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知らない日々

今日も疲れた。
外にはほとんど出てないけど
一日中文字を打っていた。

連載中のショートショートをひとつ。
毎日新聞の4ページ目。
毎週水曜日。

新しいレシピサイトのオープニングイベントに
リモートで出演した。

思い出の料理について聞かれた。
そんなものないので
適当にごまかした。

am2:00
やっと自分の時間。
昔から夢だった文字書きの仕事。
楽しい反面疲れることも多い。

友達から貰った稲庭うどんを茹でる。
お湯が沸くまで鍋を見つめる。

ぷくぷくしたら
麺とオクラを入れる。
その間に
ビニールの手袋をして
長芋を磨る。

盛り付けて寝室の机に運ぶ。
食べながらTwitterを眺める。

自分のことは検索しない。
コマンドを使って日本の全部のツイートを
新着順で眺めていく。

lang:ja

本当に何も知らない人たちが
よくわからないことを思い思いに呟いている。

それをスクロールしながら眺めると
無の情報が大量に入ってきて
何もしていないより何も考えないで済む。

ふとした隙間にも
ショートショートやエッセイのことを
考えてしまう。
本当に頭を空にするには
逆に沢山の無意味な情報を入れるのがいい。

食べたら散歩に行く。
どこも店はやっていない。

それでもケーキ屋さんに向かう。

閉まって電気の消えた店内。
ショーケースがうっすら月明かりを反射している。
それをチェキで撮る。
なんでか惹かれる。
物悲しく昼間の明るい雰囲気とは無縁の暗い店内が心を引く。

帰ったらフォルダに入れる。

それからベランダでタバコを吸う。

自分の家。そのベランダが好きなのだ。
ロボットの灰皿。
初めて文章を書いて貰ったお給料で買った。
セピア色にくすんだ瞳で私を見ている。

ここはマンションの6階。
最上階。1番端の部屋。
階段状になったベランダは結構広い。
誰にも見られることなく
長い座椅子で寝転んで
月光浴をするのは気持ちがいい。
太陽は明るすぎる。

それで1日の終わり。

薄く世界と繋がりながら
私の世界を開拓する
今の生活は悪くない。

ただこの平穏を守る為に
私の為に明日も文字を書く。


私の血となり肉となります