を通して、少しでもアイデアの種になるような情報が伝えられるようにがんばります。

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この記事を書くために、僕に森林のことを教えてくれるのは、着任した地域おこし協力隊のパートナーとなるNPO法人遠野エコネット代表の千葉和さん。(エコネットの活動の他に、情報誌を発行していたり、ミュージシャンとしても活動していたり、本当に知れば知るほどすごい方なんです)

今、遠野の森林ではどんなことが起きているのか。

まずはじめは、Next Commons Lab遠野が運営する「Commons Space」でお茶をしながら、和さんにお話をお聞きすることにしました。

つくる大学_お山かけ_プロフィール画像

千葉 和(ちば なごみ)
1963年岩手県岩手町(沼宮内)生まれ。NPO法人遠野エコネットの代表理事として、子ども達との自然体験や森づくり活動を実践。また、遠野の自然と暮らしの情報誌『パハヤチニカ』を1994年から発行。大出早池峰神楽の継承者でもあり、ギター片手にオリジナル曲を作り歌うミュージシャン(デクノボーブラザーズ)としても活動中。

遠野の、そして日本全国の森林の状況

面積のおよそ8割を森林が占めている、遠野市。
市内には森林の管理・伐採から製材、加工などに関わる企業・団体が複数あり、森林資源活用に向けた様々な取り組みが行われている。

(2021年5月号の広報遠野の特集は「木を生かす」。まちの森林の現状などが紹介されています)

また、遠野市は今年3月に、森林の持つ機能を保ち、地域経済活性化を図るため「遠野市ふるさとの森を育み木と暮らすまち条例」を制定。遠野の木材産業を活性化させるための動きがこれからさらに活発に行われようとしている。

しかし、遠野の森林は現在深刻な状況が続いていると和さんはいう。

「山主が自分の山に行ったことがなくて、所有している山の境界がわからなかったり、所有者が山のある地域から出てしまっていたりして、ちゃんと管理されずに放置されている森林が問題になっている。森林は経済的なことを考えると、事業としてすごく成立しにくい。例えば農業だったら、その年に流行っている品種を植えたら、その年に収穫できて、よく売れるということがあるかもしれないけど、林業は収穫するのが50年後とかになるから、収穫できたときに何がよく売れるかはわからない。だからしっかり管理しようとする人が少ない」

「あとは人や農作物への動物の被害もそう。昔は人が手入れをしている里山があって、奥山から里山に動物が入ってこないから街が守られていたけど、今は里山が奥山化してしまって、中間のバッファゾーンがないから、熊や鹿と人がよく遭遇するようになってしまった」

「そもそも日本は森林を人が管理してきた歴史があまりないから、ちゃんと知識がある人も多くないんだよね。だから、山主や森林に関わる人達の中でも管理の仕方がわからなくて、たくさん問題が起きている」

話を聞いていると、本当に大変なことが森林で起きている状況がよく伝わってくる。そしてそうした現象は僕たちが住んでいる遠野だけでなく日本全国の森林でも同じように起きているらしい。

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たしかに山の持ち主がわからないから木を切れない、とか。木があまり高く売れなくなって、そのままにされた杉林がいっぱいある、とかっていうことはなんとなく聞いたことがあった。でもこうして現場に入って、そこに関わる活動を続けてきた和さんから直接話を聞いていると、本当に心配になってくる。

なんかすごくネガティブな気持ちになってくるけど、どうしたら解決できるんだろう。

「これからやらないといけないのは、持続可能な森をつくりながら、その森の中で経済性を担保できるようにすること。もちろんそれがすごく大変なんだけどね」

「だから、普段そこではたいしたことないと思われている資源を『これはおもしろい』、『何かできそう』って考えられるといい。誰かひとりじゃなくて、みんなでそれができるといいよね。いろんな人を繋げられるような、コーディネーターがいるといいと思う」

今回の地域おこし協力隊に求められるのはまさにこのコーディネーター的役割。

「むしろ森林について何も知識がない人のほうがいい」と和さん。
たしかに知っている人は慣れてしまっていて、知らない人の方が気付けることがあるのかも。

「その森の資源によって、山主も森林の仕事をする人もみんながよくなる仕組みができるといいよね」

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答えはきっと森にある

和さんの話をちゃんと聞くまで、恥ずかしながら自分も、森林がそんなに深刻な状況だなんて思ってもいなかった。和さんは話の中で「これだけ問題があるのに、多くの人がそれを知らないことが一番の問題」とも言っていた。たしかにその通りだと思う。このままでは知らないうちに、山や森林の状況がどんどん悪化してしまう。

じゃあ、自分には何ができるのか。例えば普段文章を書いている僕は、森林の今の状況を勉強しながら、市内の人たちがざわざわできるような話題を提供して、みんなに森林の状況を知ってもらう活動ができるかもしれない。

「本当にそう。ざわつかせるようなことをしてほしい。もちろん誰かのためじゃなくてもいいから、自分がわくわくしながらやるのが大事だね」

自分自身がわくわくすることを続けて、みんなに森林について関心を持ってもらう。きっと簡単なことではないけど、実際に全国ではそうした活動を行っている企業や団体があることも和さんから教えてもらった。

僕たちに何ができるのか。話を聞くだけでなく、今の森林の状況を実際に見て、肌で感じながら考えてみたい。

「今はその問題を解決する答えが見つけられていない。答えがないから大変なんだよね。でもきっと、答えは森にある」

和さんに聞いた話は今回はここまで。最後は一緒に森に行く約束をして、この日は解散。次回は和さんと一緒に森を歩いて、聞いた話をご紹介します。では、また。

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遠野市地域おこし協力隊採用募集
④テーマ型自由提案【テーマ:森林】 募集人数:1名
【パートナー】
NPO法人遠野エコネット代表 千葉和さん
1963年岩手県岩手町(沼宮内)生まれ。大学卒業後、国内外を回り1991年より遠野市へ移住。現在は薬師岳山麓(標高550m)に自力で家を建て暮らす。仲間たちと編集委員会を作り遠野の文化、自然にこだわった情報誌『パハヤチニカ』を1994年から発行。NPO法人遠野エコネットという市民環境団体の代表理事として、子ども達とのエコキャンプや水源の森づくり、また間伐材を活用した薪の駅プロジェクトや高校生との炭焼き伝承活動などにも取り組んでいる。1993年~2009年まで早池峰国定公園保護管理員。

【求める人物】
・森林や林業に興味があること、それに関わることに可能性を感じる方 ※森林や林業等に関する知識・経験の有無は問わない
・物事に課題意識を持ち、それを良くしていこうとする熱意と行動力がある方
・自分自身が取り組むプロジェクトプランを描ける方
・地域の様々なプレーヤーと連携してプロジェクトに取り組める方
・プロジェクトに取り組む先に地域の未来像を思い描ける方

【ミッション/ロードマップ】
1年目 ヒアリングや研修
ー地域の森林を取り巻く全体的な現況を把握するため、森林に関わる様々なプレーヤー(林業会社、森林組合、NPO、製材所、木工団地、工務店、木工作家等)の実態調査を行う。
ー国内外の林業や森林資源の活用等に関する先行事例の調査を行う。
ー地域の森林業界の課題や可能性について検討する。
2年目~ 新たな可能性の発掘と実践
ー様々なプレーヤーやもともとある森林資源と自分自身が持っているスキルや経験、知識とかけ合わせることで、新しい可能性を生み出せるよう、検討と実践を進める。

<仮エントリー申し込みフォーム>
◎仮エントリー専用フォームはこちら(申し込み期間:6月1日〜7月25日)

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