2020年夏号・成人科8月23日 ナザレン希望誌ウェブ(テスト)版

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食物規定と新約時代に生きる私たち 
レビ記 11:1-47 (使徒10:9-16)

◯はじめに
 主は、アブラムに言われた。「…わたしはあなたを大いなる国民にし/あなたを祝福し、あなたの名を高める。祝福の源となるように」(創世記12:1-2)。神様はヤコブの子たちを、大いなる国民となるために、エジプトに住ませ200万人ほどの大民族とならせたのです。その後、出エジプトを通して、アブラハム (編注:アブラムののちの名)との契約によって、約束されたことは「わたしの宝となる。/あなたたちはわたしにとって/祭司の王国、聖なる国民となる…」(出エジプト19:5-6)ことだったのです。すなわち神の民となることです。それゆえにレビ記では、召し出された民と神様との交わりが現されているのです。
1、神様の交わり
旧約の民は、神様と交わるためには絶対的な条件があったのです。「わたしはあなたたちの神になるために、エジプトの国からあなたたちを導き上った主である。わたしは聖なる者であるから、あなたたちも聖なる者となりなさい。」(45節)とあるように、神にふさわしい聖なるものとなる必要があったのです。聖なる民のためにその生活には律法が必要とされ、十戒が与えられたのです。また祭司の王国となるために、祭司が執り行う祭儀が、彼らの生活の中心におかれたのです。それは彼らがいつも神の民であり、神様との係わりの中で生活していることを自覚出来るためだったのです。
2、聖なる者となるために
 自分達が神の民であることを自覚するためには、聖なるものと汚れたものとの区別が必要となります。神の聖なる民の生活のために十戒が規定され、祭儀によって他の民族と区別され、食するものも、聖なるものを食することによって、聖なる民であることを確認していったのです。聖なるものと汚れたものとの差別は、現代科学において、清いものが絶対的に清いものであり、汚れたものが清いものよりも劣るものであるとは言うことはできません。汚れたものが必ずしも人間の体に害するものでは無いのです。大切なことは、清い物と汚れたものとを区別することであり、汚れたものを汚れた物として食さないことなのです。
 確かに、清いとされるものは当時の社会の中では食物として受け入れられ、安全とされていたものであると思われます。また汚れたものは当時の社会の中ではあまり食さないものであったことでしょう。そこには人間の長い歴史の中で積み上げた知識から、衛生的に腐敗しやすく、汚染されやすいものが含まれているようには感じます。神様が神の民を健康的にも、民族的にも優れた民となり祝福を受けるために、汚れたものとして規定している物もあるように感じます。現代では衛生的も管理されており、国家的な行政管理が行き届いているので、市場に売られている物はどれも安心して食せますが、未開の地や、古い時代においては、非常に危険な食物が多くあったのです。健康で安全に生きて行くためには、安全な食物が規定される必要があったのかも知れません。神の民が祝福の民であるために、神が規定されたのでしょう。この区別は民の体の健康のためだけではなく、霊的な健康のために必要であったと思われます。
 汚れたものを食さないことによって、自分たちは清い民であると自覚できたのです。神の民は神によって清められたものであることを確信する必要があるからです。
3、新約のきよめ
 新約の聖書の救いは律法を遵守することから来る救いではなく、血統による契約でもなく、儀式による贖いでもないのです。創造の神の愛とキリストの十字架の贖いによって、得られる赦しの恵みなのです。清くなることによって得るものではなく、すでに贖われた恵みを受け取る時に来るものです。ですから救われ、きよめられるための規定は存在しないのです。
 神が造られたもの全ては清いもので、清くないものは何一つないのです(エフェソ2:15参照)。

編注:希望誌編集部として、律法が語る「清いもの」と「汚れたもの」の区分において、衛生的に腐敗しやすかったと断言することはできません。執筆の後藤先生自身、「…ことでしょう」「…感じます」という表現であって、決して断言しておらず、解釈のひとつの可能性として述べておられることとして受け止めていただきたいと思います。結論として、旧約の民にとって区分することが清い民であることを自覚へと結びつき、新約の光を当てるなら、キリストの十字架による贖いによってきよめられるという展開に対しては多くの方にとって異論はないかと思っています。このように執筆しがたい箇所を執筆してくださった後藤英夫先生に心より感謝致します。


設 問 なぜ、旧約聖書には、清いものと汚れたものとの区別が、食物にあったのでしょうか

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