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胸がリコールされた話

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ブレストインプラント回収の時、「なつめ」がどう考えたか。わたしなりの、その記録。
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善意とデマとド素人(5)

善意とデマとド素人(5)

ブレストインプラント回収の流れの中で、わたしはわたしが収集した情報をTwitterのタイムラインに流していった。
情報を欲するサバイバーからの声掛けが、DMやリプライで届く。

諸外国のニュースは訳さず、リンクを紹介。日本はじめ海外含む公的機関や関連学会の文書も、出来る限りリンクをはった。

なぜか。
科学的事実に関することについては、わたしのフィルターや感情を極力排除したかったからだ。

わたし

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善意とデマとド素人(4)

善意とデマとド素人(4)

属性や肩書きなど、大きな主語で語ったり非難するのは意味がない。いや、リスキーだ。

大きな主語を用いるということは、大雑把な括りでしか物事を見ていないということの証左だ。プロであろうがなかろうが、または何のプロであろうが、それは真摯な態度ではない。バイアスだらけだ。
そして、実際がどうであろうが、日頃からそういう態度の人間という見方も出来てしまう。

口に出した言葉は、強化素材となりその人自身を再

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善意とデマとド素人(3)

善意とデマとド素人(3)

そうか、この人は、正しさよりも「気持ち」をとるのか。

善と独善の違いをまざまざと見せつけられたような気がした。
いやもしかしたら、先方は全てを否定されたような気持ちになったのかも知れない。言葉に配慮が足りなかったかも知れない。
だがよしんばそうであったとして、軌道修正出来ないのはどうなのだろうか。SNSなら、ただの呟きだからだろうか。罪に問われる内容でない限り、責任を取らなくて済む場所だから──

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善意とデマとド素人(2)

善意とデマとド素人(2)

予感は的中した。

患者が不安から色々呟くのは、当たり前といえば当たり前だと思う。
そうしたアカウントには、情報はFDAなどの公的機関を見て、必要に応じ主治医に相談するように伝えた。国内初症例が出た時も、同じようにしていたのだ。

関連学会の発表が遅いと憤る人もよく見掛けた。
だがあまりに展開が早かったのだ。

医師だって情報収集中だとは思った。だが、その人の身体について一番よくわかっていて相談す

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善意とデマとド素人(1)

善意とデマとド素人(1)

見方によっては穏やかならざるタイトリングだなとは思うが、ようやく重い腰をあげたのだから、これくらいは。

BIA-ALCL、「ブレスト・ インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫」という疾患が広く知られるようになったのは、国内初症例の報道と全世界回収がやはりきっかけだろうと思う。

ブレストインプラント──つまり手術で乳房を失った人や、豊胸手術で使われる、シリコンの詰め物。
そのインプラントを入れた

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胸がリコールされた話。③

胸がリコールされた話。③

ここでは時系列で、自分自身の動きを書き留めておこうと思う。

手術、そしてオペの結果は非常に満足のいくものだった。満足と評するのも烏滸がましいくらいに。
形成外科の主治医はほぼ完璧に元の状態を再現してくださった。縫合部分を見なければ、大きな手術をしたとは思えない。驚くべきことだった。サイズ的な面などから、インプラントでの整容性の高い復元は難しいとの話を、他の医師からあらかじめ聞いていたのだから。

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胸がリコールされた話。②

胸がリコールされた話。②

可能性という数字
BIA-ALCLはT細胞性非ホジキンリンパ腫というがんの一種だ。乳がんではない。
つまり、この有害事象に見舞われたら、がんをとったのに別のがんに罹ったことになる。一粒で二度辛い。
しかもDCISは生命予後に影響を及ぼさないのに対し、BIA-ALCLは5年生存率91%と僅かながら影響を及ぼす。ステージIならば腫瘍と被膜の完全切除により治癒するものの、ステージが上がれば化学療法などが

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胸がリコールされた話。①

胸がリコールされた話。①

来るぞ来るぞ、とは心のどこかで思っていた。
賭けのようなものだった。

胸、リコールされました
こんな経験はそうそうない。でもこの「そうそうない」が世界中にたくさんある、2019令和元年の今。

アラガン社のテクスチャードインプラントが全世界回収になった真夜中、わたしはその成り行きを真夜中のTwitterで見ていた。

 ◇ ◇ ◇

乳房再建

わたしはがんサバイバーで、片方の胸を全摘している。

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