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犬・猫の殺処分から考えるーー自分の手で直接解決できないことを知る意味。

 わたし自身は今、犬や猫を自分の家に迎え入れることができません。本当は一緒に暮らせるワンコがいるといいなと思ってはいます。けれど、あっちこっちと長期で留守にすることも多いうえ、自分自身がどこへ骨を埋めるつもりなのかも分からないため、家族に迎えることは無責任だなと思っているのです。
 とはいえ、近隣の保健所や犬・猫の譲渡を進める市民団体のHPをチェックしてしまいます。彼らの殺処分までの期限を見てハラハラしながら、「誰か家族として迎えてほしい。良い人たちと巡り会ってほしい」と、願うばかりです。けれど、すべての犬・猫が引き取られていくわけではありません。いつもチェックしていた犬・猫に期限がきてしまったら、毎度大きな無力感に襲われ、申し訳ない気持ちになります。

 日本では、殺処分されてしまう犬・猫の数は毎年減少しています。平成30年度の犬・猫合わせた殺処分数は38,444頭となりましたが、平成16年の394,799頭の10分の1以下に。30年前までは100万頭を超えていたことを考えると、この30年間でかなり減ってきたといえます(環境省_統計資料)。

環境省_全国の犬・猫の殺処分数の推移

 殺処分数の減少は、単に殺処分してきたことによる影響だけでなく、犬・猫との関係性の変化や、譲渡を促す市民団体と保健所との連携などが進んできたことも一因でしょう。同じ環境省のサイトを見ると、返還・譲渡された割合が増加していることが分かります。30年前は2割程度だった返還・譲渡割合が、ここ数年は6割近くまで上昇しています。
 譲渡を進める市民団体はもちろん、保健所のHP等の作り方も変化してきたと感じています。以前であれば、犬・猫の写真の写し方が正直イマイチでした。暗くて狭いコンクリートの檻の中で、なんなら少しブレていて、「家族に迎えたい」という気持ちをくすぐり切れていない感じでしたが、最近はそれぞれの魅力を引き出そうと工夫が凝らされています。
 例えば返還・譲渡率が96%(平成30年度)の長野市では、フェイスブックを使って、保護猫の動画をアップしています。どんな猫か静止画以上に分かりやすく、関心を引き可能性が高まりそうです。ただ動画での紹介数が限られているので、もうちょっと、紹介してくれる数が増えるといいなと。今後に期待。

 保健所だけでなく、やはり保護された動物の返還・譲渡の確率を大きく上げているのが市民団体や個人の方々の取り組みによるものだと思います。例えば、こちら。北海道東部の中標津町、別海町、標津町の保護犬・猫の情報を発信している「いぬねこ保護活動の記録【終わらない映画】」は、フェイスブックページで同地域の保護犬・猫についてまとめられています。それぞれの個性や魅力が伝わる文章もいいのです。その分こちらも情が湧いてしまうので、新しい家族が見つかった時の安堵感はすごいのです。
 それだけでなく、保護された犬・猫のその後もお知らせしてくれます。その後があると、保護犬・猫を迎えようと検討している人には安心材料になりますよね。

 ちなみに、環境省の統計データ(平成30年度)によると、保護犬と保護猫が殺処分される割合は、犬が2割、猫が4割です。猫が犬の2倍、引き取り手がなく殺処分されています。そもそも保護される数は、猫が犬のおよそ3倍でした。猫は犬よりも繁殖力が高いのが大きな原因だと考えられます。猫は年に2、3回発情期があり、一回の出産で3~7頭の子猫が生まれます。家の外に出していれば、知らないうちに外で交尾している可能性もあるようです。
 他の多くの国では、野良犬、野良猫、野良牛、野良ヤギなど、道端にいろんな家畜動物がうろうろしています。野生動物との関係を考えれば、もちろん限度があると思いますし、一概に良いとは言い難い地域もあるのですが、人が多く住む街中であれば平和な感じがして個人的には好きです。ただ、日本では野生の犬・猫の存在が許されないのが現状です。殺処分をなくすためにも、それぞれの動物の性質を分かったうえで家族に迎えたいですね。

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 わたしができることと言えば、こういった皆さんの努力に便乗して、さらに別の人にお知らせすることくらいです。なんでもかんでも良いと思ったらすぐに広めるということではなく、内容をしっかり読むことが欠かせないと思います。どんなに良い内容であっても、自分が他の人にお知らせしてもよいくらい自分がそのサイトを信頼できているのか、一旦考えるようにしています。たいていはサイトで言っていることの元の情報を自分で確認するようにしています。

 自分では直接、保護犬・猫などの動物を家族に迎えるということで彼らの命を救うことはできません。時には救われない命の現状を、知らされることもあります。それはなかなか辛いことですが、だからと言って見ないようにすることは何の解決にもなりませんよね。
 命や尊厳に関わることを知ろうとする時はいつでも、胸の苦しさを取り去ることはできません。それでも鈍感にならないように直視し続けることで、解決の糸口がひらめくかもしれない。情報を可能な限り精査して、他の人と共有することで、その人が直接動いてくれるかもしれない。そんなことを期待しながら、今日も明日も、身の回りや世界中で起きていることの苦しい部分こそ、知りに行こうと思います。

<参考資料>

・環境省「統計資料 犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況(動物愛護管理行政事務提要より作成)」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html(2020年5月20日閲覧)
・長野市「長野市保健所 動物愛護情報」FBページ https://www.facebook.com/watch/naganosi.doubutuaigo/(2020年5月20日閲覧)
・いぬねこ保護活動の記録【終わらない映画】FBページhttps://www.facebook.com/owaranaieiga/(2020年5月20日閲覧)

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