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ロケットを導くために求められるのは、運動方程式を自在に扱う力

こんにちは、インターステラテクノロジズ(以下、IST)広報チームです!

ロケットがどのようにして目標の地点まで飛んでいくのか、不思議に思ったことはありませんか?
電車は線路が敷かれており、空を飛ぶ飛行機にはパイロットがいる。ロケットには線路もパイロットもありませんよね。
飛んでいるロケットの動きを制御するGNCエンジニアとして活躍する、IST池本和史に話を聞きました!(GNCとは何か、は後ほど説明しますね)

今回はMOMOの内部構造図で言うと、主に

20200410_MOMO機体内部構造人物サイズ比較

「ロール制御用ガスジェット」「尾翼」「姿勢制御機構」の話をします!

「科学技術の発展」のため自動車業界から転職

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今日は東京支社で話を伺っています!インタビュー、よろしくお願いします。
まずは池本さんの経歴を教えてください。

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池本 和史(いけもと・かずふみ)
1990年生まれ。鳥取県鳥取市出身。2015年に東京工業大学 大学院 理工学研究科 電子物理工学専攻を修了後、株式会社本田技術研究所に入社。2018年にISTに転職し、現在はGNC、飛行安全および機体システムを担当。

以前は自動車業界に勤めていました。
燃費や排気ガス規制値などの条件を満たすように、自動車のエンジンの制御パラメーターを決める仕事をしていました。

ISTは学生の時から気になっていて、自分から連絡して大学院生の時にお手伝いさせてもらったことがあります。
その時にロール制御を手伝いました。まだISTの事務所が六本木にあった頃ですね。

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画像:姿勢制御拘束飛行実験機「HOP」

前職でやりたいことが思うようにできなくて、転職したいと思っていたんです。どこに転職しようかと考えた時に、ISTが浮かびました。就職してからもずっと外から応援していて、苦しんでる様子を見て、自分も力になれたらと思ってISTに転職することを決めました。

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池本さんが手伝いに来た当初はインターンシップ制度もなかったですよね。

池本
元々、科学技術が発展するようなことに携わりたいという思いがありました。
その中の一つが宇宙産業。宇宙産業が発展するには人工衛星が必要不可欠ですが、その人工衛星を上げるロケットを確実に打上げられるようにしないといけないですよね。まずは輸送手段に力を入れるべきだと思うんです。
国主導のロケット開発と比べると、低価格かつ高頻度で打上げられるISTが一番宇宙産業を発展させられると思って決めました。
個人的には仕事内容より事業目的が自分のやりたいことと合っているかを重視しています。正直、宇宙でなくても良いんです(笑)

大きなきっかけとしては観測ロケット「MOMO2号機」の打上げ時、離昇直後に推力を失い落下し燃焼したことです。打上げレポートを読んで、手が足りていなさそうだなと感じましたね。

浦安に配属になって、最初からGNC担当でした。「宇宙品質にシフト MOMO3号機」の時ですね。当時、僕が入社するまでは社長の稲川さんが担当していました。

ロケットを”導く”


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GNCエンジニアはどんなことをしているのでしょう?

池本
GNCは「Guidance Navigation Control」の略です。日本語だと「誘導・航法・制御」とよびます。目標軌道に飛ばすためのシステムですね。
安全にロケットを飛ばすには、軌道を事前に計算し、その通りに進ませなければいけないのです。

お話しする上では、「N・G・C」の順番が分かりやすいです。

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まず航法のN(Navigation)は、ロケットの位置や速度、姿勢を推定する機能です。GPSやレーダー、ロケットの中のジャイロセンサーや加速度センサーを使って、ロケットの状態を推定しています。

誘導のG(Guidance)は、ロケットの位置から目標の軌道までにどういう経路を通るかというのを誘導する機能です。
車のカーナビに例えると、自分の位置推定が航法にあたり、目的地までどの経路を通るのかというのが誘導にあたりますね。

制御のC(Control)は、誘導で目標としてるものに合うように、調節する機能です。ガスジェットやジンバルを使います。

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なるほど。MOMOではどのようにしているのでしょうか?

