木村_1-補正

ポップアップ・スクリーンPJ 木村 悟之 インタビュー

いま、誰かの家に眠る16mmフィルムは、いつか日の目を見るのだろうか。何十年も再生されず、やがてそこにある事も忘れ去られるかもしれない映像たち。

「加賀の郷土映像をアーカイブしたい」と話すのは木村悟之さん。2018年3月からNext Commons Lab 加賀(以下:NCL加賀)のメンバーとして活動しています。

ーー 木村さんのプロジェクトを教えてください。

プロジェクト名は「ポップアップ・スクリーン」です。映像にまつわる多様なプロジェクト (上映、ワークショップ、記録、アーカイブ、リサーチなど) をぽつぽつと各地で展開していきます。中でも、郷土映像や郷土資料の収集、そして、作品について語り合う機会が生まれるような上映会を仕掛けていきたいと思っています。

このプロジェクトは、“映像ワークショップ” という団体名で活動しており、「映画館(シネコン)のない加賀市で、改めて住民と映像との関わり方を考える」というテーマを掲げ、キュレーターやメディアアート・アーカイブの研究者である明貫紘子とふたりで進めています。

ーー 加賀に来る前のこと、詳しく教えてください。

出身は群馬県です。高校は横浜の学校に進学して一人暮らしをしていました。高校までの通学路にレンタルビデオ屋があったんですけど、学校をサボってまあよく通ってました(笑)。ハリウッドも見たし、マニアックな映画も見たし、ジャンルは色々ですね。この経験が映像との出会いだったと思います。

大学は早稲田大学の第二文学部 表現芸術科に進み、卒業後は写真スタジオに就職しました。ずっと映像がやりたかったのですが、団体行動に向いてない自分がいて(笑)、最終的にデパートのチラシやカタログを作っているスタジオにいきました。

ーー 映像に戻ろうと思ったきっかけは?

やっぱり映像がやりたくなった、という単純な理由です。24歳の時に岐阜県にある 情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に入りなおしました。当時、メディアーアートを学べる唯一の大学院でした。特にこの学校では、いわゆる「映画制作」のように組織だった集団制作でなく、コンピューターやデジタルビデオカメラを使った、より個人的な作業を制作のベースに据えて教えていました。当時はそれがとても珍しくて、魅力を感じて入学を決めました。

大学院を出た後も色々やりましたね。長野県の北アルプスにこもって山小屋建て直しの記録映像を制作したり、人脈を広げるために東京で写真家のアシスタントをしたり、時にはギャル系ファッション誌の撮影などもやっていました(笑)。

そして35歳の時、明貫の仕事の関係で、ドイツに渡たりました。

ーー ドイツでの暮らしが大きな変化をもたらしたんですね。

ドイツへの移住をきっかけに、自分の作品をもっと知ってもらいたいと思うようになりました。そこで色々な映画祭に応募した中で、オーバーハウゼン国際短編映画祭 という国際的に有名な映画祭でミュージックビデオの賞を頂くことができました。これをきっかけに、他の映画祭や美術展への参加、ミュージックビデオ制作などの依頼をもらうようになりましたね。

もうひとつ、自分に変化をもたらしたエピソードとしては Filmwerkstatt Düsseldorf という地元の映像施設からサポートを受けるようになったことがあります。ここでは映像機材や撮影スタジオを自由に使わせてもらえたんですが、その他にも、そこは定期的に映画を上映していたり、ワークショップをしていたり、美術展示があったりと、とても刺激的で面白い施設でした。

それらのイベントには、子供からお年寄りまでが集まってきて、ふらっと帰る人もいるし、夜更けまでお酒を飲みながら話たてる人たちもいて。映画を取り巻いてあれこれ言う人たちのコミュニティが凄く羨ましかったです。そして日本でもそういう風に映像文化と触れることのできる場所を作りたいと思い始めました。

ーー 石川県加賀市やNCL加賀を知ったきっかけは?

2017年の夏、明貫の仕事もひと段落して、ドイツから日本に帰ることを決めました。なんとなく東京ではないところに住みたいなという気持ちはあって、彼女の地元である石川県は移住先の候補のひとつでした。僕にとっても石川県に対するイメージは元々よくて、地元は海がないところだったので、海があることにまず惹かれていました。

そんな時にNCL加賀のメンバー募集の記事を見つけて、「これだ!」と直観しました。もともと映像をテーマにした募集はなかったんですが、自由枠で申込みました。

ーー 今はどんな暮らしを送ってますか?

海のある暮らしを満喫しています。今年の夏は数日おきに海に入っているんじゃないかな。最初に加賀を訪れた時は大雪の直後だったので、被災の話をいろいろ聞いて、やっていけるかすこし不安な部分もあったのですが、今では近所に知人もでき、リラックスして過ごせています。

NCL加賀の活動とは別に映像制作の仕事も受けていて、地元で開催するイベントの記録やお店のプロモーションビデオを作ったりしています。まだ移住してきて半年ほどですが、それでも頼んでもらえるのは嬉しいものです。

ー これからチャレンジしたいことを教えてください!

加賀に来てすぐに「16ミリフィルムの映写ワークショップ」というイベントを開催したのですが、このワークショップを通じて、加賀の郷土映像は公的にはほとんど保管されていない、という事実を知りました。これは加賀市に限ったものではなくて、世界中で今まさに取り組まれている問題なんです。僕としては、いずれ保存ができなくなるかもしれない地域の映像に対して、加賀市のみなさんが住民として、どう感じるか、というのを話し合う場を持ちたいなと思っています。

「そもそも映像を残す意味はあるのか」「残すとすれば、どんな映像を、どんな風に伝承していきたいのか」という質問を投げかけ、話し合う場が作れたらいいなと感じています。そして、その話し合いの場は一回きりで終わるものではなく、世代を超えて継続されるものにできないか、試行錯誤しています。

そのためにはまず映像の収集が何よりも大切です。ご家庭に眠る8-16mmフィルムや、VHS、Hi8テープ、レーザーディスク、DVDなど、思い当たるものがあれば教えてください。映像の内容も問いません。ホームビデオでも地元の何気ない風景を写したものでも大歓迎です。ピンとくる方は、ぜひご連絡をお待ちしています。皆さんのご協力をお願いします。

(インタビュー:2018年8月21日 場所:山代コドン


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石川県加賀市は、古来より湯場として多くの旅人を迎え、様々な文化を取り入れてきました。その歴史的な背景を現代へとアップデートする形で蘇らせ、アジア一帯を視野に入れた新しい文化経済圏を創出、各地のリソース=人材、知恵、技術、資源を流動・越境させていくことを目指します。
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