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豊島美術館のはなし

『 忘れられない場所 』

って人それぞれあると思う。
思い出とともに一緒に大切にしていきたい場所
そんなところに出逢ったおはなし。

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1番仲の良い友人と一週間の四国旅へ。
大人の卒業旅行をしよう!と車で15時間かけて、辿り着いた香川県。

ゲストハウスのオーナーにオススメの場所を聞くと、

「 豊島美術館っていうところがあってね。何もないんだけどそこに行くために雨を待っていた子がいるんだ。」


日本語なのにイマイチ意味を理解できず、聞き返したけれどオーナーは「何もないんだけどね」とそれ以外なにも言わなかった。

なんだかこういうのってわくわくするなあ。
と思いながら、豊島を目指すことにした。




豊島美術館への道のり

木の間から溢れる光が綺麗な影を映す。
おもいっきり息を吸って、ふーーーっと吐くととっても心地よい。

道を抜けると美術館の入り口が見えた。
焼き物を焼く釜のような入り口。
中は見えない。


入り口にスタッフが立っており、
履き物を替えて、撮影はしないで下さい。
また、小さな展示物が足元にあるから気をつけてみて下さいねと言われる。


中はひんやりとしたコンクリートの
大きなドームが広がっていて、
天井には大きな穴が2つ空いていた。

大きな穴から覗く空が青く澄んでいた。

確かに何もない空間。
ガランとしていて、声が反響する。




よく目を凝らすと、
水がすーっと地面を動いている。

水が流れた先に、小さな水溜りがあって
そこに流れ着いた水がちゃぽんっとくっついて
水溜りが少し大きくなった。

すると、少し先の床から水がちょろちょろと
溢れ出している。

その少しの水がまたすーっと地面を撫でて、水溜りにくっついて、さらに大きく成長した。

また床からちょろちょろと溢れ出した水が楽しそうに床をなぞって、水溜りにくっつく。

すると、大きくなった水溜まりは背中を押されたようにおっと、動きはじめ、どこを通ろうか悩むように頭を細くしてするすると下を目指す。

細く長くのびた水溜りは、
吸い込まれるようにそこになかったかのような小さな穴にそろそろと入っていく。


♪ ♪ ♪

一定のリズムを刻んで、綺麗な高く優しい音で水は奏でながら小さな穴に吸い込まれてゆく。
ドームの建物の中にその小さな音が反響して、ほわんほわんと心地よい響きに変わる。

まるで生き物のように、生まれて、少しずつ成長して、出逢って、大きくなって、さらに空からの光を反射して、キラキラとゆらゆらと。





気付いたら1時間以上その光景を眺めていた。

“次は雨の日に来よう。”


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