母が亡くなった

 看護師さんが先生を呼びに行って2〜3分後に女性の先生がやってきた。

 どうやら主治医ではなく、代理の先生らしい。

 またもや、よくテレビドラマなどで見かける心音をきくのと、目の瞳孔を見るのをした後これまたよく見る「◯時◯分、死亡を確認しました」というようなのがあった。

 義父は母の名を呼びながら、感謝の言葉を話しかけていたが感傷に浸る事も遮られるようにして看護師さんに

「着替えさせますけど、何か着せたい服はありますか?」

 と言われる。着せたい服と言ったって、車で片道20分強の場所だし今から帰って探すわけにもいかない。

 そのような事を伝えると

「じゃあパジャマを買ってきてください」

 と言われる。

 気を利かせてくれたAくんのお母さんが買ってきてくれるというので、それに甘えた。

 そうして、母に繋がれた機械を外したり着替えさせたりするために部屋を出るように言われた私たちはいつもの待合所に向かった。

 いや待てよ、私はただ待ってるだけではいけないと思いだし、電話室に向かった。

 母が亡くなってまだ5分ぐらいだったが、葬儀屋に電話しないといけない。

 しかもまだ仮決めの状態で、葬儀社に詳しく話をきいていなかったのだ。

「亡くなると病院はすぐに追い出される」と話によく聞くので、急がなければと仮決めの葬儀社に電話して費用や段取りを聞いたのちに決めようと思ったら、親切な物言いであるものの、電話先の受付の人は、

「そういった詳しい事は私たちでは分かりかねますので、専門の者をそちらに向かわせます。その者でしたら、お客様の質問にもその場で答えられると思いますのでまずは会ってから段取りを決めて頂けますか?」

 と言われる。

 この葬儀社が私の希望とズレるようであれば、また別の葬儀社にも問い合わせようと思ったが、とにかく来てくれるというなら話をきいて、それから断ればいいやと思い待つ事にした。

 その電話が終わると看護師さんに、葬儀社の手配はどうなっているか聞かれる。

 早く無いか?私、どんな親不孝者やと突っ込まれそうなぐらい、母が亡くなってすぐに電話してるというのに。

 それで今電話で言われたように、葬儀社の人が来てから相談の上になると答えると

「何だか、すごく変わってますね、とにかくこの後、霊安室に移動しますので葬儀社の人が来たら分かるようにしておいてくださいね」

 とつっけんどんに言われる。

 はぁ?何かすっごく感じ悪っ!

 そういえばこの看護師さん、初日のオムツの件を話しに来た人だ。

 その時も、感じ悪ッ!と思ったけど、お世話になるんだろうしと我慢したんだった。

 義父は覚悟していたと言う割には、かなり動揺と気落ちをしていて何も出来そうにない。

 やはり私が動かねばと、その後他の電話すべきところには連絡を入れたのだった。



毒親である母との思い出も連載しています

https://kakuyomu.jp/works/1177354054898543404

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