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めもらんだむ

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A Collection of Random Memoranda / 不定期更新
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【めも④】素通りするほど大事な?

それはすでに過去のものだ、と言ったとき、その言葉は、そのものを過去に追いやって否定するように見えて、それが古びていくものとして今あることを、実は肯定している。どちらの考えも、過去になることさえないものには触れていない。 法の抜け穴をつくような犯罪じみた方法でなにかが成し遂げられたというとき、とっさに、そのような方法がこれから先、すくなくとも禁じられるまでのあいだ、何度となく繰り返されるだろうという予感が起こる。まるでそういったことをする「予備軍」がそこら中にあふれているかの

【めも③】いかにしてめざすものにたどりつくか

自分のめざしているものにどうやってたどりつけるかわからない。それこそがおそらくは最大の武器であり技術だ。自分の駆使しているものの内実を知らないことが、それを駆使するためにもっとも必要なこととさえ言えるかもしれない。ある競技の選手がその技術の真髄を発揮しているそのときに、自分についてほとんどなにも意識していないのと同じように。あるいは研ぎ澄まされた意識はほとんど無知と似通うのだ。あるいは、私たち自身が徹底して無知を貫くとき、それと引き換えに私たちのどこかがかわりに全能になるかの

【めも②】ふたつでひとつであるもの

自分たちの意見がまったく正反対だと思い合って、反発し合っている二人が、感じている「ところ」はまったく同じということがどれだけ多いことか。そして両者は、自分のほうを本物だと信じたいがために、憎み合うことになる。だとすると、感じていることは、それを感じているだけでは本物になれないのだ。それと呼応するかのように出力された別の表現と(無理矢理に?)一対にされて、戦いをくぐり抜けて、はじめてその「感じ」は本物とされる。勝ち残った表現のそばで、その表現と二つで一つとされて。本来なら無関係

【めも①】触媒、イメージ、繰り返し

思わず読み入ってしまう文章のなかには、ついその題名さえ忘れてしまうようなものがある。 ふと息をついて、何を言っていたのか、この文章は何なのかと、思い出したように題名に帰ろうとする。 きっとその文章は、題名を忘れさせるほど私たちの内部に入り込んでいたのだ。あるいは私たちの内部がそこで語っていたのだ。 そのとき、文章は触媒だった。私たちと私たちの内部とのあいだの。 触媒は、それ自体意識されないことによって、触媒となる。 ある文章が触媒になるというのは、文章が後景に追いやられて