IST豆知識
現在ISTが飛ばしているのは『MOMO』。目標値高度100kmの宇宙空間に到達し、海に着水する弾道飛行を行う観測ロケットです。
現在開発している『ZERO』は、MOMOと違い高度500kmの地球周回軌道上に100kgの超小型人工衛星を運ぶロケットです。
宇宙空間への到達が目標である『MOMO』に比べて、地球周回軌道に載せる必要がある『ZERO』という違いがあります。

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池本
MOMOの航法では、位置や速度はGPSで測っていますが、それは制御するためには使っていません。地上に送って、位置や速度を地上で見るだけですね。
制御に使うための航法としては、MOMOではジャイロセンサーを使って、姿勢を推定しています。
位置や速度の推定を行う加速度センサーは、制御には使用していません。
なぜかというと、MOMOの場合は高度100kmという目標値を超えることが目的であって、軌道がずれることに関しては比較的寛容なので、位置や速度を厳密に管理する必要はないんです。
ZERO(軌道投入ロケット)の場合は軌道に乗せるためには位置や速度を厳密に制御しなければいけないので、MOMOとは違ってきます。

MOMOの誘導に関しては、プログラム誘導というものを使っています。実はかなり単純で、機体の目標姿勢を予め、ある時刻はこの姿勢、次の時刻はこの姿勢、というように時系列で決め、それに合うように飛行中に制御信号を出しています。
速度、位置の要求精度が高くないからMOMOはこれで良いんです。
ZEROでは、刻々のロケットの位置や速度から、この後の機体姿勢をどう動かせば良いかというのをフライト中に都度計算させます。

飛行中は一瞬の判断の連続

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前職の経験で活きていることはありますか?ISTに入ってから勉強したのでしょうか?

池本
前職では制御系の設計はあまりやっていませんでした。メインの仕事としては、エンジンを回してデータをとっていて、制御は別チームが担当していました。
高専や大学で勉強した制御理論、制御工学が役に立っていますね。あと、物理学を学んだおかげで座標変換が自由に扱えるようになり、役立っています。

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池本
ロケット自体の打上げ成否以上に外部に対して被害を出さないという安全対策はとても重要です。ISTでは安全に対しては入念に対策を行っています。その中でも万一、飛行中に異常な飛行をしたとしても周囲に被害が出ないようにする「飛行安全」と呼ばれる業務として担当しています。MOMOは機体から送られてくるGPSの位置速度情報を使って地上側で機体の落下点を推定しています。その落下点が、事前に調整している区域内を外れないようにしなければならず、設けている飛行中断線を超えたら手動で緊急停止をしなければなりません。
内閣府宇宙開発戦略推進事務局が定めている落下区域に対して、ISTが設定している飛行中断線自体に余裕を持たせていますし、GPSが正常に働かないことも想定しています。姿勢に関してもリアルタイムで数値を表示していて、上限下限を設けているので、それを超えたら手動で停止させています。

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宇宙空間に到達した「宇宙品質にシフト MOMO3号機」のときは司令所にいらっしゃいましたよね。その時ってどういうお気持ちでしたか?

池本
実はかなりヒヤヒヤでした、責任重大なので・・・(笑)
うまくいった時に誤って止めてしまっても問題だし、止めなければいけない時に止められなくてもまずい、一瞬の判断なので緊張しますね。

燃焼終了以降の推定が本当に合っているか不安だったんですよね。40km以上の空気抵抗計算が合っているのか、100kmまで行くか心配でした・・・到達した時はホッとしました。

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上空の風の条件から、姿勢を決めるのも池本さんが担当していますよね。

池本
そうですね、「誘導」と「制御」の分野の業務です。気象条件を見てその都度設計し直しています。

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画像:上空風予報のデータ


3日前にも計算しますが、3日もあれば予報が変わってしまうので参考程度にしかなりません。
実際には15時間以内の予報を見て設計しています。
なので打上げ前はそれに合わせた生活になっていますね(笑)
上空風でのGO/NO GO判断も私がしています。
「NO GO判断したけど後から見れば大丈夫だった」となると勿体ないように思えるんですが、安全をとる方が絶対に大切なので、仕方がないところです。

運動方程式を自由に扱える人を募集中!

