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暴力と愛

 どんな平和主義者でも戦わねばならない時が来るはずだ。陳腐な問いかもしれないが、例えば今あなたか愛するものが他人によって目の前で奪われようとしていだとする。そうしたらあなたはまずこれは自分の物だと主張して相手を説得するだろう。しかし相手も同じことを言い出したらどうだろうか。それでもあなたが我慢強かったら諦めず相手の説得を試みるかもしれない。だが相手があなたの言う事をまるで聞かず、暴力であなたの愛するものを奪ってきたとしたらどうしたらいいだろう。そうなったらあなたも不毛な説得をやめて暴力に立ち向かうしかないのではないか。愛するものを守るために。

 そんな理由で彼らは互いの愛するものを守るために激しく拳をぶつけ合って戦っていた。これを若気の至りだと笑う人がいるかもしれない。だが彼らは互いに愛するものを守るために命がけで戦っていた。顔を真っ赤に腫らして掴みかかり愛するものの名を叫んで命懸けの闘争をする彼らは真剣そのものであった。この果てしない戦いはいつ終わるのか。若い彼らは泣き叫び愛するものを奪い合っていた。

「これは僕のカードだぞ!お前なんかに渡さないからな!」

「うわぁ〜ん返せよ!それは僕のお金で買ったんじゃないか!」

「マサくん、たっくん!二人ともいい加減にしてカードなんかで何で殴り合いの喧嘩してるのよ!もう呆れたわ!カードママに寄こしなさい!破り捨てやるから!」

「ママ酷いよ〜!」

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