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ウユニ塩湖紀行②

ウユニ塩湖に張り付いて撮影すると決めてからは準備に追われる日が続いた。

ただ、旅仲間にいくら話を聞いても、インターネットで調べてみてもウユニ塩湖で1ヶ月もの間、生活するのに役立つ情報は全く見つからなかった。途方にくれたが、仕方がないので自分の経験や想像力を働かせ、頭の中で現地での生活をできる限りリアルに再現して持っていく荷物を選定するしかなかった。

標高は4,000m近いので1日の寒暖の差が激しく、たった1ヶ月の滞在でも半袖Tシャツからダウンジャケットまで揃えなくてはいけない。カメラの電池を充電するために防水のソーラーパネルも必須アイテムだし、三脚などの撮影機材や長靴にいたるまでなるべく小さくなるものを探した。

同時に1ヶ月間で必要な食料と水分量も計算した。ウユニ塩湖の水は海水の5倍も塩分が濃いので水分としては全く期待できず、飲み水や調理に必要な分、さらに体を拭いたり歯を磨いたり、生活にかかる水を全て近くの村から持って行かなくてはいけない。もちろん、食料だってそうだ。生きていくために1日何キロカロリー必要か念密に計算しメニューを考えた。補えないビタミンはサプリなどでしのでいかなくてはいけない。不幸中の幸いなのか、僕は食べられば何でも大丈夫だし、1ヶ月同じ食べ物が続いたって苦にならないことが少しだけ作業を簡単にした。

荷物を背負って歩くこともあるから可能な限り軽くしたかったが、結局キャンプ用品や撮影機材を合わせると40kgを超えてしまった。けど、準備が終わって出発が近づいてくるとそんなことはとても小さいことのように思え、自分が世界中でまだ誰も見たことがないウユニ塩湖を撮影するんだ、と想像すると気持ちは高まる一方だった。

ウユニ塩湖に最も近いウユニ村まではアメリカ経由で飛行機を3回乗り継ぐ約40時間の旅だ。たった40時間で地球の裏側のさらに辺境の村まで着くなんて便利な世の中だな、なんて思うのは旅人的な心理かもしれない。

2016年、1月25日。結局、家を出る直前までパッキングをしてしまい、バタバタの出発となったが、なんとか出国の日を迎えることができた。成田空港でアメリカ、ロサンゼルス行きの飛行機を待っている間、何気なくパンパンに膨らんだバックパックに目をやる。

もう10年使っているバックパックはアフリカ人にゴミ袋みたいだと笑われたこともあるほどボロボロだ。世界一周も、ヨーロッパ周遊も、南米だってこのバックでもう3回も行っている。本当にいろんな場所に一緒に行った、もはや旅の相棒と思えるバックパック。ロストバゲージされがちでご主人を置いて2、3日ひとりでどこかに行きがちなのがたまにキズだけど、使っている時間が長いだけに自分の背中にもぴったりとフィットするし、いくら背負っても体が痛くならない。

今回もよろしく、ロストバゲージだけは気をつけてな、なんて思っていると搭乗開始のアナウンスが流れた。

さぁ、出発だ。高揚した気持ちを抑えられない僕を乗せた飛行機はぐんぐんと上昇していった。

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