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NCL遠野 視察レポート (イタリア篇)

今回は、NCL遠野の「視察」についてご紹介します。

NCL遠野では、始動から1年が経過して、現在約15名のメンバーが起業・事業化に向けて日々取り組んでいます。
ブルワリー建設に向けて動いているメンバーもいれば、モバイルハウスの開発、食の拠点の整備、プロモーション企画をしているメンバーなどもいます。他にもデザイン、テクノロジー、まちづくり、インバウンド、文化の継承…と、同時多発的に様々なプロジェクトが動いています。

日頃は遠野を拠点に事業計画を作成したり、地域の方々と交流したりしていますが、それと同時に国内外への視察も積極的に行っており、日々、誰かがどこかで視察しているような慌ただしい状況です。

今回は、その一例としてNCL遠野メンバーのレナータ・ピアッツァさんと富川岳が、9/25〜10/4まで訪れていたイタリア視察についてご紹介します。



詳細なご報告は別途イベントなどでお話するとして、今回は、視察の雰囲気をお伝えいたします。遠野のまちづくりに関わる二人が、シチリア島で何を学び、何を遠野へ持ち帰ってきたのか簡単にお話できればと思います。書き手は、富川です。

○レナータ・ピアッツァ
イタリア・シチリア出身。震災以降、東北とヨーロッパの起業家をつなぐ「HASEKURA Project」を立ち上げ、文化・事業交流をコーディネート。遠野移住後、どぶろくの世界展開、インバウンド施策、市民の自主性を引き出す施策などを企画中。Next Commons Lab遠野、ディレクター。

○富川岳
元広告代理店勤務。2016年春より遠野に移住し、web、ソーシャルメディア、映像、写真、本、イベント、商品開発などのプロデュースを担当。2017年4月に「富川屋」として独立。地域の価値あるものを磨き、発信し、そして次の世代へと伝えていくことを生業としている。Next Commons Lab遠野「ローカルプロダクション・プロジェクト」担当。




●イタリア・シチリア島
地中海性気候の温暖な場所シチリア。ゴッドファーダーの舞台となった場所として有名ですが、何を隠そうレナータの「地元」はここシチリア島なんです!びっくり。



●視察プログラムの概要
今回の視察プログラムは、世界遺産であるカンボジア・サンボープレイクック遺跡と、沖縄・南城市が地域根ざした観光のあり方「コミュニティベース・ツーリズム」を学ぶための機会でした。



コミュニティベース・ツーリズムとは、地域のコミュニティが主体となった観光のかたちであり、ツアーガイドや観光コンテンツ、宿泊先などもすべて地域住民や自治体・集落などのコミュニティが提供するものです。はじまりは南米だったようですが、こういった地域が主体となり、日々のくらしや文化自体を観光資源と考え、そういった地域の深い部分に触れてこそ価値があると考えるツーリズムのようです。
これらは、大型バスで乗り付けるような観光地を「消費」するツアーとは異なり、旅行者と地域住民が対等な関係を築くことのできる理想的な形態と言えると思います。

しかし、バルセロナや京都に代表されるように世界遺産に認定されたり一大観光地になってしまうと、大勢の観光客が押し寄せることによって地元住民の暮らしが損なわれたり、外から色々な産業がなだれ込んできたりするなど、必ず地域に良くないことが生まれやすくなっています(もちろんメリットもたくさんあります)。
地域の暮らしが損なわれず、逆に訪問先の地域をリスペクトしてくれるような観光客がどうしたら来てくれるようになるのか。

前置きが長くなりましたが、そんな中で、この1年カンボジア&沖縄の双方で活動するメンバーが世界各地の地域に根ざした観光を学んできており、今回最終回の開催地に選ばれたのがシチリア島でした。


シチリア島に決定したのは、プログラムのコーディネーターの方とレナータが以前より知り合いだったからで、今回、そんなレナータに誘ってもらい富川も参加することができました。
シチリアに行くと言ったらマフィアは大丈夫?と多くの方に心配されましたが、、そんなステレオタイプなイメージとは異なるチャレンジングな取り組みをたくさん見学することができました。

