見出し画像

それでも、ポロイチのスープは必要なんです-西加奈子「ごはんぐるり」を読んで

本を読むのが好きだ。作家、なのでもちろんだが、特に小説を読む際、私が必ず立ち止まってしまうところがある。食べ物が出てくる場面である。                     「ごはんぐるり」-西加奈子 p.26

このページを読んだ瞬間、「もしかしてこの人、私と似てるかも…」なんておこがましい考えが、 直感的にスンッと私の脳裏をよぎった。そもそも自分、小説家でも何でもないくせに。


これは、小説家・エッセイストである西加奈子さんの、「ごはん」にまつわる様々なエピソードが収録された、超面白いエッセイに出てくる一文である。

思わずクスッと笑ってしまうような西さんの食に対するこだわりや、「えっ?」と驚くような海外の食事情など、夢中で読み進めてしまうエピソードがたくさん。特に「食べること」や「料理すること」が好きな方であれば、誰でも読んでいて楽しい気持ちになれる作品なのではないだろうか。

いろいろな作家さんの食エッセイを読んできたけれど、その中でもダントツで読み返してる回数が多い一冊。

なんでかって言うとね、もうね、




読めば読むほど共感しかない




これに尽きる。

というのも、このエッセイを読んで真っ先に抱いた西さんへの印象は「きっとこの方、かなりガサツで、適当なタイプなんだろうな」だった。つぎに「やっぱりこの人、私と似てるな」と、改めて思った。

…いや、すみません。というか、西さんの書かれた本をこれしか読んだ事のない新参者(読めよ)が、こんなブイブイ分かったような口聞いて、ほんとすみません。西さんと西さんファンの方々、どうか寛大な心で許して。

そして、この本を読んで最も大共感した西さんの特性。(?)それは、彼女の「悪食」についての話にある。

普段私は、スナック菓子やアメリカンドッグなんかを、食べない。コンビニでも、スナック菓子の棚はほとんど素通りするし、レジ横に置いてあるアメリカンドッグを食べたい、と、思ったこともない。        (中略)                                              実際、車中で食べるスナック菓子は飽きるし、パーキングエリアで買うアメリカンドッグは油っぽすぎる。それでも、それらを食べる雰囲気が楽しくて、もりもり食べてしまう。旅行の道程で何かを食べることに、私は特別な楽しさを感じるらしいのだ。                  「ごはんぐるり」 p42                                             





わーーーーーーかーーーーーるーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!バリわかるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


マジでそう。まさにそう。

これについては、私にもエピソードがある。


私が小学生の頃、毎年夏休みのキャンプが恒例だった我が家。ハッキリ言ってガッツリインドア派の私としては、完全感覚outdoorのキャンプなんぞ、別に行きたくない。家で寝てたい。

それでも毎年、なんやかんや前日からウキウキと楽しみにしていた理由は、道程の朝ごはんに、高速を走る車中で食べる''朝マック''や''コンビニごはん''が大好きだったから!

ただ、私の場合は、「当時食育が徹底していた神経質気味な母によって、普段はファストフードやコンビニごはん、インスタント食品などが一切禁止されていた」にも関わらず、この時だけは食べることを許してもらえるという''非日常感''が嬉しかったのである。だから、日常的にそこまでジャンクフードを求めることのない西さんとは違い、いつもスナック菓子やアメリカンドッグを食べたがる、いわゆる子どもらしい子ども…


がそのまま成人し、全く同じ感情のまま本作に大共感している訳であります。


いや、マジで。大人になって自由に何でも食べられるようになると、逆にあまりジャンクフードを選ぶことが少なくなってきて。なのに、この年になっても尚、旅行の道程、嵐の''Love so sweet''を聴きながら、高速を走る早朝の車内で窓の外を眺めつつ食べる、ハッシュポテトとフィレオフィッシュ、そして家族3人で分けて食べるチキンナゲットの何と美味しいことか…!(しかも早朝だと、タイミングが合えば揚げたて熱々が食べられる可能性大!)

いざ現地に着く頃には、すっかりお腹も心も満杯の状態。目的の名物料理を食べ切れず、父に食べてもらうというシステム。

いや〜もう、一連の流れに共感しかない。


ああ、なんか楽しくなってきた。さらにもう一つ、私が全力で共感した西さんの「悪食」がある。

私には、旅や移動の興奮によらない、日常的な悪食がある。「べさべさに伸びて、汁気がなくなった麺類」である。              小さな頃、母に作ってもらう「サッポロ一番 みそラーメン 溶き卵入り」が大好きだった。だが、本当に好きだったのは、どんぶりから麺をすくって、何も入っていないおわんに入れ、ぐるぐるかき回して食べる「サッポロ一番 みそラーメン 溶き卵入り 汁気を飛ばして冷たくなった麺だけ」であった。どんぶりのスープは、全部残した。  ごはんぐるり p.45

もう私、ここのページが好きすぎて。

ちなみに、私の''ポロイチ悪食''は、規定量のお湯で作ったポロイチを、スープが無くなるまで永遠に煮詰め、そこに溶き卵を回しかけ、麺をグダグダにして食べる「サッポロ一番 塩ラーメン 溶き卵入り 全ての汁を麺が吸って味が濃くてグダグダのやつ」である。伝われ。

この他にも、西さんによるマニアックな麺類の食べ方がいろいろ書いてあるけれど、とりわけこのサッポロ一番に関しては、共感してしまった自分が少し悔しい。

だって、改めてこうやって文字にして読んでみると、「わ、わたしはこんな大罪を犯していたのか…」という気持ちになる。嘘です。大罪ってほどではないけど、でも、「汁気を飛ばして冷たくなった麺だけ」のところで、ほんのちょっとの仲間意識と罪悪感を感じたのは、ここだけの話。(笑)


こんにちは!最後まで読んでくださり、ありがとうございます🥺💕             読書感想文…って言っていいのかな、これ……    でも、初めて書いてみたけど、こうやって好きな本について語るって楽しいなあって思いました。これからも罪悪感を調味料として加えつつ、私はポロイチをグダグダにして食べていく所存です。それと、取り敢えず今月中には「あおい」と「サラバ!」、読んでみようかな!(みようかな!)
























この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?