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今夜のお供は豚キムチ

よし、君に決めた。
精肉売り場の一角で豚ロースを片手に独りごちた。食べ頃キムチの相方を探していた。

キムチは発酵が進み、酸味が増すくらいが料理に合う。特に油を使った炒め物。
最初にニンニクをひとかけスライスし、多めの油で炒めていく。いい香りがしてきたら豚肉をじゅわっ。塊肉を五ミリくらいに厚く切り、軽く塩して、こんがり両面焼き目をつける。この時点で、もう美味しいに決まっている。くぅくぅ腹の虫が鳴る。

しかしそこをぐっと我慢して、焼けた肉を一旦皿にあけるのだ。フライパンに残った肉汁混じりの調味ソースに、今度は長ネギの青いところをドサッ。斜め切りされた緑色は火が通るにつれ鮮やかに色を変え、しんなりとカサを減らしていく。繊維が固いから持て余してしまいがちな食材だけど、今回はむしろその触感が役に立つ。
寝かせたキムチを味見すると、きゅうっと酸っぱさが舌に響いた。よしよし、いい具合。
脳内に味のイメージが広がっていく。たっぷりキムチを投入し、休ませた豚肉も戻してしばし、全体に汁がとろりと絡む程度に水気をとばしたら完成。

いそいそと冷蔵庫から缶ビール。むわりと御馳走の湯気を顔に受けて、いただきます。
ぷしゅっと軽い音を立ててプルタブを引く。ぐびっ、まず一口、冷えた炭酸、そして強めの苦みがじわっとしみていく。さあ、ゆらゆら湯気の立つ豚キムチ、肉とキムチをバランス良く、はふっ。白菜の白いところがぱりっと小気味良く音を立て、噛んでいくときゅんと酸っぱい。とろん、炒められてとろっと葉の部分が柔らかく、ピリッと煮詰まったタレが刺激的。休ませてジューシーな豚肉のあまみ。今日はロース肉だったけど、豚バラにすると脂身がサクサクしてコッテリ美味しい。酸味と辛みと肉のうまみ、そこへカリッしゃくっと青ネギの香味、ぐんと複雑な味に引き上げる。ぽりっ、じゃく、じゃき、カリッ、ぎゅっ。ニンニクとニラが強く香り、濃い味付けの口をしゅわわわ…っ!とラガーが洗う。

暑くなり始めた初夏の夜、しっかり辛口のラガーの晩酌なら、ピリッとろりの豚キムチ。

#今夜のラガーのおとも