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GNCで求める人材はどういった方でしょうか?専門知識は必要ですか?

池本
制御工学自体は難しい物ばかりではないので、勉強すれば身に付くと思います。宇宙業界で働いていたバックグラウンドがなくても大丈夫です。
ただ、三次元的であることなど、ロケット特有の難しいところもあります。
物理的なロケットの運動を自分で計算出来る必要があるので、運動方程式を自由に扱える人が良いですね。

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そういう方が多い業界などあるんでしょうか?

池本
業界はあまり関係ないかもしれません。例えば、航法だと衛星の方が難しいでしょうし、ロケットの方が単純なものは沢山あると思います。
なので、GNCに関してはバックグラウンドにはこだわりません、ロケットの開発経験は必要ありません。スキルで判断します。
ただ、全ての実務経験がある必要はないですし、詳しくなくても大丈夫です。「航法は詳しいけど、誘導はあまり分からない」という方でも問題ありません。数字を扱うことを楽しめる人、得意な人はいいと思います。

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厳しいことを言うと、学生の方は博士レベルじゃない限り研究内容はスキルとして見ないと思います。学生はポテンシャルを期待しての採用になります。
研究と開発は少し違いますよね。研究は理想状態で考えがちなので、実際に使おうとすると機能しないことも多いんですよ。開発上の制約を考えて、役に立つものを作るということは、実務経験で身に付くものだと思っています。

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最後に、働く上でのISTのおすすめポイントを教えてください!

池本
裁量の自由があるので、自分で考えて自分で作りたい人には楽しいと思います。
逆に与えられた仕事をただただこなすタイプの人には難しいかもしれないです。
そういうスタンスの人にはそもそも仕事がこないですけどね。

GNC以外にも手が足りていない分野はあるので、一緒に働く仲間を求めています!

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GNCエンジニアの募集要項はこちらです!

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インターステラテクノロジズでは、一緒に宇宙を目指す仲間を募集しています!詳しい募集要項はこちらをご覧ください!

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10月29日に、オンラインミートアップを実施します!
お酒を片手に、気軽に担当社員のクロストークをお聞きいただけます。
質疑応答のお時間も用意しておりますので、普段気になっていることなど、ざっくばらんに質問してください!

第二回のテーマは、「自動車・造船・航空機 出身メンバー」
■日時:2020年10月29日(木)19:00~20:30
■定員:200名

かなり驚かれますが、ISTは他業界からの転職メンバーが8割。ロケット開発経験がない中で入社する社員の方が多いのです。

就職のための会社説明会でも「ロケットの知識や開発経験がないと入社できませんか?」と質問をいただくことも本当に多いです。

今回はそんな「他業界からの転職」に焦点をあて、特に自動車・造船・航空業界からISTにジョインしたメンバーの話を聞いてみたいと思います!

■タイムスケジュール:
18:55-    受付開始
19:00-19:45 乾杯!・クロストーク
19:45-20:30 質疑応答

応募はこちらから!

11月5日には会社説明会も開催します!
ISTで働くことに興味がある方は必見のイベントです!

《「インターステラテクノロジズ」オンライン会社説明会》
■日時:2020年11月5日(木)19:00~20:30
■定員:200名

■タイムスケジュール:
18:55-    受付開始
19:00-19:20 会社説明
19:20-19:30 質疑応答
19:30-20:00 クロストーク
20:00-20:30 質疑応答

こちらもご参加はPeatixから!


皆様のご応募、お待ちしております!

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採用に関するご質問は、こちらへお願いいたします。
http://www.istellartech.com/contact


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ロケット開発の励みになります!ありがとうございます!
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インターステラテクノロジズ株式会社は、北海道大樹町に拠点を置くロケット開発企業です。「誰もが行ける宇宙の実現」を目指して、世界一低価格で便利なロケットを作っています。2019年5月、観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」を打上げ、国内の民間企業で初めて宇宙空間に到達。

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コメント (1)
コストカットでオリジナルで作った所や安い代替品で置き換えたところがことごとく打ち上げ失敗の原因になってるような気がするんですが、実際はどうなんですか?
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