ただ、明るいだけのひと
別に無理をしているというわけではなく、ただただ明るい人でありたい。
がんになったこと自体の衝撃はさしてなく、割とすんなりと治療の海に漕ぎ出したので、周りは拍子抜けしたと思う。
それは多分医療で支えてくださる方も同じだろう。
「なつめさんは明るくて前向きで」
とは度々言われる。
わたしはつとめてそうありたい。
そこは何がしかのつらさを抱えた人が集う場所だ。
つらさを診る人も、多分つらい。
忙しさや厳しい結果が加われば、そのつらさはもっと増していくだろう。
自らの病気や、その治療のための様々なこと──つまり傷が残ったり、リスクがあることは、すっかり心得ている。
それ以外に抱えているものは、わざわざ並べる必要もない。問われるとつい答えてしまうし、稀に無邪気な問い掛けに出くわすこともあるけれど、それも気をつけなければと思い直した。
納得出来ない、まさに苦しみの渦の中にいる人にこそ、有限のリソースを振り分けてほしい。
表向きの張りぼてと笑われてもいい。
ただただ、明るいだけのひとでありたい。
なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」