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世界観#5 - Eyes

人間は弱い生き物である。

権力を手にした人は、自身の独占欲を制御できなくなり、利己的な行動を取るようになる。
それは周囲に伝播していき、広く腐敗が蔓延することで体制は崩壊してきた。

ここは東京。
世界一の時価総額を誇るオカモト財閥のお膝元であり、全権力が集中する中枢だ。

権力の集中過多による悪影響を危惧し、オカモト財閥や世界統一政府による”平和な統治”は長く続かない、と唱える政治学者たちは少なくなかった。

しかし、この街に生きる人たちは、腐ることなくとても真っ直ぐだった。
自身の利益だけを追求することはなく、世界を良くすることに重きを置いた。

その理由は、オカモト財閥によって進むべき道筋が明確に示されているからだ。

オカモト財閥という世界最高の組織の中で、自身が任されたことに対して真摯に取り組む。AIにより自動化された評価システムのおかげで、日々の姿勢と努力に見合った評価がきちんと得られる。
するとさらなる裁量を与えられ、出来ることの範囲が順当に拡大、報酬も当然上がっていく。
承認欲求と自己実現欲求が満たされ、心身ともにヘルシーな健康状態を保ちやすくなる。

かつて人々を苦しめた難解な問い、”どう生きるべきか”、そんなことに頭を悩ます必要はない。
”自分探しの旅”に行き、自分が何者で、何をすべき存在なのか、答えを求め彷徨う。
そんなことも必要ないのだ。

なぜなら社会は、オカモト財閥は、あなたが幸せになる道筋を明確に示してくれるのだから。

他者を羨む暇があったら、オカモト財閥を成長させることに尽くす方が、幸せへの近道だと皆が信じた。

人生のセーフティーネットを得た人々は、心からプライベートを謳歌できるようになった。
仕事もプライベートも本気で楽しみ、人生の幸福を追求する。

彼らは”Eyes”。
世界を平和で最適な形に導くもの。

この思想を体現する人々は、SATOJI直下のオカモト財閥を中心に社会に浸透していき、一般民衆にとって羨望の的となった。
今もその後を追う人が増え続けているのである。

しかし、一部では、人知れずその思想を悪用するものがいるという噂もあり、、、

(続く。。。)

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