通学はランドセル?~15年前の小学1年生だった私~

地元新聞の報道によると、ある市町村で小学生にリュックサック通学が認められるようになったそう。


この報道には私は「安心」と「怒り」の両方の感情が湧いた。具体的に以下に綴っていこうと思う。


私が小学一年生の冬のある雪が降り積もった日のこと。私の住む地域では冬でも積雪する日はシーズン中5日程度でそれほどの豪雪地帯という訳ではない。

朝、登校時、20分の徒歩登校が必要な私に、母はランドセルではなくリュックサックを持たせてくれた。雪もまだ降っていて、ランドセルでは雪道を歩くには小さな体の私には負担があり、中の教科書類が濡れるのも防水カバーでは限界があり、リュックサックの方がベターという判断だった。

当の私はと言うと、軽くて移動が楽ちんなリュックサックを背負って学校に行けるなんて夢みたいと喜ぶ反面、周囲の子どもや大人から何か言われないだろうかと不安で仕方なかった。

それでも母は「今日だけはリュックサックの方がいいから、先生も何も言わないはずだよ」と言うので、不安はあったがそのまま家を出た。

登校中はやはり周りの目が気になって仕方なかった。仲の良い同級生からは「どうしてリュックサックなの?それいいの?(許されるの?ずるい)」という言葉をかけられた。

ついに学校に到着し、玄関をくぐると、目の前には登校時の児童を見守る当番だった担任の先生が立っていた。いつも通り、元気に「おはようございます」と挨拶をした。1学年上の兄も同様にリュックサックで登校し、同時に到着したので、すぐ側にいた。すると、先生は兄と私をそれぞれの教室へは向かわせず、玄関に留まるよう指示した。

「なぜランドセルじゃないの?」

かなりきつい口調で、周囲にはまだ登校してきた児童が何人かいた。

私と兄は、母親に雪のためこうした方がよいと言われたと伝えた。しかし、叱責じみた説教は続いた。

その日は落ち込んだまま一日を過ごした。帰り道も人の目が気になって、まだ雪解けが完全でなく、足場の悪い道をやや小走りで帰宅した。

帰宅すると母親に学校でのことを全てを打ち明けた。母は兄と私に「先生にお母さんから前もって説明できず、あなたたちに恥ずかしい思いをさせて本当にごめんね」と謝ってくれた。「でも、絶対に悪いことはしていないと思うわ」そう言っていた。

今回の報道をみて、母と私は15年前のあの日のことを振り返った。「担任の先生宛のメッセージを一筆書いて持たせれば良かった」そう母はまた言っていた。

今回の報道タイトルは「ノーランドセル通学が話題」。この状況って、そもそも話題になるようなことなのか?

令和という新たな元号の時代にも突入し、社会のあらゆる現場が変化しようと取り組んでいる中で、なぜこれ程までに学校という教育現場が「変わることが出来ない」かずっと不思議に思ってきた。

あの日、リュックサックを背負った私と兄を叱った先生は、もう覚えていないかもしれない。そもそも、私の通っていた公立小学校では校則でランドセル通学を求めてはいなかったのだ。

私はあの日から6年間、ランドセル通学をした。ランドセルに罪はない。けれども重くて、収納力に欠けるあの鞄を憎む瞬間も多々あった。

「通学鞄に選択肢を」一人一人が望む鞄で通学する。学生以外には当たり前に認められているこの選択肢が一秒でも早く、日本中の子ども達に与えられることを願っている。

最期まで読んで下さった方、何か感じられることがありましたら是非コメントをお寄せ下さい。



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