●8日間で8つの事業者
9/24〜10/4までの間、シチリア島を西から東へと移動しながら約8つの事業者の話を聞いてきました!ざざっと紹介します。

○約20年前にアンチマフィアのキャンペーンをゲリラ的に仕掛けたAddio pizzoメンバーのエドさん。今はAddio pizzo travelの代表をしながら、マフィアの歴史と、それと関わってきた街の歴史を自らガイドしながら外に発信している。「アンチマフィア」Tシャツを来て軽やかに説明してくれたのには驚いたと同時に、とても優しくて格好よかった。こんな40歳になりたい!と思いました。


○治安が悪かったファヴァーラ地域で7年前から小学生に建築を教えるアートの学校を創設したアンドレアさん。以降、世界的なアーティストがファヴァーラを訪れるようになり、地域のこどもたちと交流している。視察中、アンドレアさんの周りはいつも若者が自然と集まってきて、とても慕われているおじさんだった。こんな50歳になりたい!と思いました。


○シチリアレモンの農業組合を見学。生産の仕組みやグリーンツーリズムのお話を聞きました。地域資源を生産だけでなく加工、ツーリズムにまで展開しているダイナミックな事例でした。


○街全体が世界遺産の「シクリ」で、地元の空き家をリノベーションして宿泊場所にする取り組みをしている方。面白かったのは宿泊客の朝食を街のカフェが提供していること。これはカフェに交渉して実現したもので、宿泊客は朝食があればもちろん嬉しいけれど、カフェにとっても朝食の時間は空き時間であるため、そこで客が見込めれば売り上げにもなるというwin-winなアイディアから生まれたそうだ。タイムバンクのような発想で面白いと思った。
少しずつ宿泊場所が増えており、多方面においていい循環が起きていると感じた。



その他にもユニークな現場をたくさん見てきました。


移動しながら、ポイントポイントで、カンボジア・沖縄・遠野メンバーで振り返りを行いました。この時間もとても有意義なものでした。


●学んだこと(遠野での活動にヒントになりそうなこと)

①ローカル to ローカル。世界へ情報発信。
成功している事業は初期フェーズから世界へ発信し、つながりを持っていた。もともと実績や人脈のある人が地域に入り込んだということもあるのかもしれないけれど、目の前の問題を地域限定のものにせず、抽象度を高めて発信することで、より広い層から応援してもらう
ようにしていた。

②地域事業者と行政とのコラボレーション
「こんな活動をしているのに行政は協力してくれないんだ」。出会った何人かが話していた。これは地域活動の万国共通課題なんだろうか。どうして噛み合ってないところが多いんだろう…。ただ、行政も行政のルールがあるわけで、その文脈や事情もきちんと理解した上で、相互が協力的になる方法を考えないといけない。

③最初はいつも変人扱い
多くの方が最初は地域で変人扱いされていたけれど、続けていくうちに協力者を得ることができたと話していた。続けていくことでしか得られない信頼感が地域にはある。地元の方に教えてもらいながら丁寧に時間をかけて取り組みをつくることが重要(ガラッと変えるエネルギーもそれはそれですごく大事。バランスを見ながら)。

④地域住民のベネフィット
地域に住む方々は自分の暮らしがあるため、いつまでもボランティアで携わっていくと疲弊してしまい長続きしなくなってしまう。関わる人々にお金が落ちる、子どもの選択肢が増える、そういったベネフィットを設計することがとにかく大事。シチリアで出会った方でうまくその部分を設計したビジネスをされている方がいて、とても勉強になった。

他にも気づきは大小色々ありましたが、シチリア島で見た地域に根ざしたグラスルーツな活動は、遠野へのヒントがたくさんありました。ローカルのことはローカルから学ぶ。やらないといけないことがたくさんありますね!

ひとつの地域で活動していると単焦点になりがちですが、外から引いて遠野を見てみると、それまで気付かなかったヒントがたくさんありました。引き続きバランスを見ながら、外へと足を伸ばしていきたいと思います。全国に広がるNCLのネットワークを使えば他の土地にも行きやすいですしね。

以上、NCL遠野の視察の様子でした。


カンボジア&沖縄の方々とはとっても仲良しになりました。こういう参加者同士の繋がりも視察の醍醐味のひとつ。またお会いしましょう!


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