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優しさ/点と面、そして循環

ひとの感情はうつろいやすいもので、感じ方や捉え方はその時々によって絶えず変化する。
概念をことばという枠に当てはめようとしたところで、枠からはみ出したものにこそ大切な部分が宿るかもしれない。

優しさを語るとき、語られる優しさは「その瞬間の自分」における許容範囲と倫理観に包まれている。切り離せない。
そして優しさの成立は、受け手の感性とも切り離せない。

同じ言葉を違う人が放てば、感じ方がかわる。
同じ言葉を違う口調で放てば、捉え方がかわる。
同じ言葉を違う日に聞けば、印象がかわる。

一律でない、あやふやさ。
あやふやで曖昧だからこそ、壊さないように間違えないように運ぶ。慎重に届ける。
正解がないからこそ、正解に近付こうとする。強くて繊細な、祈りのような気持ち。

その時点、丁寧に伝わった「点」であるところの「優しさ」が響く。
「優しさ」は心の中で様々な解釈と結合し、「面」になる。ひろがりだ。
そして、次の人に届けるとき、エゴを削ぎ落として普遍性を帯びた「点」になる。
優しさの循環。磨かれて角がとれ珠になり、巡る。

一期一会、カスタマイズされた優しさ。
たったひとり、いま目の前にいるその人のために。

やさしさって、なんだろう。絶えず考え続ける。
多分、ずっと答えは出ないだろう。

藤井 風(Fujii Kaze) - "優しさ"(YASASHISA) Official Video

この曲がすきだ。とてもすきだ。
優しさとはこういうものだ、という押し付けがない。
ただただ、内観が綴られる。だからこそ、嘘がない。
優しさに触れて自らの小ささを感じ、恥じ入る。普遍性なるもの。
稀代の名曲だと思う。
 

松任谷由実 - やさしさに包まれたなら (THE LAST WEDNESDAY TOUR 2006〜HERE COMES THE WAVE〜)

優しさを描いた名曲といえば、これも。
幼児的万能感に包まれた幼き日の「神様」は、取り巻くまわりの優しさの結晶。
すべての人に、優しさが届いたらいい。
かなしいニュースを目にするたび、そう願わずにいられない。 

 

 ◇ ◇ ◇

あやふやで曖昧で正解のないものを受け入れる力、それはきっと、ひとつの強さ。
強くありたい。しなやかでありたい。
やわらかな点描画を生み出せるように。
 

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」